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聖域の解体(デストラクション)
二XXX年、十二月。
国立スタジアム。
かつて「奇跡の歌声」と称えられた有馬蓮は、
数万人の狂乱と殺意に囲まれていた。
スタジアムを揺らすのは歓声ではない。
「殺せ!」「偽物を壊せ!」という、剥き出しの負債の嵐だ。
蓮の肉体は、もはや人の皮膚を持たない。
江戸のハクと同じ、
いや、それ以上に硬質な白鷺色の石と化していた。
だが、その右腕だけは、これまでの八つの時代が吐き出した
「どす黒い負債」を脈打たせ、赤黒い光を放っている。
「……準備は整いました。蓮さま」
蓮の意識の奥底で、一人の男が微笑んでいた。
狐面を外した**事代**だ。
彼が指を鳴らした瞬間、現実の壁が剥がれ落ちる。
スタジアムの空間は変質し、
観衆が掲げるスマートフォンは、
九地無の里の「儀仗」へと姿を変え、
蓮の石化した肉体へ振り下ろされた。
パキィィィィィン!!
高周波の音が夜空を切り裂く。
蓮の左肩が砕け、飛び散った破片が空中を舞う。
それは血ではなく、純白の石粉。
そして、その断面から溢れ出したのは、
ドロリとした「朱色の輝き」
――四百年の間、八つの鳥居が処理しきれなかった
負債の滓であった。




