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エピソード:10『王子様といっしょ』

こんにちは、ウマ娘でピックアップキャラを手に入れるまでに三人すり抜け、結局天井したライダー超信者です。ピックアップってなんだよ(哲学)


前回の一件を乗り越えた宝笑は引き続き魔王軍の行動隊長を撃破、平和維持に貢献していた。それを謎の影を見つめていて…………?





「はぁっ!!」



魔我魂を使って変貌した魔王軍行動隊長を撃破。

爆発の中から変身が解除された男性が現れ、排出された魔我魂も砕け散る。


「よし、捕らえろ!」

「ちくしょう……離せ!離せぇぇ!!」


行動隊長は騎士団に連行されていき、一件落着。変身を解いて元に戻ると、ジャマー達を相手取っていたフィーニアスさんも戻ってきた。


「宝笑さーん!終わったっす~!」

「フラムちゃんおつかれ!みんな大丈夫だった?」

「えぇ。何事もなかったわ」

「ジャマーは破邪の力がよく通るので却って対処しやすいです。行動隊長は?」

「無事撃破!」


サムズアップして答える。ナハトさんにはそのままスルーされた。


「…………まぁ、あれだな。牛獣人みたいにならなくて良かったよなぁ~」


蜘蛛男の一件から二週間が経った。

あれからも魔王軍の侵攻は止まず、さっきので既に三人の行動隊長を撃破していた。幸いその三人はモンスライザーは使わずに魔我魂だけで挑んできたため、命を奪わずに撃破することが出来たのだった。

ちなみにブレイズさんは聖剣使いの仕事やら任務やらがあって四日前からいない。


「宝笑さんお見事ですっ。どんどん救世主としての風格が立派になっていきますね~」

「だといいんですけどね~~…………ん?」


ふと視線を感じた方を見ると、誰かが物影に隠れた。


「ん~~~~?」

「どうしたの」

「いや、あそこから誰かに見られてたような気がしたんだけど…………なんだぁ?」


物影を覗きこんでみたが、そこには誰もいなかった。


「誰もいないっすね」

「あれ、気のせいかなぁ?」

「しっかりしてください。周りの方々のためにも余計な不安を煽るような発言は謹んでください」

「へい……」

「まぁまぁナハト。言い分は分かるけど、結果何もいなかったんだから大丈夫よ」

「そうね、悪い気配もしないわ」


ヒノカさんとフィーニアスさんに宥められたナハトさんはふくれっ面になる。美人だから絵になる。かわいい。


「じゃあ酒場に行きましょっか~!お昼食いそびれたから腹減りました」

「賛成です!私もお腹が空きました~」

「酒場に参りましょう。姉様のために、早く」


そうして俺達は足早に酒場に向かうのだった。



「すごい…………」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁ~~食った食った」


宿屋に戻ってきた俺はベッドに横になりながら膨れた腹をポンポン鳴らす。この後これといった予定もなく眠くなってきたこともあって一寝しようと目を閉じた時、トントンとドアがノックされた。

億劫な気持ちを堪えながらドアを開けると、そこにはフード付きの外套を身に纏った小柄な人物が一人。

当然ながら顔はほとんど見えない。


「えーーーっと……どちら様ですか?」

「あ、あのっ、僕です。覚えてますか?」


フードの下から現れたのはゆるいカールのかかった金髪の美少年だった。あどけない女の子のような顔立ちに青い目、人形のようによく出来たその顔には見覚えがあった。


……………………あの王子様だ。国王様に謁見した時に少し顔を合わせただけだったが、これだけ綺麗な顔をした人間をそう簡単に忘れるわけもない。

鼻が垂れるほど驚いた俺は思わず叫びそうになるが、それを見越していたであろう王子様に口を塞がれる。


「はほん「しぃー!お忍びで来てるんです」イ、イエッサー。とりあえず部屋に入りますか?」


頷いた王子様を部屋に案内して椅子に座ってもらう。ひとまず何事かと話を聞いた。


「えっと……王子様、どうしてここに?」

「あ。改めまして、この国の王子マッハバロンです。先日は大変お世話になりました」

「き、城戸宝笑です。それで……失礼ですけど、王子様ほどの人がどうしてここに?」

「……………………あのっ、僕をクエストに連れていってもらえませんか?」


あまりに突然のお願いにぶったまげた。


「僕、昔から体が弱くて、ずっとお城の中で過ごしてたんです。外に出てもお城の庭くらいで、街に行けた回数は今までの人生で十回もありません」

「今は大丈夫なんですか?」

「はい、皆さんが届けてくれた卵のおかげで随分と良くなりました。こんなに長く安定した状態が続くのも久しぶりで…………一人でここまで来たのは初めてです」

「国王様達、心配してるんじゃ……?」

「置き手紙は残してきました!そもそも今までが自室に籠りきりだったので、眠ってますって書いた看板を提げておけば三時間くらいは時間稼ぎが出来ます!」

「そんな元気に言うことじゃないような…………」


よほど一人での外出が楽しいのかワクワクしている気持ちがあちこちから溢れている。この純粋さが満ち満ちている感じ、フラムちゃんと似たものがあるなぁ。

しかし王子様を連れてクエストは…………正直バレたら裁判どころじゃ済まないよなこれ…………よし、みんなにも聞こう。


ーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーー


「なるほど…………事情は分かったわ。随分と無茶をしましたね、マッハバロン王子」

「あはは、こんな時でもないと無茶出来ないので……」

「そもそも無茶はするものではないと思いますが……」


ナハトさんが優しくツッコむと王子様は恥ずかしそうにはにかむ。女の子みたいな仕草がやけに似合うなと失礼なことを考えていると、ヒノカさんやフラムちゃんも会話に混ざる。


「出来れば叶えてさしあげたいっすね。簡単で危険度の低いクエストなら大丈夫っすよ!」

「うーん、お連れしたい気持ちは分かりますけど、万が一があったら一大事では済まないのも確かですからね~。この国の未来そのものと言っても過言ではないお方ですから」

「……………………………………………………」

「…………王子様は、どうしてクエストに行きたいんですか?」


俺の問いに、王子様は寂しそうに話し出した。


「一番の理由は、羨ましかったからです。

色んな本を読んだり、騎士団の皆さんの話を聞く度にいつか、いつかお城も街も超えて、この広い世界を全身で感じたいってずっと思っていたんです。

でも、病弱な僕ではとても現実的じゃなくて……憧れと諦めが交互に浮かんで沈む、そんな毎日でした」


王子様が今までどれだけ苦しい思いをしてきたのか、それは分からない。でも王子様の表情や声色から、俺の想像なんて届かないほどの苦労をしてきたことだけは分かった。同時に、健康な体に産んでくれた母ちゃんに感謝の気持ちが湧く。


「でも!そんな時に皆さんに出会えて……強くて優しそうなこの人達ならもしかしたらって思ってしまって、それで…………」

「……分かりました。俺がクエストにお連れします」

「宝笑さん!!自分のその無責任な言葉の意味を分かっていますか!?

一国の王子を無断で連れ出すなんて、誘拐や国への反逆行為と見做されても文句は言えないんですよ!

もし仮にマッハバロン様の身に何かあったらどう責任を取るつもりですか!!」

「ナハト落ち着いて「そん時は俺が腹を切るよ」


俺の予想外の言葉にナハトさんはもちろんこの場の全員が固まった。


「ナハトさんごめん。俺、王子様の願いを叶えたいんだ。個人的な我が儘だからみんなについて来てとは言わないよ、俺一人が処罰されるだけで済むしね」

「宝笑、本気?」

「本気。ほんとただの俺の都合だけどさ……まぁ色々あって……」


脳裏に〝あの子〟のことが浮かぶ。そういえばパッと見た感じ王子様とは歳近いだろうな…………


「分かった、私も行くわ」

「フィーニアスさんまで……!」

「そもそも、私は宝笑の案内役。宝笑が行くところには着いていく義務があるわ」

「…………いいの?」

「いいも何もないわ、言ったでしょう、それが私の義務なの。個人的に貴方を一人にするのは心配というのもあるけれど」

「自分も着いてくっす!元からそのつもりだったっすけど!ヒノカさんはどーするっすか?」

「行きます。私も可能ならお連れしたい気持ちはあったので…………ふふっ、同罪ですね」

「はぁぁぁぁ…………姉様が行くというのなら行かないわけにはいかないじゃないですか。本当に宝笑さんは……」

「ごめんて…………もし問題になったら『俺に唆された』ってことにすればいいからさ……」


ジットリとした恨みがましい目を向けられ、申し訳なくなって視線を泳がせる。しかしこれで目的は決まった。後はどんなクエストに連れていくかだけど…………悩んでいるとフィーニアスさんが提案した。


「クエストは採取系、この街から少し離れた場所の依頼を選べばいいと思うわ。それならマッハバロン様の要望に比較的安全に沿えると思う」

「なるほど、行きと帰りはどうしよう?なるべく早い方がいいよね」

「比較的近場のクエストがあるかもしれないわ。

ひとまず見に行きましょう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そうして俺達が今向かっているのは街から離れた草原にある洞窟だ。ここに薬の材料になる光る苔・淡光苔があるらしく、それを採取するクエストとなっている。

装備さえある程度揃えておけば簡単なクエストらしいけど、はてさてどうなるかなぁ。


「わぁ…………!!すごいすごい!本当に外にいますよ!外の世界ってこんな感じなんだ……!」


既に一時間ほど歩いているにもかかわらず、王子様は目をキラキラさせながらあっちに行ったりそっちに行ったりしている。さながら外を駆け回る子犬のようだ。


「王子様楽しそうだなぁ」

「楽しんでもらえているなら何よりですね~、失礼ですけど、お可愛らしいなぁ……なんて」

「姉様も宝笑さんもあまり呑気なことを言ってないで、周りに気を配ってください。特に宝笑さん」

「そりゃあもちろん」


王子様を見守りながらしばらく歩くと、目的地である大きな洞窟に辿り着く。

ぽっかりと大口を開けたような真っ暗な穴は、俺がこの世界に来る原因となった黒い穴を思い出させた。

依頼書によればこの洞窟を少し入った所に淡光苔があるらしく、王子様を中心にして囲む形でフォーメーションを組むと中に入っていく。


「うわぁ暗いし湿気もなかなかだなぁ…………」

「洞窟ですし致し方ないかと。皆さん、気をつけてください」

「わぁ……真っ暗です!すごいなぁ!」

「マッハバロン様、足元にお気をつけて」

「しかし目的の苔が見当たらないっすね、普通の苔ならバンバン生えてるのに」

「生えているのはもう少し奥の方ね。別の場所でナハトと一緒に採取クエストを受けたことがあるけど、ある程度奥に行かないと見つからなかったから」


そうこう話しながら進んでいく中、ふと思い出したことを王子様に尋ねた。


「えっと、王子様」

「マッハバロンでいいですよ。今の僕達パーティーなんですから!それにホーショーさんの方が年上ですし……」

「まぁ、23歳には見えないですね。宝笑さんとは違う意味で」

「ひでぇや」

「23歳……!いいなぁ、僕なんてまだ12歳ですよ」

「ワーオ当時の俺よりずっとしっかりしてる。

…………じゃあマッハバロンくんはさ、どうして俺を頼ってきたの?正直俺よりも遥かに信用出来る冒険者(クエスター)なんていくらでもいたよね?」

「……ホーショーさんは、魔修羅ですよね。さっきの戦いも陰から見ていたんですけど、すごく強くて……」

「あっ!!もしかして、あの時の視線ってマッハバロンくん!?」

「はい、咄嗟に逃げちゃいましたけど」


やっぱりあの時感じた視線は間違いじゃなかった。

ナハトさんと目が合うと気まずさからかソッと逸らされる。それを見て魔が差した俺は少しからかうことにした。


「ほら~ナハトさん言ったっしょ~誰かに見られてるってぇ~~」

「…………………………………………」

「ショックだなぁ、そりゃまだ出会ってそんな時間も経ってないけどさ、それにしたって少しは信用してもらえてると思ったのになぁ?まさか一蹴されて怒られるとは思わなかったなぁ悲しいなぁ」

「……………………………………………………………………………………ごめん、なさい」

「ん?」

「疑って、ごめんなさい……!!しっかりしてないのは私の方でした……!!これでっ、いいですか……!?」


屈辱半分、怒り半分の形相で睨まれながら謝るナハトさん。恥ずかしさと悔しさからかうっすら涙目になっている彼女を見て察する。


(あ、これ以上余計なこと言ったら死ぬねこれ)


「ごめんなしゃい調子乗りました……」

「あ、あのっ!お話の続き、してもいいですか?」


マッハバロンくんの焦った声で意識が引き戻され、そういえば話の途中だったことを思い出す。


「ご、ごめんごめん。えっと、なんで俺を選んだかの理由だよね?」

「はい。一つは魔王軍を退けるほどの強さ、二つ目は……その、優しそうだったからです……僕のお願いを聞き入れてくれそうだなぁ、なんて……」

「それなら、宝笑さんに声をかけたのは正解ですね~なんて」

「俺の数少ない長所のお人好しを見抜くか……流石王族、目が鋭い。まぁそれしかないけどね俺」

「宝笑さんってサラッと自虐しますよね……」

「…………………………そうね」


そんな世間話のような会話をしながら進んでいくと、淡い緑色の光がぼんやりと見えてきた。もしかしてと目を凝らすと、そこには光る苔が生えていた。


「これもしかして……」

「これが淡光苔です。これを採取したら、任務はほとんど完了ですね」

「すごい……本当に光ってます…………やっぱり、自分の目で見て肌で感じるって面白いです!」


受付で渡された採取セットの瓶をマッハバロンくんに渡して苔を採取してもらうとリュックにしまった。


「これでクエスト達成ですね!僕がクエストなんて未だに信じられません……皆さん、本当にありがとうございます!!」

「喜んでもらえてよかったよかった。後はこのまま帰れば正真正銘クエストクリアだなぁ~~」


伸びを一つしてリラックスした瞬間、洞窟の奥から重い響くような音が聞こえた。

マッハバロンくんを後ろに下がらせてバジュラブレードを召喚、みんなも臨戦態勢に入る。


「……………………何の音っすかね、今の」


フラムちゃんの問いに対する答えは直ぐに現れた。

巨大な〝蛇〟だ。人が三人ほど並べる洞窟内ギリギリのぶっとい胴体に花弁のように四方向に分かれる口、細長い二又の舌に牙を持った異形の蛇。


「なんじゃあこりゃあ!?」

「スワロウスネーカー!!獲物を丸呑みにする大蛇です!」

「不味いわね、一旦出ましょう。この巨体を相手にするには分が悪いわ」

「わぁ……魔物だぁ……!」

「マッハバロンくん喜ぶのヤメて!」


マッハバロンくんを担いで一目散に逃げ出す俺達。それを追ってくる大蛇。獲物としてか侵入者としてかは分からないが、逃がす気がないのは確かなようだ。


「あ、あった!出口あった!!」


見えてきた光に安堵し、その中に飛び込む。

洞窟から転がるように飛び出た俺達は草原にダイブし、急いで各々体勢を立て直した。

大蛇は洞窟から這い出てくると首をもたげ俺達を品定めするかのように見つめる。


「デッケェ…………十mできくかこれ……?」

「三十三……いえ、三十六.三尺ほどでしょうか」

「みんな散開して!」


フィーニアスさんの一言で散り、魔修羅へと変身。大蛇を斬りつける。


「シャアァァァ!!」

「おっと……!」


血が吹き出し、怒りの一撃を放つ大蛇だが躱して後ろに下がる。それを事前に知っていたかのようにナハトさんの放った矢が鱗と鱗の隙間に刺さり、大蛇が叫ぶ。


「ファイヤァァァ!!」


更にフラムちゃんの放った炎が大蛇を包んだ。もがく大蛇だったがそのまま地中に潜ることで消火、同時にどこから攻撃が来るかが分からなくなった。


「どっからだ……!?」


警戒した瞬間地面をぶち破って現れた大蛇に突き上げられ、大口を開けて俺を待ち構える。こんなの食べる気?お腹壊すよ?


「宝笑さんっ!!」

「こなくそぉぉぉぉぉぉぉ!!」


落下の勢いを乗せた一撃が口から入り、大蛇を上下真っ二つに両断した。ズシンズシンと音を立てて二つの長い肉塊が落ちた。

大蛇に手を合わせ小さく謝る。


「まさかこんな魔物がいるなんて……」

「あの洞窟を住処にしていたようですね。マッハバロン様、大丈夫ですか」

「はい、ホーショーさんのおかげで」

「これってギルドに報告した方がいいのかなぁ」

「した方がいいと思いますね~もしかしたらウォンテッドで賞金が懸けられているかもしれません」

「じゃあ戻りましょうか。宝笑、何か証拠になるような物を剥ぎ取っておいて」

「え゛ぇー!ここにいるって説明すれば良くない!?真っ二つにしといてなんだけど、これ以上ヒドいことしたくないよ俺!」

「鱗なんてどうでしょうか?一枚あれば十分証拠になりますし、大きな欠損も生まないかと」

「ヒノカさんそれだぁっ!!」


ヒノカさんによるグッドアイデアに自分でもびっくりするくらいの爆音の指パッチンで返す。フィーニアスさんの手解きを受けながら鱗を剥がして袋に入れてからリュックに入れた。


「それじゃあ気を取り直して帰りましょう」

「はーい!」

「フラムちゃん元気ね~」

「…………………………………………」


元気なフラムちゃんとは対照的にマッハバロンくんは寂しそうな顔をしている。それもそうだ、このクエストが終われば次この子が外に出られるような機会(チャンス)は何時やって来るか分からない。やっとの思いで手に入れた自由な時間が終わるとなれば暗い顔をするのも当然の話だった。

正直、このままもっとあちこち連れて行きたい気持ちはある。しかしここまで来るのに一時間、クエスト自体も四十分近く経っており、マッハバロンくんの時間稼ぎのことを考えるとそろそろな頃合いだ。


「大丈夫、また一緒に行こうよ」


そう言って頭を撫でると、マッハバロンくんは驚いた顔で俺を見る。


「本当、ですか……?」

「ほんとほんと。約束する」

「宝笑、そんな約束して大丈夫なの?」

「どーせそう簡単には帰れない身の上だしね。またこの国に来るチャンスはあるだろうから、その時にまた行こうよ。ねっ」

「はいっ!」


まぶしい笑顔にこちらも笑顔になる。


「さーて帰ったら無事でいられるかなこれ……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「マッハバロン!!」

「父上!」


なんとかこっそり帰ってこれた俺達はマッハバロンくんに連れられて城に来ていた。どうやらかなりギリギリのタイミングだったようで、あともう少しで軍を派遣して街中国中を探すつもりだったらしい。こわぁ。


「すまない、息子が迷惑をかけた……ありがとう」

「いえ、僕も勝手に連れ出した共犯者です。

処罰は僕だけにしてください。仲間達は何も悪くありません」

「いや、息子の我が儘に付き合ってくれたんだ。感謝はすれど処罰なんてしない。本当にありがとう」


眉を八の字にして安心しているその姿は国を治める王ではなく、子供を持つ一人の父上のものだった。


「父上ごめんなさい、僕、どうしても……」

「いいんだ、気持ちは分かる。無事で良かった。

…………でもな、あまり心配になるようなことはしないでくれ。お前に何かあったらルージュに向ける顔がない」

「はい…………」

「…………でもそうだな……今度一緒に出かけようか。

彼らの採ってきてくれた卵はまだある、お前の体調もしばらくは安定するだろう」

「! 本当?いいの!?」

「あぁ。ルージュの写真もペンダントに入れて、家族三人で出かけよう。きっと素敵な思い出になる」


マッハバロンくんは大層嬉しそうに頷いた。


「いいなぁ、いいお父さんで」

「? 宝笑さん?」

「ん?んーん、なんでもないよ」


やばいやばい、声に出ちゃってたか。気をつけないとな。


「御一行、本当に感謝する。礼がしたい、望むものはあるか?」

「ない……ですねぇ」

「そう言うと思った」


悩む俺達を見て王様は笑う。と、背後の扉が開いた。

振り向くとそこにはブレイズさんがいた。


「みなさん!どうして……」

「ブレイズさんこそ、任務だったんじゃ……」

「国王様からの任務も幾つかあったので。

失礼致しました国王様、任務完了の報告に上がりました」


ブレイズさんの王様への報告を待ち、一緒に城を後にする。王様とマッハバロンくんが見送りに来てくれた。


「国のこと、息子のこと、何から何まで本当にありがとう。君達と出会えてよかった」

「ホーショーさんっ、また一緒にクエストに行きましょうね!約束ですよ!」


抱き付いてきたマッハバロンくんを受け止めると頭を撫で、視線を合わせるために膝を突く。


「うん!絶対また行こう!約束する!

だから……また会える日までお父さんと元気でね」


ハグを一つして、俺達は手を振って別れた。

約束したからな、また戻ってこなきゃ。


「…………ねぇブレイズさん」

「はい」

「その、ルージュさんってどなた?」

「この国の王妃様ですね。数年前に病気で亡くなっているんです」

「そっか………………」


成る程なぁ、マッハバロンくんの力になってあげたいと思った理由が分かった気がする。俺と同じだったんだなぁ納得した。


(いや、うちの父親はあんな真っ当じゃないな。

国王様と比べんのは失礼だわ、うん)

「………………………………みんな、聞いて」

「んが?フィーニアスさんどしたの?」

「次向かうべき場所が決まったわ。聞いてちょうだい」


突然の言葉に全員驚く。


「次向かう場所とは?一体どういうことですか?」

「然るお方からのお達しよ。宝笑をより強くし、救世主としての力を高めるために……だそうよ」


俺を?強くする?どういうこっちゃ。

首を捻りながらフィーニアスさんに問いかける。


「その場所は?」

「水の国アリディア」

「それなら僕の知り合いがいますよ!同じ聖剣使いの女の子が護ってる場所ですから」

「女の子!?女性剣士もいるんだ……」


新しい聖剣使いか…………どんな人だろうなぁ。

とにかく目的地が決まったわけだしそこに行くしかないか。元いた世界に戻るためにも。



閲覧ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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