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9.世界の終わりの話2

「これは法律で裁く事が出来ない人間がいること。さらにはその人が組織に入り、より直接的な利害関係がわからない犯罪を生むことになる」


 だから鏡野は母親の死を殺人だと確信しているんだ。直接的な利害関係ではない人物がやったからわからないんだと。力を使ったのならなおさら誰にやられたのかわからない。


「さらにね。柏木君はこの力に溺れなかった。そんな人間は多分少ない。いくらでも犯罪行為をバレずに行えるからね。私がこの能力が身についたのは母が死んですぐだった。それまで唯一の私の理解者は母だった。理解者を失って私は孤独になった。実際父は帰りが遅くて本当にこの家に一人きりになった。この大きな家にどの部屋にも人がいないなんて考えると孤独に押しつぶされそうだった。で、私は願った。他の世界に行きたいって。で、手に入れたのがこの千里眼だった。他の世界に行きたかったのに、他の世界を見ることができるようになるなんてね。始めは行ったことがない場所が見れて楽しかった。だけど、すぐにこの世の中の一番醜い部分を、人間の浅ましさを見せつけられた。世界に幻滅した」


 鏡野は少し笑って言った。


「それから、考えたの、こんな能力私だけが持っているはずがないって、仲間がいるんじゃないかって探し始めた。で、この能力を持った人を集めて自分達の都合で人を不幸にしたり、命をいとも簡単に奪って行ったのを見た。仲間なんて思いたくない人達がばかり見てきた。この世で一番浅ましく愚かで醜いと思っていた人たちよりも、残忍な人を見て、この能力をどうにか失くすことは出来ないだろうかって考えるようになった。それで、ふと母の事を思い出した。母は自宅に研究室を作ってほとんどこもっていたけど、何を研究していたんだろうと。それで、研究室を開けて中に入ってすぐに気付いたの。あの部屋では能力が使えないって。私は必死で母が遺した研究ノートや置いてある機械やそれで出たデータを分析した」

「すぐに出来たの?」


 あれだけの物を理解するのは並大抵ではないだろう。その道の研究者じゃなければ。鏡野はどうしたんだろう。それとも学年一位にわざとならないという言葉通りに鏡野は天才なんだろうか。だが鏡野は手を振りながら苦笑いをしている。


「いくらなんでもすぐには無理だよ。母は暗号っぽくノートを書いてるし、さらに難しかった。部屋を見たのは中二の頃で桃李達と一緒に住む少し前だった。でも、私には何となく意味がわかったの」

「どうしてわかったの? 中学生だったんだろ。いくらなんでも……」

「母のおかげなの。小学生の頃にやっと割り算習って、なんて頃の私に何でも数式で説明してきたの。わかるわけないのに、母は私がわかるようになるまで、繰り返し数式で私に説明を続けた。単なる変人の奇妙な行動かと思ったんだけどね。父には普通に話をしていたのよね。だから、やっぱり母は未来が見えていたんだと思う。引き継ぐ私に能力が足りないなんてことがないようにって。だから、まだ中学生の私にも何となくわかった。それから私は誰にも内緒で物理学や遺伝子学なんか母の研究ノートに関係あることを勉強し続けた。母が遺した研究ノートを解読して装置を作らないといけないからね。でもその装置を設置するのが難しかった。でも、柏木君なら移動できるでしょ」


と、鏡野は僕を見つめて言った。


「で、なんで人類滅亡かっていうと、私は様々な能力者を見てきた。みんな自分の力に酔っていたり、逆に手に入れた能力でやりたくない事を強いられて自分の能力を恨んでいたり。さっきも言ったけどこの能力は血で濃くなって行く。いずれ私たちの能力よりも遥かに大きな力を持つ者が現れる。その人物が全て善人だとは限らない。いえ、逆に強い力を持って良識を保てる人の方が少ないと思う。そうなった時その人はこの世界をどう思うか。失くなってもかまわないと思う人が出てきても不思議じゃない。そうなればその能力を使い第三次世界大戦を起こすこともその能力によっては不可能じゃない」

「第三次世界大戦……核戦争か」


 そういうことか。この能力の延長線上になぜ世界中の全生物の命を脅かす力があるのかわからなかったが、人間の心だ。何もかの操れる世界に飽きて、生きることも死も、関係ないと思えたら、世界中を戦争に巻き込み核戦争を起こせばいい。そうすれば地球上で生き残れる生物はほぼいなくなるだろう。僕を巻き込んだとはいえ、今まで一人で戦って来たのだ。鏡野は自分の命をかけている。だけど、家族を巻き込みたくないのだ。母親の事故だって、鏡野の父が彼女を車から出す事をしていなければ、3人とも死んでいただろう。鏡野は痛いほどわかっているのだ、危険だと。だが、辞める訳にはいかないのだ。世界を救えるのは鏡野だけかもしれないから。だけど……


「ねえ、飛躍した考えなんじゃ。いくらなんでもそんな自殺行為をするかな」


 やっぱりそこまで狂気に走るものがいるとまで想定するのはどうなんだろう。

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