5.驚かされるのは慣れてないって言ってるだろ!!
それで……次の日の昼休みの屋上。俺らはブルーシートの上でご飯を食べながら会話をしていた。
「昨日は大活躍だったね、シュン君!」
「いやあれは委員長が勝手にだな……」
ヒナノの言葉で昨日の出来事を思い出してしまう……ああ。ホントに昨日は恥ずかしかった……やっぱり全員の視線は集めなくてよかったよな、アレ。
「でもでも、シュン君のやつ本当に上手だったよ! ブシャーって本物の血が飛び散ってるみたいで!」
「あっ、ありがとう……」
ヒナノに褒められるのはとっても嬉しいけど、ヒナノの口からは物騒な言葉は聞きたくないな……もっとふわふわ言葉を聞かせてくれ。
というか……ヒナノの睡眠用癒しASMR音声売ってくれないかな。3万までなら絶対出すから……
「ねぇねぇ、シュン君! やっぱりマジシャンの人って手先が器用なの?」
「えっ? えっと……手先が器用と言うよりは、工作が得意な人が多いんじゃないかな」
俺がそう答えると、ハテナとヒナノは首を傾げた。
「工作?」
「うん。マジックを成功させるのに1番大事なのは、マジック道具だと俺は考えているんだ」
「へぇー」
「道具が凄ければ、大概何とかなったりするんだ。もちろん多少の技術は絶対に必要だけどね」
こんなことを言うと、他の凄腕マジシャンに怒られてしまいそうだな……まぁいいや、ここにはヒナノしか居ないんだし。
「で、そのマジック道具を普通に買ってもいいんだけど……オリジナルのマジックを生み出すとなったら、自分で作るしかないんだよ」
「なるほどー」
「それに使い回しの出来ない物も結構多いし。だから必然的に工作が上手くなるのかもしれないね」
そこまで俺が言うとヒナノは関心したのか……
「やっぱりマジシャンって大変なんだねー。シュン君はとっても簡単そうにやるから、もっと楽に出来る物だと思ってたよ……はい! あげる!」
カバンからチョコレート出し、俺に分けてくれた。
「えっ、ありがとう…………うん。美味しいよ」
「よかったー!」
──
放課後。今日もお化け屋敷の背景を制作だ。
ペタペタ色を塗りながら、俺は周囲を見回す……が、あれ? 今日はヒナノの姿が見えないな。それに声もしない……もしかして部活に行っているのか?
気になった俺は、もう一度周りをしっかりと確認してみたが……やっぱりヒナノの姿は発見出来なかった。
「……はぁ」
俺の中に溜まっていたやる気ゲージが、一瞬にして失われるのを感じる……はぁ。俺はここまで単純な人間だったのか? ……だったんだろうなぁ。
しかし……作業は始まったばかりだ。今すぐに帰る訳にはいかないよな。だからどうにか隙を……隙を見つけてこっそりと帰ろう。
そう……皆が向こうに集まっているタイミングで、トイレに行くふりをして帰ろう。うん、そうしよう!
「……我ながらナイスな案だな」
「何がナイスなんだ?」
「ふはっ、はひっ!??」
椅子から転げ落ちる勢いで、背後を振り向く。そこには腰に手を置いて立つ、委員長の姿が。
「あ、あ、あのあの違くて! 決して俺はサボりを働こうだなんだ……!!」
俺はガクガク震えた口で必死に弁明する。おい、しっかりしろ藍野! 喋らなきゃ死ぬぞ!
……それで委員長は。そんなガクガクの俺を不思議そうに見つめてきて。
「……何を言ってるんだ藍野? 私はただお前に頼みをしようとしてるだけでな」
「へっ?」
言われて俺はガクガクの震えた状態から、ガチガチの固まった状態に変化する。えっと、これって……ただ俺が墓穴を掘ったってこと?
いやだぁ! ボコられる!
「藍野、もしかして帰りたいのか?」
「えっ、いや、そんなことは……!!」
あるけど。バリバリそんなことあるけど。続きの言葉が言える勇気など、俺には持ち合わせていないのだ。
そして委員長は、俺が否定したと見なしたのか。
「ふぅ、そうか助かる。じゃあ手伝って欲しいブツを持って来るから……少し待ってくれ」
そう言って委員長はこの場から去って行くのだった。
……何だ、ブツって。言い方よ。
まぁ委員長のことだからまた背景か……それとも看板か? あまり大掛かりな物は作るの面倒だからなぁ。なるべく簡単な物にして欲しいな……
とか何とか思っている内に…………数分経った。委員長はどこまで行ったんだ? 今のうちに帰っちゃうよ? いいの? いいよね?
「……おーい藍野、ここの扉を開けてくれないか? 今、手が塞がっているんだ」
ふと、教室の外から委員長の声が。
「ひっ、あっ、はい!!」
返事とも言えない返事で、俺は急いで扉を開いてあげた…………そこに現れたのは。
「ああ、ありがとう藍野────」
「うっ……うわぁーーーーー!!!」
生首2つをボールのようにガッシリと掴んで、ニヤッと口角を上げていた委員長だった。




