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退屈の殺し方  作者: 夜凪
第一章 来訪
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邂逅

その日もアパートの廊下は、いつもと変わらなかった。


霧島連(きりしまれん)は鍵を回して、最低限の家具だけの狭い部屋に入った。

誰かを招くことも、招かれることもない部屋。


制服を脱ぎ、鞄を床に置く。

スマホを見るが、通知はない。

いつも通りの日常だった。


学校でも、問題はなく、特別な出来事があるわけでもない。

話しかけられれば答えるし、頼まれれば断れない。

でも、深く関わることはない。


例え自分がいなくなっても、世界は明日も同じように進むのだろう。


連はベッドに腰を下ろし、天井を見上げ、進路のことを考えようとして、やめた。どうせ考えたところで、答えは出ない。


「……風呂、行くか」


その時チャイムが鳴った。


人が来るのにも遅いし、来る人に心当たりもない。


「……?」


ドアスコープを覗く。


金髪の女性が立っていた。

年は自分と同じか、少し上くらいに見える。

連はチェーンをかけたまま、ドアを少しだけ開けた。


知っている顔ではなかった。


「……誰ですか」


「こんばんは」


「ここ、霧島連の部屋で合ってる?」


「……そうですけど」


なぜか彼女は自分の名前を知っていた。


「なんで僕の名前を知っているんですか?」


「どうしてだと思う?」


彼女は答えず笑みで返した。


彼女の笑みは、答えるつもりはないのが見てとれた。


「……用件は?」


連がそう聞くと、彼女は首をかしげる。


「んーとね」


「あなたに会いに来ただけ」


「人違いじゃないですか?」


「いいや。合ってる」


今度は即答だった。


「一方的に知ってるって良くないよね」


「私はノクサ」


そう彼女は自己紹介をした。


「ノクサ……?」


聞き返すと、彼女――ノクサはうなずいた。


「そう。いい名前でしょ」


覚えやすいということよりも、今名乗られた理由が分からなかった。


「あと知りたいのは会いに来た理由?」


ノクサはそう言って、楽しそうに目を細めた。


「うんうん。やっぱりそこが一番気になるよね」


「教えてあげるよ、暇だったからだよ」


あまりにも軽かった。


「……は?」


連の反応を見て、ノクサは笑った。


「嘘じゃないよ?」


嘘ではないと言われても、納得はできなかった。


「知らない人の家に来た理由が、暇だったからって……」


「私はね、退屈が大嫌いなんだよね」


「面白いものを見たり面白いことをしたりしたいの」


「さっき人違いじゃないかって言ったでしょう?」


「君、一人暮らしでしょう?」


「それになんの関係があるんだって顔してるね」


「簡単に言えば都合がいいんだよね」


「身寄りがいないから君がいなくなってもあまり問題がない」


「別に取って食うようなことはしないし、傷つくからそんなに警戒しないでよ」


ノクサはそう言って、両手を軽く上げた。

冗談めいた仕草だったが、連の緊張は解けなかった。


「私だけが話すのは不公平だからね。なにか質問はあるかい?」


ノクサはそう言って、首を傾げた。

さっきまでの話を感じさせないくらい軽かった。


「急に訪ねてきて一体何がしたいんですか?」


連は、できるだけ平静を装って聞いた。


ノクサはその問いを聞いて、少しだけ考える素振りをする。

本気で考えているのか、間を楽しんでいるのかは分からない。


「うーん……」


少し考える素振りをしてノクサは言った。


「退屈なんだよね」


そう前置きをして話し始めた。


「私はさっきも言ったように面白いことがしたい」


「あなたに会いに来たのは確認」


「私がしたいことの駒になれるかどうかの」


ノクサははっきりとそう言い切った

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