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13.ずっと待ってる

 一応バレるとマズイことは重々承知なので、俺はフード付きのパーカーと黒マスク。そして伊達メガネを装備して外に出た。


 正直ここまでやる必要はないとは思うが……それでも誰かに気付かれるんじゃないかと思うと、怖くて仕方なかったのだ。


 俺はバスに乗って学校へと向かう……そしたらいつも空いている車内が徐々に混み始めてきた。恐らくこの人らも文化祭に向かっているのだろう。


 俺もこの流れに乗って、さりげなく校内に入ろう……そう思いながら俺は目を閉じた。



 ……しばらくして、マジ校前のバス停に到着した。予想通り、多くの乗客はここで降りるらしい。


 流れに沿って俺も降りる……そして歩いて行くとマジ校が見えてきた。


 学校はいつもとは違い、校門は華やかに飾られている。そして実行委員か知らないけど……入口に立っている生徒達が、文化祭に来た人達に挨拶をしつつ、パンフレットらしき物を配っていた。


「こんにちはー!」

「…………ちは」


 俺は上手い具合に顔を隠しながら、その生徒からパンフレットを渡してもらう。


 俺は貰った瞬間に中身を見た。気になっていたのは当然……俺のクラスの出し物だった。


 歩きながらパラパラとパンフをめくっていくと……出し物一覧の項目を発見した。


 そこで俺は1年5組を探す…………あっ。見つけた。そして隣に書かれていた文字は……


「……」


『休憩室』だった。


 まぁ……そうだよな。もしかしたら、何て思ってたけど……あんな短時間でお化け屋敷が復活する訳ないよな。どこまで俺はおめでたい奴なんだ。


 それで……このたったの3文字の言葉。これにどれだけの悔しい思いが詰まっているのか……それは準備を手伝ってくれた人にしか分からないよな。


 ごめんな。委員長。草刈。そして……ヒナノ。


 俺はクシャッと丸めたパンフレットを握りしめ、校舎の中に入るのだった。


「……」


 校内は土足厳禁だ。文化祭にやって来た人達は、どうやら上履きを持参してきているらしい。


 まぁ俺はそんなもの持って来てないから……学校に置いてあるのを使おう。


 思った俺はこっそりと自分の下駄箱に向かって、パカッとロッカーを開いた……


「────なっ!?」


 瞬間。驚きで声が出てしまった。靴の上にトランプが置かれてあったのだ。


「こ、これって……!」


 急いで手に取り、置かれていたカードを見てみると……ハートのエース。そしてその後ろには……絵柄はバラバラだったけど、1から12までのカードが重ねられていた。


 まさか……ずっと待っている……って言うのか!?


 たまらず俺はそれを持って……無駄にデコレーションされた階段を駆け上がるのだった。


 ──


 屋上前の階段。今日も変わらずに『立ち入り禁止』のプレートがかけられていた。


 そんなの構わずに、俺はロープを飛び越え、屋上へと続く扉へピッキングをする。


 急げっ……急げ……!!


 焦りつつ鍵穴と勝負していると……『カチャ』っと鍵の開く音がした。成功だ。


「ヒナノッ!!!」


 俺は勢いよく扉を開いて、正面を見ると…………いた。ヒナノは……力が抜けたかのように、ブルーシートの上で寝転がっていた。


「ヒナノ……?」


 そして俺の声で気が付いたのか。ヒナノはゆっくりと身体を起こして……俺の顔を見た。


 彼女は今にも泣き出しそうな表情をしていた。


「……どっ、どうした? 大丈夫か?」

「……」


 何も言わずに彼女は立ち上がって……テクテクと、俺の元に駆け寄って来る。


「……」

「えっと……ごっ、ごめん! 俺、ずっとヒナノに連絡返さないで……それで、俺が皆に迷惑かけちゃって……!」

「…………シュン君」

「えっ……?」


 そしてヒナノは……俺の後ろに手を回して。


 小さいながらも全てを包むような……絶対に離さないと感じさせる程に強く。とても力強く。





 ギュッと抱きしめてきたのだった。

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