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51.失恋*柏木&アリス&九条*

 ***



「美咲入るぞー」


 家に帰り、あれ以来珍しく部屋にいる美咲の部屋に報告に行く。言ってはなかったが内心心配しているだろうから、もう何もしなくていいと伝える為に。

 美咲はベットに座り泣いていた。慌てて涙を拭いている。僕はあえて何も聞かずに、今までの事と今日の話をした。真っ赤な目の美咲はうんうん頷いて僕の話を聞いていた。


「良かった」


 美咲はホッとしたんだろう一言そうもらした。やはり気にしていたんだ。


「……お兄ちゃん……」

「ん?」

「失恋した」


 美咲はボソリと言う。


「そうか。あの子か?」

「うん」


 僕は美咲の横に座り頭を撫でた。美咲が以前出していた少年の事だ。美咲はまた泣き出した。そして泣きながら話をはじめた。


「彼に好きな子がいるって噂を聞いて、私だったらいいなあ。彼のそばにいたいなあって。考えてたの。彼がここにいるのを想像して。最近お兄ちゃんずっと彼女の、鏡野さんといたでしょ? お兄ちゃん取られたようで……私も彼がいればいいのにって」


 なんだよ。僕の事もあったのか。だから、あの時力を持った理由を言わなかったんだな。


「で、出てきた訳か。あれが……」

「そう。……偽物出しても何の意味もないよね」


 美咲は無理に笑ってみせた。


「美咲……」

「もう大丈夫!」


 何かを振り切ったように美咲は言う。


「お兄ちゃん早くこの力消してね。誘惑に負けてまた出しちゃう。そして、後悔する……偽物出しても意味がないのにって。だから、ねっ!」

「うん。って言っても、僕は何も出来ないんだけどな」

「何それ役立たず?」


 美咲は笑って言う。いつも美咲だ。


「それを言うなよ」

「鏡野さんに愛想つかされないように頑張らないと、鏡野さんモテそうだもんなあ」

「おい!」


 痛いところをつくなあ。気にしてるんだから。これからは九条の活躍の時だ。実験が成功したら九条が本格的にウイルスを作り出す。僕の移動も必要なくなる。


「お兄ちゃんライバルいるんだ?」


 美咲鋭いぞ。


「もういい。終わりだ。そろそろ夕飯だ。顔洗っとけよ」


 僕の言葉に美咲は顔に手をやる。僕は立ち上がり美咲のデコを叩く。


「目、真っ赤だぞ」

「ああ、うん」


 僕は美咲の部屋を出た。美咲もすぐに出てきてバタバタと洗面所に向かう。

 美咲は元気になったみたいだ。早い立ち直りで良かった。また母が心配するところだった。僕も部屋に入り考える。九条か……。気にしすぎなんだろう……そう思いたい自分がいる。鏡野は九条とはほとんど話さない。だから、余計に気になる。九条は僕に気を使ってるのか九条も鏡野に特には話さない。そんな二人が意識しあってるんじゃないかと思えてならないんだ。ダメだな。今はそれどころじゃない。明日は実験の日だ。成功することを祈ろう。僕にはそれしかできないんだから。




 ***


 翌日いつもの時間になった、柏木君が九条君を八雲さんのもとへ移動後、私が映像を送って柏木君と桃李の三人で二人を見守る。今日は実験時間後は合図で八雲さんと九条君、それぞれの場所からの移動と決めていた。成功するんだろうか。九条君は大学近くの高層のビルの最上階にいる。高さと距離を見る為だろう。八雲さんは大学内の冷凍庫の前にいる特別に借りているみたいだ。寒さにも発動するかを見るためだろう。

 パソコンが動く時間になった。二人は念のため少しそこに止まった。九条君は人のいない場所に移動して合図があった。すぐに柏木君が九条君を移動する。八雲さんは冷凍庫に直前に入れたマウスを取り出した。マウスはまだ動いている。良かった。八雲さんはその研究室の人にお礼を行ってその場を立ち去る、人のいないのを確認して合図があった。すぐに柏木君が八雲さんも移動する。

 八雲さんの移動後、皆は無言で母の研究室に急ぐ。研究室に入り八雲さんが手早くマウスの遺伝子を調べて行く。勿論今日も電源は入れて用意してある。


「……僕の実験したマウスは変化している」


 寒さには対応出来ている。後は距離、高さ。

 八雲さんは次のマウスに取り掛かる。


「や、やった!」


 九条君のマウスも変化していた。念のため九条君、八雲さんの遺伝子も調べたけど、以前変化したまま、つまり普通のままだった。


「良かったあ」


 思わずため息と共に声が出る。もう大丈夫? と八雲さんを見る。


「明日あと一匹は今度は高温にしてみる。他の研究室にもう頼んでいるから。地球の環境全てに対応しないといけないからね。この普通になったマウスも置いて変化するか調べるよ。他の実験室のマウスも借りてくるよ。全てのマウスが普通なら実験は成功だ」

「あと一歩ですね」


 そういう柏木君の言葉通り、あと一歩。希望がもうそこまで来ている。


「明日は僕だけでするから九条君はここにいてくれ」

「はい」


 実験に成功したマウス二匹を同じゲージに入れて、もう一方に残りのマウスを移した。

 明日……明日には母の研究が実を結ぶ。もう一歩なんだ。



 ***



 柏木がいつものように部屋に帰してくれた。うう、やっぱり気持ち悪い。八雲さんがいつも平気そうなのを見ているから、それを言うのはなんだかとても言いにくい。まあ、言ったところでこの移動方法を変える訳にはいかないんだけど。鏡野が少し気の毒そうに僕を見ている。そう言えば柏木の妹の件で移動したとか言ってたな。鏡野も気分悪かったんだろう。理解者がいてくれると思うと、何だか頑張ってるかいがある。

 頑張ってるといえば、パソコンをつける、実は時間を見つけては作り変え、改良に改良を重ねているんだ。これを作るのに時間をかけては申し訳ない。まだ完璧ではないが大方完成している。僕には大きな大きな貸しがある。鏡野に柏木に。こんなにも何かに一生懸命になったことはない。僕に出来ることは最大限にやりたい。僕の人生を大きく変えてくれた。世界を救うとかそんな事の前にまずそれがある。

 僕はいつものように打ち込む。明日の実験で終わるんだ。後は僕次第なんだ。僕の肩に全てが大きくのしかかる。絶対作ってみせる。


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