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41.待つ日々

 ***



 今日もいつものように二人を移動して鏡野の家を後にする。やっと先が見えたように思えるような、本当にこのまま上手く行くのか不安もよぎる。長かった三ヶ月だった。あと少しだけどそれがいつなのか。八雲さんの能力で見ることは出来ないのかと喉まできた言葉を押し込んだ。八雲さんには制御出来ないんだ。歯がゆい気分だ。

 空を見上げる。今日もいい天気だ。雲一つない空に夕暮れが押し寄せる。マウスが見つかり八雲さん合図があるまでは集合はない。鏡野は帰りに僕は来て欲しいと言ってくれた。

 嬉しいが……佐々木先輩がいる。出来れば外で会いたいんだけど……。いつもの行動と変えるのはマズイのか。いつになれば普通に付き合えるのだろう……不安がよぎる。鏡野の態度が九条の参加で変わった。距離が遠くなったのではなく近くなった。嬉しいことだが、その変化を不安に思う。確かに時間は出来た。九条が加わる前は時間のある限りこの計画の話をしていた。佐々木先輩と三人で。それが九条と八雲さんの参加で土日はなくなった。これで二人の時間はずっと増えた。時間を見つけては鏡野は僕を誘うが、その時間が出来たんだ。

 だけど……態度も変わったように感じる。それまでは僕への気持ちを感じることはなかった。いつも半信半疑だった。それが今は全開って感じだ。勿論二人の時だけだけど。……僕が不安を口にしたからだろうか。鏡野は九条とほとんど口をきかない。教室でも鏡野の家でも。必要最低限という感じだ。どう捉えればいいんだろうか? 鏡野の性格だから、必要以上に話をするっていうのも不自然だし、教室では他の人と変わりない態度でいるのも九条に注意を向けない為だ。……気にし過ぎだ。鏡野が近づいて来てくれているんだ、やっと心を開いてくれた時期だったんだ。ちょうど。そうだ、そうなんだ。

 考えていたら歩くのが遅くなったみたいだ。夕暮れが青空を覆ってきている。色んな色になった空を見て僕の心のようだと思った。しっかりしないと。観覧車の鏡野の一瞬見せたさみしそうな顔。僕が側にいるんだ。そう決めただろあの日。鏡野の笑顔を思い出し、空に描いた。その後すぐに駆け出した。また詮索が待っている。




 夏休みも終わり新学期がはじまった。まだまだ暑い。まだ暑さの残る九月の中旬に入った頃、八雲さんから合図がきた。鏡野から八雲さんの映像が送られて来た。


 さあ、いつもの日々の再開だ。鏡野との時間がまたなくなるがそんなこと言ってられない。僕は二人をいつものように移動した。相変わらず九条は気分が悪そうだ。申し訳ないと思いつつも、これしか方法がないのだから仕方ない。

 八雲さんは突然頭を下げた。


「合図をしたがまだできていないんだ」


 僕らは少しざわついた。じゃあ、なぜ集合を……。


「皆に集まってもらったのは、相談というかお願いの為だ。僕には僕の得意分野がある。パソコンはその範ちゅうじゃないんだ。だから、ノートから導いたパワーを出すことが出来ない。それとこれは太陽のエネルギーが関係している。逆の事をしようとしているが僕らは全員に同じ効果を出さないいけない。世界中だから昼も夜もだ。屋内にいようが外にいようがだ。だから、全ての可能性を検討して何種類ものエネルギーパソコンから出さないといけないんだ」


 そうか。そうだよな。変わる時にはその条件だけの人物が遺伝子を変えるだけだった。今はどういう条件かわからない人達全てを変える必要がある。しかも……変わってない人には影響を与えてはダメなんだ。

 こんなに難しい事をしようとしていたんだ……改めて僕らだけではどうにもならなかったと思い知る。


「それで、頼みって?」


 佐々木先輩が問う。なんだろう?


「僕ですね」


 九条君が進みでる。あ、そうか。パソコンの専門。八雲さんでは出来ない事が出来る。


「そう。君だ。ただし、最初に言ったけど、柏木君もアリスちゃんもこのエネルギーを浴びると、まだ困ることが多い。だから、今度からは、僕の研究室に九条君だけ来てもらいたいんだ」

「わかりました」


 九条君は即答した。


「じゃあ、私がビジョンを送って柏木君に移動をしてもらう」

「ああ、今度は成功の合図が送れるように頑張るよ」

「僕も」


 九条はやっと自分の出番が来たと張り切ってるようだ。彼には重要な仕事が待っているんだ。そんなに張り切らなくてもいいのにと思うが九条は嬉しそうだ。九条が嬉しそうにしてるのを見ると、彼にとって役に立つ事が重要なんだろう。

 その後移動時間を決めて解散になった。二人を移動してから、いつものように帰った。明日からは、二人の時間がまた続くけど、移動しているんだから当然見ることになるだろう。今までのようにはいかない。が、八雲さんと九条が頑張ってくれているんだ文句をいってはいられない。



 九月も終わり十月も過ぎて行く、はじめはずっと見ていたが進展のないのを毎日見るのもだんだんと辛くなって行った。最初は佐々木先輩が受験勉強をすると言って自分の部屋に去って行った。テニス部はもう引退していて、会うのはここだけになっていた。学校ではすれ違うぐらいだ。

 鏡野は相変わらず部活の間僕を待っていてくれる。最近は僕の帽子をかぶって木陰で本を読むフリをしている。部活が終われば鏡野の家に向かう。でも、鏡野に映像を送ってもらう時間が次第に少なくなった。早送り映像を終了時間間際に見て今日もダメだったんだと確認して、九条君を彼の部屋に戻すようになって行った。九条君とも学校で少し話す程度になった。

 鏡野は九条君と全く話さない。僕以外のクラスメートと話すのも少ないから必然的にそうなる。八雲さんとはずっと会っていない。こちらから見ているだけになっている。


 だんだんとこんな日々が当たり前になってきた。そんな1十月のある日の事だった。いつものように終了時間が近づいてきたので八雲さんの研究室を早回しで見ていたら、八雲さんからの合図があったのだ。

 鏡野は佐々木先輩に映像を送ったのだろう、隣からこちらに駆け込む音がする。鏡野は新聞紙を二枚広げ今の八雲さんと九条君の映像を送ってきた。二人にも送ったのだろうマウスを入れるゲージを八雲さんが手にした。用意が終わったのを確認して僕は一人づつこの部屋に移動させた。佐々木先輩は部屋に入って新聞紙を見つめていた。


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