水汚れ、それは吸血鬼の敵です。
「おーい、茅野
次はトイレ掃除頼むわ」
「はーい、千葉さん」
両手にゴム手袋をきっちりはめ、口元には二重のマスク。
真っ白な三角巾と、水色のポリエステル製の作業着。
中片手にブラシを携え、閉じていた便座の蓋を開けると、こんにちわとこちらを見つめてくる水汚れ+αに思わず頬が緩みました。
「今日の汚れも中々手強いですね」
私、茅野あまり。
しがないただの吸血鬼です。
----------------------------------------
「茅野ちゃん今日もお疲れーうどん」
「あ、旭さんお疲れ様です」
今日もいつものように汚れとの白熱した戦いを終えて作業着をカバンにしまっていると、明るい声音であいさつをしてきたのはちゃらちゃらとした栗色の髪をした大学生の旭さん。
「これから俺ら千葉さんたちと飲みに行くけど茅野ちゃんもどう?」
「あー、今月きついんで今回は無理ですね」
「今回もでしょ」
いつもようにお断りの返事をすると、旭さんはやっぱりかーという顔をして世渡り上手な笑顔を見せます。
そんな笑顔には騙されません。貴方がどんな男なのかはTwitterで既に把握済みです。バイト先の後輩まじ喪女っぽいから直ぐに釣れそう。だなんて、冗談は顔だけにしてください。
その笑顔を無視するように急いで黒いフリルのついたお気に入りのリュックを手に取ります。旭さんに捕まると、とてもとても面倒臭いのです。
「いつも今月きついんでーって一体茅野ちゃんどんな生活してんのよ」
「そんなの、旭さんには関係ないことですよ」
ビルから一旦外にでるとひゅーっと冷たい風が吹き、解いた髪がゆらゆらとたなびきました。目に入るのはピンクや黄色の派手な光たち。こんな夜でも街中はたくさんの照明が煌めいています。ここは夜でも真っ暗になることはないのです。
「あーあ、お腹すいたなぁ」
今夜のご飯は魚肉ソーセージです。
干し芋って美味しいですよね。




