提示
ノクサの言葉は、冗談の延長のような軽さだった。
その内容だけが妙に耳に残った。
「……駒、って」
連がそう口にすると、ノクサは肩をすくめて言った。
「まあ、駒って言ったってただの遊び相手って意味だし?」
「別にひどいことをするつもりなんてないよ?」
そして、ついでのように付け足した。
「ただ誘いに来ただけ、君一人暮らしだし異世界来ない?って」
答えに詰まった。
考える以前に、何を言われたのか分からなかった。
「わざわざ地球人で暇つぶしする必要ないって思う?」
「私自身、地球人じゃなくてもいいと思う。」
「なら……なんでおれを……」
「どうせなら地球人がいないとできない面白いことしたいじゃん?」
連は何を言われているのか理解できなかった。
「ヴェールシアに手を出すのには地球人のほうが都合がいいし。」
「まあ、君次第なんだよね。どうせ暇でしょ?」
「私の暇つぶしにさ、付き合ってよ。」
「まあ私だって別に鬼じゃないし質問くらいは受け付けるけど?」
「おれが行かないって言ったらどうするつもりなんだ?」
「君が来ないなら今回は見送って何かしらやってから帰るよ。」
「何かって何するつもりなんだ?」
「それ言っちゃったらさ、つまんないでしょ?」
「まあ、私は優しいからね、ちょっとくらいなら教えてあげようか?」
ノクサは首をかしげた。
「教えてもらえるなら……」
「どっかに一撃入れようかなって思ってる。」
「一撃って……」
「あくまで君が来ないならだよ。」
「君が来るならどこにも一撃入れないって約束するよ。」
「どうしたい?」
遊ぶ場所を決めるかのような軽さでノクサは言った。
「どうせ暇ならさ、面白い方を選択しようよ。」
「また明日も来るね、次は手土産を持って。」
そう言い残してノクサは闇に消えていった。
連はしばらく動くことが出来なかった。
『どうせ暇でしょ』その一言が心の奥底に突き刺さっていた。




