第26話 阻む者
冥魔ベルゼビュート
「決闘とは互いの力を最大限発揮するもの…有利な状況で勝利しても心は昂らぬ。」
アスラン
「チッ…」
冥魔ベルゼビュート
「では行くぞ、邪王之咆哮」
膨大な魔力を轟音と共に魔力砲が乱射され、アスランはそれを飛翔しながら、かわしていく。
冥魔ベルゼビュート
「帝之滅殺砲」
膨大な魔力が一点に凝縮され、砲撃された。
アスランはそれも飛翔しながら避ける。
冥魔ベルゼビュート
「避けてばかりでは何も進まんぞ。」
アスラン
「うるさい…闇夜連撃」
アスランはひたすら、闇の魔力砲を乱射したが、ベルゼビュートの掌に吸い取られる。
だが、次の瞬間──
アスラン
「冥獄之煌」
神速の青紫の閃光がベルゼビュートの利き腕を貫いた。
経験した事の無い激痛を受け、杖を上空から落とした。
冥魔ベルゼビュート
「ふっ…目眩しか……我が利き腕を貫くとは良い魔法だ。それにこれは…魂の直接干渉か……」
アスラン
「さぞ痛いだろ。」
冥魔ベルゼビュート
「あぁ…興味深い感覚だ。」
ベルゼビュートは、貫かれた腕を即座に再生。
冥魔ベルゼビュート
「この魔法……」
アスラン
「俺が改良した。」
冥魔ベルゼビュートは口角を上げた。
「そうか……中々良い魔法だ。法則書き換えも通じず、再生しても腕の感覚が鈍る。」
アスラン
「お前ら悪魔への特攻。」
冥魔ベルゼビュート
「であればこちらも、全力を出さねば無作法か……」
ベルゼビュートは天を仰ぐように手を広げ、周りに無数の灰色の魔法陣を展開した。
冥魔ベルゼビュート
「行くぞ……蝿王之摂喰」
周りに魔法陣から無数の灰色の蝿を出現させた。
蝿は周囲の魔素を取り込みながら突撃。
アスラン
「気持ち悪。」
無数の蝿はアスランを取り囲んだ。
ベルゼビュートが合図した時、無数の蝿が一斉に魔力砲を発射。
アスランは焦り、
「まじか…空間捕食」
無数の蝿の一斉砲火により、アスランは赤黒い煙に包まれたが、全ての蝿と魔力砲を吸収した。
アスラン
「捕食は、お前の専売特許じゃねぇよ。」
冥魔ベルゼビュート
「まるで……"あの女"を見ているようだ。」
アスラン
「誰だよ。」
冥魔ベルゼビュート
「今から270年前……矮人国家の研究所で葬ったあの女だ。」
アスランは目を見開き、言葉を失った。
心音がドクドクと音を立てる。
冥魔ベルゼビュート
「空気が揺らいだか…やはり貴様は──」
その瞬間、アスランは魔力砲を放った。
だが、ベルゼビュートはそれを間一髪で避けた。
アスランは目の光が消え、瞳孔も縦長に鋭くなっていた。
アスラン
「お前……」
冥魔ベルゼビュート
「"貴様ら"とは縁があるか…」
アスランは覇気を全て解放した。
彼の耳は竜の羽のようになり、彼の両腕からは鱗が隆起し、爪はさらに鋭くなった。
翼は禍々しく魔力を発していた。
そして瞳は深紅に染まる。
冥魔ベルゼビュート
「この覇気……貴様、こ──」
アスランは、ベルゼビュートも出遅れる速さで懐に入り、胸元を爪で切り裂いた。
ベルゼビュートは即座に距離を取り、魔力砲を連射する。
だがアスランの飛翔速度は、ベルゼビュートの想定を遥かに上回り、再び懐に入り魔力砲でベルゼビュートの腹をかすめた。
冥魔ベルゼビュート
「この速度……まさかとは思ったが。」
ベルゼビュートは、アスランの凄まじい飛翔速度、物理戦闘や神速魔法を一手に捌かなければならなくなった。
ベルゼビュートは、両手に赤黒く禍々しい魔力を纏わせた。
そしてアスランの懐に入り、彼の首を掴み、身動きを封じた。
冥魔ベルゼビュート
「今まで疑念に思っていたが…今のお前を見て確信に変わった。」
ベルゼビュートに掴まれたアスランの首は、徐々に腐食していった。
彼はアスランをそのまま投げ飛ばし、距離を取った。
ベルゼビュートは天高く舞い上がり、六翼を広げた。
全身からは神威にも似た禍々しい覇気を漂わせている。
そして背後に、無数の漆黒の魔法陣を展開した。
冥魔ベルゼビュートは口角を上げた。
「この魔法を使うのは1000年振りか…暴喰之解放」
魔法陣からベルゼビュートの分身が出現。
漆黒の体に巨大な角を生やし、目をぎらつかせている。
その姿はもはや堕天使ではなく、悪魔そのものであった。
手からは禍々しい赤黒い覇気が漂っており、触れた者の肉体や魂を全て喰らい尽くす。
そして、ベルゼビュートの耳を貫くような轟咆と共に、本体と分身体が一斉にアスランに襲いかかった。
理性が崩壊したアスランは、そのまま突撃してしまい、正面から受けてしまった。
両者がぶつかった瞬間、赤黒い閃光と煙が放たれ、空一面を覆った。
その煙から、先程のような異形の姿は治まり、翼も無くなり、まるで全てを吸い取られたかのようなアスランが落下していった。
彼の身体は、全身が腐食によって赤黒く染まり、黒い煙が全身から立ち込めていた。
アスランは、山頂の岩肌に強打しながら転げ落ち、止まる頃には全身血まみれになっていた。
ベルゼビュートは、分身体を解除した。
そして山頂に降り立ち、ゆっくりと倒れているアスランに迫る。
すると、全速力でエミリアが岩陰から飛び出し、ベルゼビュートの前に立ちはだかった。
エミリア
「っ……近寄るなっ!!」
冥魔ベルゼビュート
「何だ小娘…誇り高き決闘の場だ。分を弁えろ。」
エミリア
「アスラン様には……指1本触れさせないっ!」
冥魔ベルゼビュート
「ほう…貴様のような弱者が俺を止めれると。」
エミリア
「絶対に…アスラン様には近ずかせない!」
彼女は両手を広げている。
涙を流し全身震えているが、それでも微動だにしなかった。
冥魔ベルゼビュート
「ほう…覚悟ある者の同行者も……覚悟がある者か。」
彼女の姿を見て、ベルゼビュートは覇気を抑えて近寄った。
冥魔ベルゼビュート
「小娘…名は……」
エミリア
「悪魔に名乗る名は無いっ……近寄るなっ!」
ベルゼビュートは彼女の首を掴み、そのまま持ち上げる。
冥魔ベルゼビュート
「名は。」
エミリアは必死に抵抗しながら、
「あっ……っ……エミ…リア……」
ベルゼビュートは手を離した。
冥魔ベルゼビュート
「エミリア……貴様の覚悟に最大限の敬意を払い、喰らおう。」
ベルゼビュートは掌に禍々しい赤黒い覇気を解放し、彼女に襲いかかった──




