4.嬉し恥ずかし
それで次の日。俺は朝イチに委員長へ、ヒナノと一緒に考えた案を報告した。
「あ、あの。委員長」
「ん、藍野か」
「昨日の案を考えたんだけどさ……お化け屋敷なんてのはどうかな?」
「ほう……」
すると委員長は手に持っていた文庫本を置き、手に顎を乗せ……こくんと頷いた。
「いいんじゃないか。それなら企画通ると思うし……よし、決定だな」
「えっ、そんな早く決めていいの?」
「何だ、不満か?」
「いや不満って訳じゃないけど……」
でもこんなあっさりと決めてしまって良いのだろうか……一応『クラス』の出し物なんだから、もう少し深く話し合った方がいいんじゃ。
と、俺が言う前に委員長は。
「まぁこういうのは直感も大事なんだ……こんなクラスなら余計にな」
そう言って、また文庫本を手に取るのだった。
えっと、まぁ何にせよ……お化け屋敷に決まったらしい。やったなヒナノ。
……そして時間が経って帰りのホームルーム。昨日のように委員長が前に出てきて……サラッとみんなに報告するのだった。
「えー。結局だが、このクラスはお化け屋敷をやることになった。異論は認めない」
無論、周囲はザワザワし始める。そのざわめきを……委員長はパンパンと2回手を鳴らして鎮めるのだった。
「はい静かに。それで今日から準備に取り掛かるから……手伝える人は放課後残って手伝ってくれ」
いや……何かもう、スゲェわこの人。昨日呼び止められた時もそうだったけど、何かを一度決めたら、絶対にそれを貫き通そうとするよな。
それが委員長の最強の長所でありつつも……最大の短所。つまり、合わない人は完全に合わない訳で。
「おいイインチョー! 俺、部活あるんすけど!?」
声を上げた男子……よく見たらコイツ、昨日ヒナノをイジったカスの片っぽじゃねぇか。
そのカスAに向かって……委員長は呆れたように言うのだった。
「手伝える人はと言っただろ、参加は自由だ……まぁ、あまりにも進行が遅くなったら人数を増やしていこうと考えているがな」
「うわぁ、マジ? 最悪だわ……」
「安心しろ。私にだって選ぶ権利はある」
……どうして委員長は喧嘩腰なんだろう。
「……」
「以上だ」
こうして……何ともまぁ最悪な感じで、出し物の会議は終了するのだった。
──
放課後。俺は教室に残って作業をしていた。
無論、文化祭の手伝いなどこれっぽっちもしたくはないが……ヒナノの案とはいえ、俺が内容を決めたようなものだしな。このまま何もしないのも悪いと思ったからだ。
それでパッと見たところ、俺の他に作業をしていたのは10人くらいだった。
まぁ結構少ないけど……それでもあの委員長の言葉で、よくここまで集まったなとも思うよ。
それで集まったメンバーの中にはヒナノも入っていた……もしかしてヒナノがいるから、こいつらも集まってくれたんじゃねぇかな。
これはヒナノに感謝しなきゃな……委員長が。
そんなことを思いつつ俺は黙々と作業を続ける。
「……そう、それは切ってから色を塗るんだ」
「委員長ー。テープどこ?」
「私のを貸してやる」
「サンキュー!」
でもまぁ連携は上手く取れてるみたいだし、何だかんだで委員長も指示を出すのが上手だからな。これは相当早いペースで終わるかもな……
「委員長、委員長! これどうするの!?」
「それはだな……ちょっと藍野、借りるぞ」
「え、えっ?」
俺が許可を出す間もなく、委員長は俺の目の前にあったダンボールを取り上げる。
それは俺が背景を描いて色を塗った、お化け屋敷の壁に貼り付ける用のダンボールだった。
そしてそれを使いながら、他の人に説明をしているらしい……まだそれ完成じゃないんだけどな。
「これはこんな風に影を付けてだ……ん、そうだ。せっかくだからみんなにも見てもらおう」
「……え?」
何か……とても嫌な予感が。
委員長はパンパン手を鳴らして、みんなの注目を集める。
「ちょっとみんな見てくれ。この藍野の作った背景がとても上手だ……これを手本に、背景担当は制作してくれ」
「……」
やっ……やめろォ! やめてくれっ! そんな大々的に見せびらかすのは! 何かスゲー恥ずかしいだろ! そしてわざわざ名前を出すな! 全員こっちを見るな!
「おぉ〜」
おぉーじゃねぇ! そんくらいお前らも出来んだろ!
「……」
でも……俺の遠くで別の作業をしているヒナノも、微笑みながらこっちを向いて……こっそりグッドのポーズをしていたのを、俺は見逃さなかった。
うっ…………嬉しいな!!!




