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第32話 得たもの

マーヘル公

「魔族が出現して5000年……貴殿達は億さず戦い続けてきた。それは、この安らぎの無い世界に置いては必要だと考える。そしてこの世界に君臨する統治者の一人として、私も尊敬している。」


大賢者フリューゲル

「戦い続ける事は……決して敬意を向けられる事ではありません。この5000年で数億の人類が犠牲となりました。そしてそれは…上に立つ我々の失態です。」


マーヘル公

「私を含める全ての統治者が、完璧な存在では無いわよ。生き物なのだから、過ちを犯す事もある。」


大賢者フリューゲル

「ですがそれでは……人類の理想は達成されませぬ。」


マーヘル公

「理想は横の団結を産むけど、下を見る隙間を無くす。」


フリューゲルは、ゆっくりと足元に目を向けた。

長命種であり力があるからこそ見えていなかったもの。

それは、最も身近にあった。


上を目指し、各国と横の団結に尽力してきた。

だが下のもの、もっと細かい部分から目を背けてしまっていた事を理解した。


少し変える。


大賢者フリューゲル

「儂は…大きな思い違いをしていたようです。ですが魔王討伐を達成せねば…いつか国が滅びます。」


マーヘル公

「貴殿は、天変地異を何とか出来る?」


大賢者フリューゲル

「は……?」


マーヘル公

「私は奴らを、敵対者では無く災害と捉えている。どれだけ対策しても、奴らの侵攻を防ぐ事は出来ない。」


大賢者フリューゲル

「それは…魔王に降ると……」


マーヘル公

「必要とあらば、私の魂一つで終わらせるつもりよ。」


大賢者フリューゲル

「相手は魔族です。そんな道理が……」


マーヘル公

「通るかは分からない。でも、死者と遺族に二分されて憎悪が連鎖するのなら、全員死者として天へ還る方が、皆の心は幾分か安らかかもしれない。」


大賢者フリューゲル

「それでも…守る為に、立ち上がる者はいます。」


マーヘル公

「えぇ……故に我が国では、志願兵しか居ない。周囲の魔物を討伐する際も、私や大賢者が先陣を切る。魔王に侵攻された時も同様に行うつもりよ。」


フリューゲルは、沈黙した。

舌戦を繰り広げ、如何に周りを見れていなかったか。

950年も生き、エルフの最高位種にも届く自分ですら、未熟であったと心の底から恥じた。


大賢者フリューゲル

「どうやら……我等と公の考えはあまりに違い過ぎるようです。」


マーヘル公

「……そのようね。」


大賢者フリューゲル

「ただ…今回言葉を交わし、貴方達が我々以上に、清廉な御心を持つ存在だと理解しました。万が一の際は、遠慮なく我が国に援助要請をしてください。我ら精霊王朝は、必ず手を差し伸べます。」


マーヘル公

「…心遣い感謝する……精霊王朝の偉大なる大賢者よ。」


フリューゲルはマーヘルに一礼し、玉座の間を出た。

その直後、一人の女性が玉座の間に入っていった。


「もう終わりました?」


マーヘル公

「何よ…聞いてたの?ネフェル。」


【大賢者 ネフェル】

420歳のハーピーの女性。

腕には大きな翼、鳥のような足以外は人間と遜色ない。

・精霊王朝大賢者フリューゲル

・黄金郷大賢者ソフィア

彼らと同様、世界三大賢者の一人。


大賢者ネフェル

「私も話したかったのに。」


マーヘル公

「雑談じゃないのよ。」


大賢者ネフェル

「でも…よろしかったのですか?」


マーヘル公

「えぇ…彼らとは根本の思想が異なるから。」


大賢者ネフェル

「大賢者フリューゲル…あと数十年でエルフの最高位種に辿り着く大物が、使者としてくるとは……」


マーヘル公

「至高に近い存在として、相応しい男だったわね。」


大賢者ネフェル

「ですがどうも腑に落ちませんね。交渉なら、もっと粘ると思いますが。」


マーヘル公

「見に来たのでは無いかしら。」


大賢者ネフェル

「何をです?」


マーヘル公

「私と……この国を──」


ネフェルは、マーヘルの顔を見て少し微笑んでいる。


マーヘル公

「なによ。」


大賢者ネフェル

「ふふっ…なんだか嬉しそうですね。」


マーヘル公

「え?」


大賢者ネフェル

「あれだけ思想をぶつけ合ったのに、どこか満足気な表情ですよ。」


マーヘル公

「世界三大賢者最高とされる彼を言い負かしたのだから、当然よ。」


大賢者ネフェル

「ふふっ…こういう時は素直に、人類と話せて嬉しいと言うんですよ。」


マーヘル公

「っ…そんな訳ないでしょ。」


大賢者ネフェル

「ツンデレですか?」


マーヘル公

「黙って。」


そしてその日のうちに、フリューゲル達は獣公国を出発した。

海洋魔物の領域を、横断しなければならないが、獣公国の軍船が途中まで、彼らを護送した。

獣人に対する恐れを跳ね除け、わざわざ赴いたフリューゲルに対する、マーヘルの粋な計らいであった。


そして1ヶ月後。

フリューゲル達は、精霊王朝に帰還。

王宮に戻り、黄金郷王都に滞在しているエリュシオンに、今回の件を報告する。


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