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退屈の殺し方  作者: 夜凪
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異変

────日本埼玉県

閑静な住宅街に悲鳴が響いた。

深夜ということもあり様子を見に来るものは誰もいなかった。


「何だ今の叫び声?」

男は寝付きが悪かった。


「変な浮遊感がしたと思ったら今度は悲鳴かよ……」

ため息を付きながら起き上がり部屋の電気を付けた。


「外に出るのはなぁ……」

ドアノブに手を掛けたが止めて窓から様子を見ることにした。


窓を開けると牙を持った何かが部屋に飛び込んできた。


「な、なんだ?」


「グルァァァ!!」

男が最後に見たのは真っ赤に染まった牙だった。





────アメリカネブラスカ州

昼時ということもあり店には数組の客が居た。

一瞬の浮遊感とともにテレビが一瞬カクついた。


「?」

男が連れと不思議そうにテレビを眺めていると店の奥の窓が割れた。


大きな影が他の客に襲いかかった。





────太平洋上空

フライトは特に問題もなく順調に進んでいて男は安心していた。


「何だ?」

航路が表示されなくなっていた。


「くそっ!」

スマホを取り出して見たがGPSが機能していなかった。


男はセンターコンソールを開き、衛星データリンクでメッセージを打ち込んだ。


『TOKYO ATC / AIR X 220 / LOST NAVIGATION / REQUEST RADAR VECTORS』

通常なら数秒で「ACCEPTED」の文字が画面に返ってくる。


「何でだ?」

送信してから何秒立っても返事が返ってこなかった。


「くそがっ!」

画面を叩くと同時にメッセージが表示された。


「焦ったな……」

男の希望はすぐに打ち砕かれた。


画面に表示されたのは『SATCOM DISCONNECTED(衛星通信切断)』というエラー表示だった。


「何だと!?」

男は慌てて受話器を取り上げ、バックアップの衛星電話の回線を開いた。


「東京コントロール、エアーエックス220。ロスト・ナビゲーション。応答願う。」


「管制塔?」

いつまで待っても返答が返ってこなかった。


まるで人工衛星が消えてしまったかのようだった。





アヤシアは人に囲まれていた。


深夜だったがスカイツリーのライトアップを見に来た人でまばらに人が居た。


「迷子?お家の人は?」


その少し後ろでも野次馬が集まっていた。


ゲートを見て何だこれ。などと口々に言っていた。


バキンと大きな音が響きスカイツリーの光が消えた。


家のように大きな影がスカイツリーによじ登っていた。


一斉にあたりの人が逃げ始めた。


「戻らないと……」

アヤシアは悲鳴と怒号が響く中、ゲートに歩みを進めた。





────5日後リミナリア

「もう大丈夫そうだな。」

辺りにある程度魔力が充満してきていた。


「そうだね。」

ユーノもまだ若干顔色が悪いがもう平気そうだった。


「全員倒れて気を失った時はどうしようかと思ったよ。」

倒れた皆を深月が空を飛び回収していた。


「何人か元気になったらヴェールシアの様子を見に行こうと思うんだけどどうだ?」


「私はもう行けるよ。」


「リュシオンとセリナは行けるらしい。」


「じゃあ行こうか。」





ゲートを通りヴェールシアを通るとボロボロの街が広がっていた。

「うわぁ……世紀末。」


「ていうかここヴェールシアじゃなくないか?」

景色の色でおかしいところは何もなかった。


「おー久しぶりに知らない人見た。」

後ろから急に声を掛けられた。


「ここらへんはカラーとガールの活動圏だから離れたほうがいいよ。」

声を掛けてきたのはアルビノの少女だった。


「カラーに見つかったら私みたいになるよ。」


「君名前は?」


「私は結菜、名字は忘れちゃった。」


「ここは地球で合ってるよな?」


「そうだよ。5年前の事件のせいでこんなになっちゃったけどね。」


「事件?」

急に怪物が現れて人工衛星が消えて復旧できないくらいめちゃくちゃになっちゃった。


「今はみんな拠点で協力しあって暮らしてるよ。」


「私は物資の探索係。」


「まあ死んだと思われてるだろうけど……」


「拠点を出てからもうすぐ一ヶ月経つんだよね。」


「カラーに襲われてその後逃げ回ってたらこんなところに来てたし。」


「それは大変だったな。」


「でも一番怖いのは人間だよ。」


「変な力を手に入れた人もいてね、東京駅に近づかない方がいいよ。」


「なんで?」


「氷像にされる。」


「スカイツリーは有名だし行ったことあるからこんなになってても道分かるかなと思ってきたけど全然そんなことないや。」


「連、保護しよう。」

ユーノが結菜の手を掴んだ。


「取り敢えず帰って作戦会議しなきゃだね。」

セリナが結菜に飴を渡した。


「どこに帰るの?」


「私達の拠点。」

ユーノが結菜の手を引いて歩き始めた。





「時の理め、5年時を進めたな……」

ノクサは地球にアヤシアを探しに来ていた。


(こんだけ荒廃してたらマリスの実験もできそうだな。)

ユスティアに付けたマークを思い返していた。


「にしても原生生物減ったけど強くなりすぎでしょ。」

倒すのに少し時間がかかっていた。


「それなー」


「この世界地獄すぎだろ。理が3体いるとか笑えるな。」

パンドラがノクサの隣で楽しそうにしていた。


「ここからアヤシアを見つけるのは難しそうだなぁ……」


「ならマリスの研究でもすれば?」


「簡単に言うね。」


「前に一回出来たのは私への悪意を利用したからだよ?」


「悪意を利用するなんて悪趣味ー」


「まあ拠点一つ破壊すれば出来るだろうけど。」


「さっきの原生生物でも溜まったし。」


「マリスを集めて何をしようとしてるの?」


「楽しい世界を作るためだよ。」


「マリスを使えばユスティアみたいに本人は何かをされた自覚もなく、解けない洗脳になる。」


「うわぁ……紛れもないヴィラン。」


「今までの善行でプラスマイナスプラスだよ。」


「人間の女性じゃなくてもう悪魔名乗った方が良いんじゃない?」


「私は悪魔の対極にいるよ。」





「こんなもんで良いでしょ。」

保存瓶に黒くドロドロとした何かが入っていた。


「気持ち悪。」


「悪意が具現化したものだもん仕方ないよ。」


「保管方法それでいいの?」

ただ瓶に入れて蓋を閉めただけだった。


「誰も触らないでしょこんなもの。」

瓶は禍々しい雰囲気を纏っていた。


「まだ探索するの?」


「いや今日はもういいかな。」

かなりの時間歩いていたが人に一度も会わなかった。


「また出直すよ。」





誰もいない街を一人の子どもが歩いていた。


「ふんふ~ん♪」

街には人どころか原生生物すらいなかった。


「どうやって遊ぼうかな〜」

子どもの前には家の様に大きな四肢を取られ動けなくなっている原生生物がいた。


「たっだいま~」

原生生物の口は無理やり開かされたままにされうめき声をあげることすら出来ない様になっていた。


「よっと。」

子どもは躊躇なく原生生物の口の中に入っていった。


「元気にしてた?」

原生生物の体内は家のように改造されていた。


「……ん……」

中には何人かの人間がいた。


「元気なさそうだねお姉ちゃん?」

子どもは近づいて口に貼り付けられているテープを剥がした。


「こんなことをして何が目的なのガール!」


「遊びたいだけだってお姉ちゃん。」


「拠点を壊したりするのを遊びなんて言わないでしょ!」


「……私はただ遊びたいだけなのにどうしてそんなことを言うの?」

ガールは首をかしげながら縛られている女性の指を掴んで折った。


「――!!」


「ダメなんだようるさくしちゃ。」

叫び声を上げるより早く口にテープを貼り付けた。


「遊びたいって言ってるだけなのにどうしてそんなことを言うの?」

悲しそうな顔をしながら腕を折った。


「遊びじゃないなら何が遊びなの?」


「んぐ……っ!」


「お姉ちゃんより前に会ったお兄ちゃんとおままごとをしたけどお兄ちゃんが弱すぎて楽しくなかった。」


「原生生物になりきって襲ったら直ぐ死んじゃった。」


「家?を作ったのも物を作るのは楽しいって言われたから。」

天井には肋骨が覆いかぶさっていた。


「原生生物は食べ物を食べなくても生きていけるから長持ちするよ。」


「でも簡単すぎて面白くない。」


「分かってくれる?」

右手を握りつぶした。


「なんか飽きちゃった。」


「ずっとここにいるから楽しくないだけだよね。」


「じゃあねみんな。」

縛られたままなのを放置しガールは家を出ていった。

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