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エピソード:17『迫る毒牙』

大変お待たせしてしまいすみません。17話です。

仕事辞めたり再就職したりでとんでもなく忙しくてなかなか時間が取れませんでした‥‥


襲撃事件の容疑者として軟禁されてしまった宝笑達。その一方、魔王軍の侵入事件に頭を悩ませる女王バシャーンに魔の手が迫っていた。


「はぁ‥‥肩身が狭い‥‥」


ぽつりと呟く。俺達は今、使わせてもらっていた客室に軟禁状態だった。

『最有力容疑者達を隔離して監視する』として大臣さんに連行され、庇おうとしてくれた女王様も押し切って監禁されてしまった。


「しょうがないっす、状況的には自分達が一番怪しいのは間違いないっすから。そりゃ納得は出来ないっすけど‥‥」

「姉様、大丈夫ですか?」

「えぇ、大丈夫よナハト。とにかく今は大人しく待つしかなさそうですね」

「そうね。少なくともラメールさんの帰りを待った方がいいわ」


フィーニアスさんの言葉に頷く。


(‥‥‥‥しかし犯人は誰なんだ?魔王軍が侵入した上でジャマーを配置するなんて普通に考えたら無理だ。見落とされる筈がない。

何よりジャマーだけ置いていって行動隊長は帰った、なんてありえないよな。まだ城内にいるって考えた方が自然だ)


「宝笑さんなにをうんうん言ってるんですか」


顎に手を当て唸っているとナハトさんから怒られた。


「あ、ごめん。いやジャマーを忍び込ませたのは誰なんだろうなぁって考えてて‥‥」

「この城の誰かが手引きした、が一番可能性が高いと思います。それもそれ相応に地位の高い人物かと」

「あ、ヒノカさんもそう思いますか?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「はぁ‥‥」


ついため息をついてしまう。まさか城内に魔王軍の侵入を許してしまうとは‥‥我ながらなんと情けないことか。一体どんな手を使って城に侵入したのか、早急に調査する必要がある。


(父上と母上がどれだけ偉大だったか思い知らされる。二人がいてくれれば‥‥)


五年前、私の両親は死んだ。国と民を守るために戦い命を落とした。以来私が女王として周囲の方々の協力を得ながらやってきたが、何かある度に両親の凄さを思い知る。


「女王陛下ぁっ!!」

「‥‥!どうしました?」

「大変です!!また城内にジャマーが!!」

「は‥‥!?」


飛び込んできた兵士の言葉に反射的に立ち上がってしまった。


「場所は!?」

「地下です!!」

「直ぐに排除するんだ、ここにいる者達も向かってくれ。

くれぐれもこのことが国民に洩れることのないようにするんだよ!!」


大臣の言葉に従って兵士達は出ていき、残ったのは私と大臣だけとなった。


「一度ならず二度までも‥‥一体どこから‥‥」

「"ロック"」


突然大臣が扉を魔法で施錠した。予想外の行動に動揺する。


「大臣、なにを‥‥」

「"プロテクト"」


大臣は答えず、防御強化魔法で扉を補強する。

まるで誰も入ってこれないようにしているようだった。


「いやぁようやくこの状況が作れたよ。これぐらいの騒ぎでも起こさないと、王の間から人を追い出すのは難しいからねぇ」

「何を、言ってるんですか‥‥‥‥?」



「まだ分からないかい?私が、この城にジャマーを手引きした張本人さ」



なんてことないように話す大臣の顔にはいつも通りの笑みが浮かんでいる。私は初めて人の笑顔に恐怖と嫌悪感さを覚えた。

彼の笑みはこんなにおぞましいものだったか?


「嘘、ですよね‥‥?おじい様の頃から国に仕えていた大臣が、そんな‥‥」


大臣は私の祖父の時代より国に仕えてきた。

聡明で優れた魔法の使い手であり、祖父も両親も、そして私も信頼を寄せ、幾度となく助けられてきた。


「やれやれ、女王と言っても所詮はお子様だねぇ。目の前にある現実と事実はちゃんと見た方がいい」

「だって‥‥だって、大臣がこんなことをする理由がない、ではありませんか‥‥」

「お前さんを殺してこの国をもらい受けるため、とは言えば納得出来るかい?

はは、我ながら口に出すと陳腐だねぇ」


とんでもない発言に眩暈を覚える。今なんと言った?


「正直なところね、五年前国王と女王が死んだ時、少なくとも当面は私が国を取り仕切るもんだと思っていたんだよ。お前さんは知らないだろうけど実際そう考えていた人間もそれなりにいたんだ、それだけの信頼と実績が私にはあったからね。

ところがだ、蓋を開けてみれば当時七歳のおちびちゃんにそのまま王位を継がせたわけだ。あれだけ国のために尽くしてきてやったってのに‥‥‥‥屈辱だったね。それ以上にガッカリした。

だから、今回こうして行動に移したわけさ」

「そんなことのために魔王軍に下ったのですか‥‥己の野心のために‥‥‥‥!!」

「目の前に一国を手にする機会(チャンス)があれば手を伸ばす、当然だろう?

ほんと、魔修羅共は良い時に来てくれたもんだよ。今ならいくらでも罪を擦り付けられるからね」


『ブロブ!』


魔我魂を取り込んだ大臣の姿が化物へと変わっていく。ブヨブヨした肉塊が人型になったような醜悪な姿に生理的嫌悪感が込み上げてくる。


「それじゃあ、死んでもらおうかね」


大きく裂けた口だけがある顔で襲い掛かってくる。咄嗟にディフェンドで防御壁を張るが直ぐに破壊されてしまう。


「無駄な足掻きをするねぇ!往生際の悪い!」

「っ‥‥‥‥‥‥!!」


ひたすら防御壁を展開して凌ぐ。


「その程度のディフェンドがどこまで持つかな!?」


(誰でもいい、誰かが戻って来るまで時間を‥‥!)


そう考えた時ハッとした。

何故私は、未だに誰かに助けてもらうことを考えている?

私はこの国の王、助けられるのではなく助ける立場。

自らの力で苦難困難を乗り越え、民が進むべき道を切り開く。かつて両親のように━━━━━


「ネロカタラクタッッ!!」


ディフェンドが砕かれると同時に激流で怪物を押し流す。


「このっ‥‥小娘‥‥!」

「イグニス! サクスム!」


怪物を壁際に押しやった隙に扉に攻撃を仕掛ける。

放った炎と岩はどちらも命中するが、扉は壊れないどころか無傷だった。


「小娘が!無駄な抵抗するんじゃない!お前程度が私のプロテクトを破れるわけないだろう!」


襲い掛かってくる怪物をなんとか躱して攻撃を続ける。


「往生際の悪い小娘だねぇ、一思いに両親の所に送ってやろうというのに‥‥!」

「まだ二人の下にはいけません。私には私のやるべきことがある‥‥ここで殺されるつもりも、貴方に国を渡すつもりもありません。

私は王です!!」


そう叫んだ時、閉ざされていた扉が吹き飛んだ。


「陛下!!」

「陛下、ご無事ですか!?陛下!!」


現れたのはソードセイヴァートラロックとシュバリエラ。予想外の事態に怪物も驚く。


「馬鹿な‥‥何故ここに!ジャマーはどうした!?」

「兵士の方々に任せて急いで戻ってきました。

やはり犯人は貴方なんですね、大臣」

「何故だ‥‥大臣殿何故‥‥‥‥!!」


シュバリエラは悲しみの中に悔しさを滲ませた顔で怪物を見つめる。


「ふん、突っ込むことしか出来ないイノシシ女がそんな顔出来たのかい。意外だね」

「答えてくれ‥‥何故貴方ほどの人がこんなことを!」

「それはさっきそこの小娘に話したよ。面倒だから簡単にまとめるけど出世と権力のためさ、誰にだってあるものだろう?」

「そのために私達を裏切るのか!?貴方がこの国に仕えたのは昨日今日の話ではないだろう!!

四十年近く仕えてきた国を!何故そう簡単に切り捨てられる!!?」

「もういいよ、その話も小娘とした。恨むなら私を選ばなかったあの馬鹿夫婦を恨むんだね。

今思えばあんな若造が王なんて片腹痛いよ、無能がしゃしゃればそりゃあくたばるわ」


怪物が吐き捨てた時、シュバリエラが怪物に斬り掛かった。


「貴様‥‥陛下に危害を加えるだけでは飽きたらずあのお二方まで侮辱するのか‥‥!!許さん!!」


シュバリエラは果敢に挑むが怪物は軟体を活かした不規則な動きで攻撃を躱すと反撃する。


「っ‥‥舐めるなぁ!」

「邪魔だよイノシシ!!」


斬りかかったシュバリエラは吹き飛ばされるがトラロックが受け止め、怪物を斬り裂く。


「ギッ‥‥!!」


流れるように連続で斬撃を浴びせるトラロックに反撃しようとする怪物だがまるで追い付けず、あっという間に変身を解除されてしまった。


「すごい‥‥」

「‥‥流石聖剣士、ここまでとはね‥‥!」

「大人しく捕まってください。私も大臣にはお世話になりました、これ以上手荒なことはしたくありません」

「言うじゃないか‥‥‥‥これは使いたくなかったんだがね‥‥!」


大臣が取り出したのはモンスライザー。魔王軍が傲魔獣に変身するためのアイテムだ。


『モンスライズ』


大臣はそれを装着すると瞬く間に更なる異形へと変貌する。膨れ上がった半透明の肉塊が筋骨隆々の人型になったような怪物が吠える。

トラロックは怯むことなく戦いを挑むが先程の怪物より強化された傲魔獣は強く、力任せに暴れまわる。


「ハハハ!案外悪クナイネェ!!」

「はぁ!!」


「‥‥シュバリエラ、宝笑さん達を呼んできてください今直ぐに」

「陛下しかし‥‥」

「彼らの力が必要です。責任は全て私が負います」


シュバリエラは葛藤した後、背に腹は代えられぬといった表情で出ていった。


(戻ってくるまで私も戦わなければ‥‥!)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「おい魔修羅!!」

「うおおビックリした」


ドアを勢いよく開けて入ってきたシュバリエラさんは切羽詰まったような様子で目の前までやって来た。


「今すぐ私と来い!お前らもだ!」

「な、何事っすか?」

「詳しく説明しなさい。私達に何の用かしら」

「陛下がお呼びだ早くしろっ!私だって頼りたくて貴様らを頼るんじゃないんだ!」

「‥‥‥‥分かりました、向かいながら聞きます」


シュバリエラさんの後を追って部屋から飛び出す。走りながら何があったのかを聞いた。


大臣(あの人)が犯人だったのか‥‥!」

「あの人、自分のことは棚に上げて私達をあんなに言ってたんですか‥‥」

「私達に意識を反らす目的もあったのかもしれないわね。そうすれば動きやすくなるから」

「ラメールさんと女王陛下が無事だといいですけど‥‥!」


そうして辿り着いた王の間ではトラロックと女王様が肉塊のような傲魔獣と戦っているところだった。直ぐに魔修羅に変身して飛び込む。


「魔修羅ァ!!」

「宝笑さん!」

「話はシュバリエラさんから大体聞きました!」


傲魔獣をブレードで斬り付け、キックを叩き込む。反撃で吹っ飛ばされるが転がりながら体勢を立て直して再び攻撃。

トラロックも攻撃に加わり、女王様の援護攻撃も受けて傲魔獣を追い詰めていく。


「邪魔ナンダヨォ!!」


傲魔獣は膨張し巨大化した腕を振り回して暴れる。防ぐが滑るように大きく後退し、更に追撃がやってくる。


「ヤバいっ‥‥!」


直ぐ後ろにいた女王様に咄嗟に覆い被さるのとほぼ同時にぶっ飛ばされて壁に叩き付けられる。


「痛っ、てぇ‥‥」

「宝笑さん!しっかり!」

「死ネ小娘ェェェェェェ!!」


振り下ろされた傲魔獣の腕にナハトさんの矢が刺さった。怯んだところにトラロックの息もつかせぬ連続攻撃が放たれ、ヒノカさんとフラムちゃんも加勢する。


「ギャアァァァァァァァ!!」

「やっぱり傲魔獣にはヒノカさんナハトさんの力が効くっすね!」

「ナハト、フラムちゃん、行きましょう!」

「はい、姉様!」


「申し訳ありません、私を庇わなければ避けられた筈なのに‥‥」

「大丈夫、気になさらないでください。女王様が無事なら問題ありません」

「陛下、こちらへ!」


女王様はシュバリエラさんに連れられて下がる。

剣を構え直して助走からの跳躍、勢いを乗せた一撃で傲魔獣を斬り裂く。


「ギャアァァァァァ!!オォォノォォレェェェェェェェェェ!!!」


怒る傲魔獣は両腕を伸ばすとフラムちゃんを取り込んだ。驚いて動きが止まった間にヒノカさん、ナハトさんも取り込まれてしまった。


「フラムちゃん!!ヒノカさん!!ナハトさん!!」

「宝笑気を抜かない!!」


フィーニアスさんの声のおかげで攻撃を半ば反射で躱すことが出来た。俺に意識が向いている隙を突いてトラロックが仕掛けるが、傲魔獣は取り込まれた三人を盾にして牽制する。


「ドウダァ!?攻撃デキルナラシテミルトイイ!!コノ小娘共ガドウナルカハ知ラナイケドネェ!!」

「くそっ!卑怯なことしやがって‥‥!!」

「ハッ、覚エテオキナ小僧!命ノカカッタ戦イニオイテ、ソンナ甘ッタレタ言葉ガ入リ込ム余地ハナイ!敵ノ仲間ハ突クベキ弱点ナノサ!!」


傲魔獣はそう吐き捨てて再び暴れ出す。


(とにかく早く三人を助けないと!あの体、半透明のスライムみたいな感じだけど酸素とかどうなってるんだ!?呼吸はどれだけ続く?今の段階では大丈夫そうだけどそれが何分も持つとは限らない!)


暴れる傲魔獣の懐に飛び込んでブレードを振るう。


「宝笑さん、無茶はしないでください!」


トラロック━━ラメールさんには申し訳ないが、今は俺のことはどうでもいい。三人を助けるのが最優先だ。

三人が納まっている腹を避けて攻撃を続け、なんとか引っ張り出す隙を狙う。


「鬱陶シイネェ!!ネロォ!!」


ばらまかれた火球をもろに食らってしまい、捕まって締め上げられる。


「ぐっ‥‥!」

「ナンダ思ッテイタホドジャナイネェ。コレガアノ魔修羅ダナンテ、拍子抜ケダ」


嘲笑する傲魔獣。その腕をトラロックが一刀両断した。


「ラメールさんすみません!」

「焦る気持ちは分かります。ですが宝笑さんが倒れればヒノカさん達が悲しみます、もう少しご自分を大切にしてください」

「━━とにかく、三人は絶対に助けます。そのためなら多少の無理も無茶もしますよ」

「‥‥‥‥‥‥分かりました。くれぐれも気をつけてください」


同時に駆け出し、繰り出される攻撃を躱しながら傲魔獣を斬る。トラロックは足下に生み出した波に乗りながら激流の斬撃波や高圧水流を纏った斬撃で攻撃する。


「チィィィィィィィ鬱陶シィィィィィィィ!!」

「はぁっ!!」

「たぁぁ!!」


交差するように大きく傲魔獣を斬り裂く。倒れた傲魔獣に飛び乗りヒノカさん達を引き上げようと体内に手を突っ込む。


「掴んで!!」

「宝笑さん‥‥!」


しかし傲魔獣が起き上がったことで失敗、振り下ろされた腕を後ろに跳んで躱す。


「クソッ!」

「ハイドロシュート!!」


トラロックの動きに合わせ、召喚されたサメ型モンスター・ハイドロシャークがジェット噴射の如き激流を放つが、傲魔獣は放たれた水流を吸収してしまい、体を一回りほど肥大化させる。


「無駄無駄無駄無駄ァ!!小娘如キノ技ナド効カンワ馬鹿メ!!」

「マジかよ‥‥!」

「傲魔獣化した影響です、本来のブロブに今の技を吸収出来るだけの力と容量はありません‥‥!」


振り下ろされた腕を躱して隠れる。


「どうすれば‥‥!ラメールさん、さっきの言い方からすると奴の吸収能力って底なしではないんですよね?」

「はい、ブロブの吸収能力には限界があります。ですが私の技を吸収できるとなるとかなり強化されている筈、それをどう破るか‥‥」


「フン、ソレデ隠レタツモリカイ‥‥ア?」

「「!!」」


「! マズいっ‥‥!」


傲魔獣の意識が女王様とシュバリエラさんに向いた。隠れていた柱から飛び出して滑り込み、二人の盾となるがガードが間に合わずに強烈な一撃で吹き飛ばされた。


「邪魔ダ魔修羅ァ!!」


再度二人に襲いかかろうとした傲魔獣の腕に斬撃波を飛ばして攻撃を止める。すかさずトラロックが接近して攻撃し、傲魔獣を二人から引き離すように立ち回る。


「今日はよく吹っ飛ばされる日だな‥‥背中痛‥‥」

「‥‥‥‥何故だ、何故貴様はそこまでする」


俺の前に立ったシュバリエラさんは複雑な顔で尋ねてくる。


「貴様にとっては、私も陛下も、この国さえもどうだっていい筈だ。自分を殺そうとした人間を何故身を呈してまで庇った。そこまでする理由は貴様にはないだろう‥‥!」

「‥‥‥‥大した理由なんてありませんよ」

「何ぃ?」

「強いて言えば自分に出来ることをしているだけです。困っている人がいて、自分にその人を助けられる力があったら誰だって助けたいじゃないですか。

シュバリエラさんが俺に懐疑的で危険視するのは当然だし、それとこれとは別ってだけです」


そう答えて傲魔獣に向かう。


「‥‥ちっ、イカれてるのかあいつ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


傲魔獣の攻撃を受け流しながら三人の救出の隙を窺う。ブロブは獲物を取り込んで補食する魔物だ、このまま時間を掛ければヒノカさん達は恐らく消化されてしまうだろう。一刻も早く助けなければならない。


「コンナ小娘共捨テ置ケバイイモノヲ。ゴ苦労ナコトダネェ!!」


傲魔獣の放った火球を斬り裂き、再び水流を放つがやはり吸収されてしまう。立て続けに吸収しても行動に支障がないことから、どうやら吸収限界は相当強化されているらしい。

戦いながら思案していると、戻ってきた魔修羅が傲魔獣に斬りかかった。


「くっ‥‥!」

「マダヤルツモリカイ!懲リナイクソガキダネェ!!」


攻撃を避けて距離が開く。すると魔修羅は駆け出し、自ら傲魔獣に取り込まれた。


「なっ‥‥!」

「馬鹿ダネェ!オ仲間ト一緒に消化シテヤルヨ!」


「~~~~ドゥオリャア!!」


魔修羅は取り込まれていたヒノカさん達を力ずくで外へと放り投げた。直ぐに駆け寄り介抱する。


「うっへぇ~!ベトベトするっす~!

あとなんか臭いっす~~!!」

「姉様ご無事ですか!」

「私は大丈夫、ナハトも平気?」

「直ぐに浄化します、皆さんそのままで」


「余計ナコトヲ‥‥小娘共ガイナクナッタ分、オ前ノ消化ガ早クナルダケダ!」


傲魔獣が笑った瞬間、剣を操作した魔修羅が大量の魔力を放出する。


「キ、サマ━━!」

「俺が出し切るのが先かあんたの限界が先か、我慢比べだ‥‥!」


それを聞いて理解した。宝笑さんはあえて取り込まれることで敵の体内から大量の魔力を吸収させ続ける捨て身の戦法を取ったのだ。

先に傲魔獣が限界を迎えればほとんど決着したと言っても過言ではない大ダメージを負うだろう。しかし、逆に魔修羅の魔力が先に尽きれば宝笑さんは力を維持できずに変身が解け、そのまま消化されてしまう可能性が高い。


『必殺水刀!』

「ハイドロキャノン!」

『ハイドロシャーク!怒涛激流撃!!』


魔修羅を援護するためハイドロシュートを超える激流を放つ。傲魔獣は焦りながらも吸収するが、先程と比べて明らかに余裕がない。

お互いに更に出力を上げる。


「グ、オォォォォォォォ‥‥!オォォォノォォォレェェェェェェェェ‥‥!!」


なんとか耐えようとするも膨れ上がった腹部が破裂。魔修羅が転がり出てくるのと同時に腹部が大きく抉れた傲魔獣が倒れる。


「キッ、サ、マ、ラァァァ‥‥!」


「魔人一閃斬!!」

「アクアボルテックス!!」


『バジュラ!デモニックブレイク!!』

『ハイドロシャーク!怒涛激流斬り!!』


繰り出した合体必殺技を叩き込まれた傲魔獣は爆発と共に跡形もなく消え去った。


「‥‥‥‥大臣、今までありがとうございました。

私のような小娘にどこまで出来るか見ていてください」


女王陛下は燃え残る炎に告げた。

その目には確かな決意が宿っていた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「本当に、宝笑さん達にはなんとお礼とお詫びを申し上げたらいいのか‥‥誠に申し訳御座いませんでした」


女王様は深々と頭を下げた。


「いえ、何とか解決して良かったです。女王陛下もご無事で何より‥‥‥‥大臣さんのことはあまり気になさらないでください」

「お心遣い感謝致します。後始末はこちらでしますので、宝笑さん達はどうぞゆっくりとお休みください」

「‥‥分かりました。では、お言葉に甘えさせていただきます。ご厚意感謝いたします。

━━━━失礼します」


その場を後にして客室に戻る途中、フラムちゃんから尋ねられた。


「宝笑さん、お手伝いしなくていいんすか?」

「確かに。宝笑さんなら二つ返事で手伝うかと思っていましたが」

「本当はね。でも女王様の今の立場や状況を考えると、これ以上俺が手を出すのは良くないかなって」

「???」


フラムちゃんが頭に疑問符を浮かべるとフィーニアスさんが説明し始めた。


「王立騎士団長は国の恩人に散々無礼を働いた挙げ句暗殺未遂を起こし、大臣は裏で魔王軍に寝返り国家転覆を目論んで反乱‥‥国の上層部の人間が二人も問題を起こしたの、女王陛下にとっては相当頭と胃が痛い状況よ。

そんな今の女王陛下にとって、無礼の数々を責めるどころか一連の事件の解決に大きく貢献した宝笑はこれ以上ない大恩人。

その宝笑の手をこれ以上煩わせるようなことをすれば女王陛下の立場、立つ瀬が完全になくなってしまうわ」

「な、なるほど?」

「つまり、あそこで宝笑さんが後片付けを手伝ってしまうと女王様やお城の人達の立場を却って悪くしてしまう、ということですね」

「あ、なるほど」

「流石です姉様」


ヒノカさんの要約にフラムちゃんは納得して頷いた。


「フィーニアスさんが言うほど御大層じゃないけど大体そんな感じ。

本音を言うと手伝いたいんだけど、他所から来た俺がそこまで手を出したら女王様の立場とか面子とか本当に潰すことになるから、今回は弁えたよ」

「宝笑さん、重ね重ねありがとうございます。私からもお礼を申し上げます」


ラメールさんが深々と頭を下げた。


「皆さん、今日はよく休んでください。私は戻って陛下達を手伝います」

「ありがとうございます。ラメールさんもご無理はなさらず」


ナハトさんの言葉に頭を下げ、ラメールさんは来た道を戻っていった。


「ひとまず、一件落着だね」

「なんか一日の内に色々起きすぎじゃないっすかねぇ~~どっと疲れたっす」

「今日はもう休みましょう。流石に少し眠いです」


俺達はそのまま部屋に戻り、各々休息を取ったのだった。



閲覧ありがとうございました。

筆早い人ってどうやって書いてるんだろう‥‥‥‥

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