宣戦布告
「何を言って……」
「私は嘘をつかない。」
連は理解が追いつかなかった。
「どうやったらそんなことができるんだよ。」
「分からない。」
「彼女が何をしたのかは分からない。」
「つまり君は今、シュレディンガーの猫みたいな状態だ。」
「『哲学』が喜びそうだな……」
アナーシャの呟きは誰にも聞こえなかった。
その時、家のどこかから低い警告音が鳴り響いた。
「なんだ?」
「災害時用とかの王国放送だよ。」
不安そうにユーノが言った。
「今持ってこよう。」
アナーシャが持ってきたものは水晶玉のようなものだった。
「あー、テステス」
水晶玉から、どこか軽い、それでいて耳に残る声が響いた。
「聞こえてる? 放送ジャックしたんだけど、あんま持たないから簡潔に言うね。」
その声に、連の背筋が凍った。
「王国の皆さん、始めまして。」
「私はノクサ。」
ユーノが息を呑んだ。
「近い内に王都襲撃するからよろしくね。」
言葉の意味を理解できなかった。
「よろしくね。」
冗談のような口調だった。
「期待してるよ、頑張って抗ってね。」
「それでは皆さん、ごきげんよう。」
ノイズが走った。
ぷつり、と音が途切れた。
部屋には、重い沈黙だけが残った。
静寂を破ったのはアナーシャだった。
「はははははっ……こんなことをやるとは驚いたな。」
アナーシャは楽しそうに笑った。
「何でそんな楽しそうなんだよ?」
連は苛つきながら言った。
「王国に面と向かって喧嘩売るなんてことしたやつは初めてだよ。」
「何で笑っているか、ね。」
「それは私が『歴史』だからかな。」
「なっ……」
連とユーノは言葉が出なかった。
「君はどうするんだ?」
「彼女を止めるのか傍観するのか。」
「止めるなら手伝おう。」
そう微笑んだ。
「私は止めたい。」
連をまっすぐ見てユーノは言った。
「全く知らないわけじゃないし……
それに、手伝ってくれるって言ってるんだし。」」
「……分かった。おれも止めるよ。」
「決まったね。」
アナーシャは楽しげに微笑んだ。
「君たちにとっておきを上げよう。」
「ついておいで。」
アナーシャについて行った先であったのは“武器”だった。
「武器?」
ユーノが不思議そうに言った。
「ただの武器じゃないよ。」
アナーシャは槍を手に取り言った。
「私の力で時が止まっている。」
「私が死なない限り壊れない。」
「好きなのを選んでくれていいよ。」
「あっ……」
ユーノは弓を見つけた。
「君は弓を使いたくないのかい?」
逡巡するユーノを見てアナーシャが言った。
「無理に使うことはないさ。」
「手加減出来ないのが怖くて……」
「大丈夫。この弓は試合用だから致命傷は与えられない。」
「……それなら。」
ユーノは、弓に手を伸ばした。
「連、君はどうするんだ?」
「おれはこれにする。」
連が選んだのは一振りのダガーだった。
「いい選択だね。」
「準備は整った。出発しようか。」
アナーシャは微笑んで言った。




