表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/55

49.まさか*柏木&桃李&アリス*

 ***



 今日は驚きの連続だった。あの後まだ眠っていた猫を僕は元の場所に戻し、いつものように八雲さんと九条をそれぞれの場所に戻し、僕は鏡野と玄関に居た。今日の鏡野の様子を見て心配になった。ファティマの聖母にあんなにこだわっていた、だけどやはり怖いと思っていたんだと。また無理をしているんだろうか?


「鏡野、大丈夫か?」


 鏡野の顔を覗き込む。ちょっと顔色が悪い。こんな鏡野は始めてだ。


「うん。ありがとう」


 鏡野が抱きついてきた。僕らはしばらくそのままだった。僕は鏡野の頭を撫で続けた。




「ごめん。ありがとう。落ち着いたよ」


 鏡野が離れた。顔を覗き込むと顔色も戻っている。良かった。


「あんまり無理するなよ」

「うん」


 僕は鏡野の家を後にした。これからまだ実験を重ねる。その間に落ち着くだろう。その後は…美咲が待っている。大丈夫だろうか? 鏡野であの様子だ。美咲に耐えられるんだろうか。

 今日も綺麗な真っ赤な景色。僕も真っ赤に染められているんだろう。



 ***



 アリスは頬杖、俺は料理、まるで何もなかったかのようにいつもが続く。今日の出来事をまだ受け止められずにいる。アリスも柏木も九条も八雲さんも皆こんな気持ちだったんだろうか……皆の力を見て聞いていたが実際に自分の物になるなんて……あり得ないを実行する。考えていたよりも遥かに気分のいいものではなかった。自分で自分を受け止められない。皆の苦悩、それぞれの苦悩を思う。超能力をもつ事は少しも気分のいいものじゃない。むしろ自分が別の生き物に思えて気分が悪くなる。

 それに加えアリスは嫌なものを見続ける苦悩、八雲さんは今はなくなったが変えられない未来を勝手に見せられる。こんな力なくさなければと思うのも当然だ。


 明日からは実験の毎日だ……毎日あれをやるのか……。

 だが、アリスを安心させないと。さっきも柏木と話をして少し落ち着いたようだけど、まだいつもアリスじゃない。少なくとも移動プラス時間移動が安全にスムーズにいくようにする。嫌だとか言ってられない。力を持ったんだ。これがなんの意味もないなんて思えない。唯一力を持っていなかった俺がこんな飛び抜けた力を持ってたんだ。ファティマに行けと言われてる。そうとしか思えない。頬杖をついているアリスをみる。アリスを安心させること。それが俺の使命だ。

 手早く料理を作りながら明日からの日々を思い描く。八雲さんに言われた、場所も時間も確実に移動出来るようにと。出来るだけリスクを減らすためだ。もうこうなればやるしかない。




 ***



 それから、八雲さん達と私達は別々に実験をはじめた。柏木君と帰って来ると桃李が加わり、九条君を八雲さんの研究室へ送る。夏休みが終わり研究室に人がいるので一旦は誰もいない場所へと九条君を送っている。八雲さんの研究の手伝いをする学生だと九条君を紹介しているようだ。九条君は一年だけど年は桃李と同じ年だから通用しているみたいだ。

 私達は猫がいてもいいだろう場所の写真をネットで探した。場所がわかっている写真でないとダメだし、日付もだいたいの時間もわかるものだとなかなかない。

 大きめのゲージを八雲さんが手にして合図してきたので、それを一旦猫を確保するのに使う為、柏木君にこちらに移動してもらった。慣れないこの一連の作業を楽にするために八雲さんは用意してくれたみたい。

 私が写真の場所の映像を柏木君へ送り、柏木君はそこへ猫を送る、今度は桃李に猫の映像を送り、桃李が猫を過去へ送る。ネットの写真に猫がいるのを確認したら桃李が元に戻す。その映像を柏木君に送り猫はゲージの中に戻る。そして猫を元の場所へ柏木君が戻す。

 最初は上手くいかなくて、桃李は何度も過去から現在へと猫を移動してみる。時間調節が難しい。時間がきっちりわかる写真がほぼない上に、猫は起きると動いてしまう。桃李には過去へ送ったと確信があるけど、写真には変化がないから私達は確認出来ない。

 こうやって何度も繰り返し、日が経つにつれて桃李は過去へ送る前に過去を見ることが出来る事に気づいた。今までは送った猫しか見れなかったから、調節が難しいかったけど、これで撮影がいつなのか確認できるようになった。撮影直前に猫を送り込めるようになった。猫が起きていても写真に猫が映るようになった。

 そのうちゲージは使わなくても出来るようになったので八雲さんにゲージを送り返した。二週間経った頃、八雲さんが合図を送ってきた。柏木君が八雲さん達を私の部屋へと移動させた。今回は二人ともマウスのゲージを持っている。


「何とかできたようなんで今回は二匹つれて行くよ」


 開口一番八雲さんが言う。


「時間設定でエネルギーを発する様にしたんで僕と八雲さん、別々の条件で別々の場所でやってみるんだ」

「俺たちも毎回写真に映せる様になりました。これ」


 パソコンに保存していた写真を見せる。過去を変えているから猫がいない写真はない、保存している写真も変わってしまうから。これを見ていると……ファティマの預言はもう行われているんじゃないかと思えてくる。猫を移動する前の記憶はあり猫がいなかった事も記憶しているけれど、写真は変わっている。ファティマの預言を私達がしていないのにすでにあるのは、やっぱりもうすでに誰かがしたのでは……。


「うん。変わる前の写真は……勿論ないよね」

「はい」

「過去を変えると変わる。……ファティマの預言はもうされているのかな。僕も自信がなくなってくる」


 八雲さんもその矛盾に気付いたようだ。そう……なぜしていないのに、もう事実としてあるのか。


「桃李は過去も見える……時間調節する為に過去を送る前にも見ることができることに気付いたんです」

「じゃあ、例のファティマの奇跡で太陽が近づいた時の過去をみれば……日時もわかっているし」


 私はファティマの聖母のページを開く。桃李は画面を見ている。過去を見ているんだ。


「見えた」


 桃李が呟く。ファティマの奇跡?……もうすでに誰かがしているってこと? 誰なんだろう?


「聖母の正体は追えるかい?」

「やってみます」


 八雲さんの問いに桃李は答えた。過去を見ながら。やっぱり奇跡は起こっている。




 しばらく無言の時が流れた。皆緊張している。


「ま、まさか……」


 桃李は驚いている。知っている人物なの? まさか私と美咲ちゃん?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ