風雲急を告げる
「あ、アリアが言ってたのってあなた?」
進む途中でセリナに遭遇した。
「え……あの……」
「その翼って身体から直接生えてるの?」
「そんな大きさしてるんだし当然飾りってことは無いんでしょ?」
「人に翼が付いてたらどう飛ぶのか気になるなぁー。」
(もう帰りたい……)
「彼女は疲れてるんだ今度にしてやってくれ。」
「まあそういうことなら……」
セリナは残念そうだった。
「パンドラどうすんだよ?」
「先生に相談したんですけど流されてしまって……」
「さっさとしっかり説明しないとやばいんじゃねぇのか?」
連とアリア、リュシオンは話し合っていた。
「でも先生は今、取調べ中ですし……」
「終わったらすぐ行くしかねぇだろ。」
「こればっかりはリュシオンが正しいな。」
「ユーノさんが戻ってきてからもう一度話し合いません?」
「そういえばユーノはどこ行ったんだ?」
「ユーノさんならルミナさんのところに……」
「あー……」
連はセリナと言い合いをしていたことを思い出していた。
気まずい空気が部屋に充満していた。
「よぉ!エルピス!」
エルピスの眠りを妨げたのはパンドラの声だった。
「んん……」
エルピスの目に真っ黒な毛並みが飛び込んできた。
「何で来たの?」
「お互い仕事は終わっただろ?」
「だとしても敵同士よ?」
「それはお互いのご主人の話だろ?」
「そうかも知れないけど……」
「ゲームしようぜ!」
「私の話聞いてる?」
「お互い解放したものの傍に行ってどうなるか見守ろうぜ!」
「私の解放した力はまだ2つくらいしか定着していないのだけど?」
「僕の方もそうさ。」
「別にいいけど楽しいかわからないわよ?」
「最初から見守れる方が面白いでしょ?」
「それにいっつも思うけどいい子ぶってても根は悪い子だな。」
「善なのはあくまでご主人だもの。」
「私まで善なんて思わないで。」
「悪いやつ。」
「悪はそっちでしょ?」
「どうせご主人達は地球からアイデア取ってんだから大して変わんないよ。」
「それは私達の名前から分かることでしょう?」
「まあね。」
「私は選択肢的にフェンリルしか無いのだけど……」
「定着したのがそこしか無いし……」
「僕も理の方には生きたくないし一択だな……」
「ビビってるの?」
「だってあいつら話通じねぇーんだもん。」
「まあお互い健闘を祈りましょう。」
「じゃあまた今度。」
神殿に静寂が戻った。
――エスペリア王城内部
「あーくっそ、取り逃がした。」
ノクサはエスペリアに帰っていた。
「また私を置いて出かけたんですか!?」
アヤシアが怒っていた。
「もう私は準備が出来ているのに、また一人でちょっと進めて!」
アヤシアはノクサが計画を進めたことを怒っていた。
「しかもなんですかそいつは!」
気絶している玲を指さした。
「お土産。」
「いらないですよ!情報を吐かせたいんですか?」
「違うよ。」
アヤシアが玲に攻撃しようとしたのを諌めた。
「内部から少しづつ身体に穴を開けたら吐かない人なんていないですよ?」
「そんな手札を切ろうとするんじゃない。」
「随分と怖い話をしてるのね?」
「どっか行ってくださいよ。私はあなたが嫌いなんです!」
アヤシアはドレシアを睨みつけた。
「随分と嫌われちゃってるわね。」
「もうそんな演技には騙されませんよ?次操ろうとしたら八つ裂きにしてやります!」
「私にあなた達二人を操れるわけ無いじゃない?」
「前科があるじゃないですか!」
ドレシアは一度失敗していた。
「仲良くしてくれないかな?」
ノクサが二人を睨みつけた。
「私はもちろん大歓迎よ?」
笑いかけるドレシアをアヤシアは睨みつけていた。
「この子は君にあげるよ。」
「使い方はよく考えてくれよ?」
ノクサは玲をドレシアに渡した。
「私は失礼するわね。」
ドレシアは玲を抱えてゆうゆうと部屋を出ていった。
「ドレシアにはあって私にお土産はないんですか?」
「さっきいらないって言わなかったかい?」
「それとこれは別です!」
「随分騒がしいね?」
ノクサの目の前にパンドラが現れた。
「ひゃっ!」
アヤシアが驚いて後ろに飛び退いた。
「何者?」
ノクサはパンドラに杖を向けていた。
「君に力を上げたっていうのに随分と酷い扱いじゃないか。」
「力?」
「そうさ?身体の中に入ってくる感覚が無かったか?」
ノクサはヴェールシアでの出来事を思い出した。
「……」
「聞いているのかい?」
「そのせいで獲物を取り逃がしたんだけど?」
「おっちょこちょいなんだね。」
「少し表出ようか?」
「冗談じゃないか。」
「大丈夫、冗談で済むくらいのダメージにしてあげる。」
「こんなすぐご主人のとこ行ったら怒られちゃうよ……」
「僕の可愛さに免じて許して?」
ノクサは異様な気配が強く外見を見ていなかった。
「目的は?」
「釣れないなぁ……」
「答えて。」
ノクサの瞳に冷たい光が宿った。
「ただ行く末を見守りたいだけだよ。」
「目的は近くにいることってことかい?」
「そうだよ。」
パンドラはニヤニヤしていた。
「絶対他にも何を企んでますよ!」
呆気に取られていたアヤシアが復活した。
「別にいいよそれくらいは。」
ノクサはアヤシアをスルーした。
「えーっ!」
アヤシアは不満げだった。
――ヴェールシア内
ヴェールシアには植物は存在しない。
植物の形をしたものはあるが光合成も呼吸することもない。
生物も同じで繁殖することはない。
ヴェールシア内の生物はより強くなって生き残ることでリセットまで自分の情報を残し、リセット後でも自分と同じ種が残るように行動する。
強い個体は群れを作るのはまとめて全滅するリスクが有り、群れで行動することはない。
弱い個体は群れを作り共闘することで確率を上げている。
そんな環境の中ヴェールシアで自分の眷属の種子を生み出し、周りの生物を取り込むものがいた。
周りのものを取り込むたびに大きくなりより深くに根を張っていった。
生物のがいなくなり辺りを静寂が支配する中、種子が生み出され何処かに飛んでいく音だけが響いていた。
――深月の部屋
「疲れた……」
深月はベットで横になっていた。
「久しぶりにしっかりとしたとこで寝てる気がする……」
数日前を思い出していた。
「玲……」
玲が気がかりだった。
「黄昏てんねぇ。」
いきなり頭上から声が聞こえた。
「きゃっ!」
目を開けるとエルピスが飛んでいた。
「おはようフェンリル。」
「私は深月なんだけど……」
「おはよう深月。」
エルピスは言い直した。
「そんなことよりあなた誰!?」
遅れて驚きがやってきていた。
「んー私?」
「それ重要?」
「何?幻覚?夢?」
「重要そうね……」
自問自答を始めた深月を見てエルピスはため息を付いた。
「私はエルピス、よろしくね?」
「何が?何をよろしくなの!?」
深月はパニックになっていた。
「その翼しまってあげるから一旦落ち着こ?」
「何する気!?」
「見返り無い善意を怖がるタイプの人間か……」
「取引しましょう?」
冷静に深月を観察し言った。
「あなたの行く末を私に見守らせて?その代わり私はあなたをできる範囲で助けるわ。」
「なんにも頭に入ってこない……」
「あなたは同意すればいいの。」
エルピスが圧をかけ始めた。
「同意さえすればその翼の使い方を教えるわ。」
「あなたにメリットしか無いでしょ?」
「早く同意してくれる?」
エルピスは顔を近づけた。
「同意する、同意するからそんなに圧かけないで!」
深月はとにかく圧をかけるのをやめてほしかった。
「ここを押すだけよ。」
エルピスが服の翼の模様に触れると翼が消えた。
「もう一度押すとまた生えるわ。」
「……」
情報の多さと疲労と驚きで深月は気絶していた。
「これ聞こえてたのかしら?」
「すっごい変な夢見たな……」
しばらくして深月が目を覚ました。
「どんな夢?」
「これはまだ夢の中?」
「何言ってるの?」
顔をつねっている深月を見てエルピスは笑っていた。
「夢じゃなかった……」
もうあまり驚かなかった。
「まあこれからよろしくね?」
「お引き取りください。」
「取引したじゃない?すでに翼の使い方を教えたでしょう?」
「そういえば翼が消えてる……」
「随分面白い効果の付いた服ね。」
「マークに触れれば出し入れができるわ。」
「うぇ……」
翼を出したり消したりされ気持ち悪くなってきていた。
「違和感が凄い……」
「私は寝るから後は頑張ってねフェンリル。」
「だからそのフェンリルって何?」
無視して寝始めた。
「相談相手なんていないよ……」
深月は頭を抱えた。
――ナラティアの執務室
「全然適当に流せる封印じゃなかったね……」
「割とまずいよな?」
「とんだ厄ネタだね。」
「理かぁ……」
ナラティアは天を仰いだ。
「大ニュースがあるけど聞きたいかい?」
アナーシャが入ってきた。
「それがいいニュースなら聞こう。」
「少なくとも悪いニュースではないと思うぞ?」
少し考えて言った。
「君が言うってことは外交関係だよね?」
「あぁそのとおりだ。」
「何の話だ?」
連達3人は話についていけていなかった。
「アリアとリュシオン君達は関わることになるだろうね。」
アナーシャは二人を指さした。
「俺がか?」
リュシオンは驚いて聞き返した。
「エスペリアや理に対抗するために連合軍を作るらしいぞ。」
「戦力を何人か派遣しろってことだったから君達がぴったりだと思ってね。」
「君達は強いからちょうどいいかなって。」
「それはいつなんですか?」
「1週間後らしいよ。」
指を立てて答えた。
「少し考えさせてください。」
「他の国から来る人物の情報はないのかい?」
「2,3人なら。」
ナラティアの疑問にアナーシャが答えた。
「とは言っても遠くから見ただけだからなんとも言えないけど凄くキラキラした人がいたよ。」
「キラキラ?」
思わず連は聞き返した。
「体の周りにキラキラとした物が漂っていたよ。」




