表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

チート能力?そんなものがあると思っているんですか。

 




 吸血鬼とイメージしろと言われてたら皆さんはどんな吸血鬼を思い浮かべるのでしょうか?


 空が飛べて、コウモリを連れている。

 長い牙があって、血の気がない。

 妖艶なオーラがあってなんかすごそう。




 最近の二次創作においては


 太陽にも強い

 にんにくも十字架も平気

 寝床は布団

 大抵はトマトジュースでどうにかなる


 などと言ったとにかくチート能力があるとか欠点がないなんて思われているかもしれませんね。




 はっきりいいましょう。


 チート能力?そんなものあると思っているんですか。







「お腹がすいたなぁ」



 ぎゅるるるると鳴る腹の虫。意味が無いとわかっていても空腹に耐え切れず、冷蔵庫にあった4本99円で売っていた特売の魚肉ソーセージを取り出しもごもごと口に詰め込みます。


 味のしない程よい歯ごたえの何か。美味しくも不味くもありませんが、ほんの少しの腹の足しにはなっている気がします。




 ぎゅー、ぎゅるるる。






 涙目になりながら数十分トイレに引きこもり己の愚かさを問いた後、いつものように適当にテレビを流し見します。


 不意に始まったのはライトノベルが原作の深夜アニメ。主人公はチート能力を持った自称フツメンのイケメン吸血鬼。昼間は高校へ通い、夜はその能力を活かして悪の組織を滅ぼしているようです。人間の血は苦手でいつも鞄にはトマトジュースを忍ばせている設定みたいです。




 ぎゅるる、るるるるるぴー。






 1ヶ月4万800円の1Kアパート。

 正方形のお風呂とぎりぎり許せる程度のトイレ。

 


 生活費は深夜の清掃バイトをかけもちしてやりくりし、主食は医療従事者である同胞に譲ってもらうか病院の清掃バイトをして輸血をくすねてきてどうにか生き延びるそんな毎日。


 主食の代わりにトマトジュースだなんて、そんなものは夢物語で、人間の食べ物なんて食べられるモノじゃありません。食べたら直ぐにトイレ直行です。



 最後の食事は今から一週間前。献血のバイトをした同胞から譲ってもらった300㏄。ちなみにAB型。まろやかで口当たりも良い大変好みなお味でした。それでもいくらコスパの良い吸血鬼でも一週間も食事もしなければ、腹が減って減ってたまらなくなります。


 次の食事は多分明後日になるでしょう。病院の清掃バイトがあります。これでくすねてこないと確実に私は死にます。干からびます。



 自分で誰かを襲えばいいじゃないかって?



 そんなのは無理です。人間の方は皆さん誤解しているのです。人とたいして変わらかいこの牙と呼べるかわからない歯で、夜目が少し利くだけで、寧ろ力は人間よりも弱い私にどうやって狩りをしろと。死にますよ。研究所行きですよ。





「起きててもお腹減るだけだし、寝よ」



 ゴシック調のインテリアや洋服たちの中では全く不自然のない棺桶。これが私の寝床です。ベッドです。


 この棺桶は一般的な吸血鬼の寝具なのです。太陽は吸血鬼にとっての敵ですので、昼間の睡眠時に太陽を完全にシャットアウトするには棺桶は絶対に必要になります。棺桶で寝なければ、全身やけど、皮膚がただれたり起きたら眼球がぽろりも有り得ない話ではありません。



 下手すると死にます。まじで。



 棺桶には故郷の土を敷き詰めるのが普通で、もちろん私の棺桶にも故郷である山形の土が敷き詰められています。だから結構な重量なのです。上京するときは本当に大変でした。後々郵送してもらえばよかった。今考えればスーツケースとか少々無謀すぎましたね。







 夢や希望を抱いてはいないけど山形から上京し、ゴシック調のアパートでゴスロリを愛好しながら空腹を訴え夜な夜な清掃バイトに明け暮れる。そんな茅野あまりこと、チノフィルト・フェー・アマリリル=三世。



 牙もなければ、コウモリも操れない。

 特殊な力なんてないし、人間と同じように某アイドルにハマることもある。

 常に節約に励み、ご褒美に洋服を買ったりする。


 そんな私は至って平凡な吸血鬼なのです。




 あぁチートなんてくそくらえ!




出前頼もうとしたら今日休みなんですって

(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ