一年前の教室で
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新連載第三話!
「はあああああああああああああああ!?」
俺は思わず大声で叫ぶ。
や、だって、スマホは去年の四月七日を指していたんだから。
「ちょ!? 兄貴ウルサイ!」
「あだっ!?」
妹にチョップされ、思わず脳天を押さえる。
「な、なあ妹よ。このスマホ、壊れてるんじゃねーのか?」
「バカも休み休み言え! 自分のスマホも見てみなよ!」
白い目で見る佳代に指摘され、俺は自分のスマホの画面を見ると……確かに、同じように去年の四月七日を表示していた。
「ど、どういうことだ!?」
俺は信じられず、思わずネットを開いてカレンダーを確認するが……やっぱり日付は四月七日だった。
「……目が覚めた?」
「…………………………」
訳が分からない俺は呆然とする。
ま、まさかラノベみたいに過去にタイムリープするなんてこと、起こるはずねえ……よな?
「おい佳代」
「何?」
「今すぐ俺を全力で殴れ」
「はあ?」
俺の頼みに、佳代は呆けた声を上げた。
「いいから殴れ! これは夢だ! 夢なんだよ!」
「ちょ、ちょっと兄貴!?」
佳代の両肩をつかんで詰め寄ると、佳代は困惑した表情を浮かべた。
「この……! 落ち着けえええええ!」
「へぶ!?」
そして、俺の顔面に佳代の右フックが炸裂した。痛い。
けど……痛いってことは、これは現実で……。
「っ! だ、だったら!」
「あ、兄貴!?」
俺は慌ててパジャマを脱いで制服に着替え……って。
「佳代?」
「あ……兄貴のアホオオオオオ!」
「あだっ!?」
顔を真っ赤にした佳代が、俺の鳩尾に一撃を食らわせて部屋を飛び出していった。
「な、何なんだよ一体……」
佳代が出て行った後のドアを眺めて呟く。
っと、こうしちゃいられねー!
俺は急いで制服に着替え、玄関に向かう。
「悪い! 俺、学校に行くから!」
「ちょ!? 今日は一緒に学校に行ってくれる約束だったでしょうが!」
「ぐえ!?」
佳代に襟を引っ張られ、思わず首が絞まる。
「もう! それに朝ご飯も食べないでどうすんのよ!」
「だ、だけどっ!」
俺は早く学校に行きたいんだ!
彼女が……四条が生きてるかどうか……確認、したいんだ……!
「はあ……バカ兄貴」
すると、佳代はスタスタとリビングに行ったかと思うと、すぐに戻ってきて。
「モガ!?」
「パンくらい食ってけ! それと! 学校着いたらちゃんと歯みがきしろ!」
「お、おう……」
呆れた表情で佳代にそう言われ、俺は思わず頭を掻く。
「佳代、この借りは必ず返すから……」
「ホントだよ……アルルのデラックスパフェで勘弁してやる」
「分かった!」
俺は家を飛び出し、ダッシュで駅へ向かう。
「ハア……ハア……ッ!」
息が苦しい。
だけど、今はそんなことよりも……!
俺は必死で走る。
俺が本当に一年前の過去に戻ったのか、確かめたくて。
彼女が……四条が生きているのか、確かめたくて。
駅に着き、改札をくぐってちょうど来たばかりの上り電車に飛び乗る。
学校のある最寄り駅まではたったの二駅だけど……ああ、イライラする!
電車が駅に到着すると、またダッシュで改札をくぐり、訝し気な表情で見る通勤中のサラリーマンやOLの視線を無視しながら、学校へ向かって走り続ける。
そして学校にたどり着くと、校門をくぐり抜け、下駄箱で中履きの靴に履き替え……って、靴がねえ!?
だ、だけどそうか……今日は入学式で始業式だもんな……。
俺はスニーカーを下駄箱に放り込み、靴下のまま階段を駆け上がって教室への扉を勢いよく開ける。
そこには……。
「だ、誰もいねえ……」
よ、よく考えたら、まだ朝早いんだから、彼女も来てる訳がねえよな……。
朝の七時を表示するスマホを眺めながら、俺は額を押さえた。
◇
「あ! かっちゃん!」
俺は自分の席に座りながら突っ伏していると、優奈が教室に入るなり駆け寄って来た。
「えへへ、また同じクラスだね!」
そう言うと、優奈が嬉しそうにはにかむ。
あー……そういえば今日は始業式だもんなー……。
「む! ひょっとして、かっちゃんは嬉しくないの?」
「や、そんなことはないけど……」
今の俺は、そんなことよりも……。
俺は優奈の後ろに見える、教室の扉を凝視する。
本当に……彼女は……。
そして、教室に次々とクラスメイト達が入ってくる中。
「あ……」
「? かっちゃん?」
俺は思わず立ち上がる。
「あ……ああ……!」
「ちょ、ちょっとかっちゃん!? どうしたの!?」
優奈が慌てた声で何か言ってるけど、今はそんなのどうでもいい。
だって。
「ああああああああああ……!」
死んだはずの彼女……四条桐華が、生きて教室に入ってきたんだから……!
お読みいただき、ありがとうございました!
本日は三話投稿しておりますので、一、二話目が未だの方は、ぜひぜひそちらからお読みください!
次回は明日の夜投稿予定!
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