第二話 凛水・いいから
「ねぇ山脇さん、山脇さんも一緒に話そうよ!」
話しかけてくれる人たち。
さっき山田さんとやらにも話しかけられた。
私に話すなんてことができるわけがない。
「いらない」
いらないんだよ、表面だけの好意なんているもんか。
友達が欲しいわけじゃない。
できないことは分かりきってるんだから。
私の周りからの評価がどうだって、私にとってはどうでもいいし、興味ない。
「何その言い方!」
そうだね、ごもっともです。
私はそういう人なんです。
ちらりと輪の方を見やると、一番最初に輪の中心格の女の子に話しかけられた山中とかいう男の子が目についた。
長めの前髪のせいで目のあたりがよくわからないけど、かなりのイケメンな気がする。
どうせあんなタイプの奴は、髪切った時に愚かな女子たちがそのイケメンさに気づいてキャーキャー言い出すんだろう。まぁ私には関係ない。
でも、やっぱり、外を見ていても。
気づいた時には視線が山中君の方に移動してしまう。
…って、なにイケメンにときめいてるんだろう。こんな地味女子とは世界が違うのに。
また窓の外へと顔を戻す。
雲ひとつない青空に灯る小さな鳥たち。
ふと、窓にうつる自分の顔が見えた。
変わりたい思いで買った丸メガネ。
馬鹿だ。私が変われるわけがないのに。
別に今は変わりたいとは思わない。この生活で十分だ。
目立たない、教室の隅でいつも外を眺める小さな存在。
誰にも迷惑がかからないし、周りを気遣う義務もない。
楽じゃないか。
このまま周りに認識されずに生きていっても、私は何も思わないんだから。
だから、ほっといてよ。
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「さようなら!」
帰りのあいさつ。
一斉に発されるみんなの声と同時に、教室がざわめきだす。
一緒に帰る人もいないのでとりあえず帰ろうと立ち上がった私の肩に、何かが触れた。
はっと振り向くと、ロングヘアの女の子。
「やーまわきさん!」
「何か用?」
「一緒に帰ろうよ!」
懲りない奴だ。
いらないって言ったのに。
「ちょっと玲香ー。そんな奴誘っても来ないし来ても面白くないでしょ。ほっとけば?」
「そんなこと言っちゃダメだよ!ほら、山中君も言ってたでしょ、誘わないと本人の意思はわかんないと思うよ」
よし、この間に逃げよう。
そそくさと校章入りのバッグを肩にかけ、教室を出る。
一日でこんなに教室の人間関係を築き上げるなんて、山田玲香は何者なんだろう。
「待ってよ、山脇さぁぁぁん!!」
後ろから声がした。
そうだ、そんな場合じゃなかった。
追いつかれる前に早く家に帰ろう。




