姫に誓う 4
やっと完結です。
【8月10日】
僕はキスの相手――こと、綾女さんに連絡する。キスしといてよかったと思った。なんだか頼みごとをしやすい、これがキスの仲ってやつか。
彼女に頼んだのは、百合さんの鞄から隙を見て携帯電話を盗んで、履歴を見てほしいと言うこと。
「そんなこと……百合ちゃんって目を光らせるタイプですよ!そんな隙をみてだなんて」
「絶対大丈夫。彼女は自分が鞄を置いた場所を忘れるよ。僕が保証する」
百合さんから鞄を置いた記憶を消して、彼女の成功をサポートする。
綾女さんから百合さんの履歴を写真に撮って送ってもらい、それを確認。
「これでよかったですか?」
「完璧です」
僕が向かったのは花純さんが入院している病院だった。
花純という名の所為か、カスミソウのような女性だった。
「すみれさんの知り合いです」
と一言言えば、それ以上聞かれなかった。
「すみれさんが、貴女に言いたいことがあると」
「……すみれが?怒っていたでしょ?」
「いいえ。あの日窓際に立っていたのはあなたを拒絶するためではないって」
虚ろだった花純さんの目が少し見開かれる。
「だってすみれは、窓を閉めたわ。私が入れないように」
「百合さん――あなたたちの『仲良し』グループのリーダーは彼女だったんですね」
かわいくないものを褒めていたらリーダー、静井さんのセリフが決めてだった。
「百合さんが6時15分少し前にすみれさんに電話していたんです。内容まではわからないけれど、きっと、窓際に来い、窓を閉めろ、だったんでしょうね。普通下の階から人が上がってくることなんて想像しないから、すみれさんは下から登ってくる貴女を確認せずに窓を閉じた。それが、すみれさんに元々負い目を感じていた貴女には拒絶に思えた」
つまり、真犯人というべき人物は百合さんということだ。彼女には登ってくる花純さんが見えていて、すみれさんに窓をしめるよう指示したのだ。
ただの悪意。
花純さんが絶望するように。
すみれさんが罪を負うように。
ぽろぽろと涙を落とす花純さんをみながら、どれもこれも「女の子の機微」かと思った。
【8月10日 夕方】
病院を出て、どこに向かうべきか迷って、大原事務所へ向かった。
はっきりと見える、少し猫背なカレンが、すこし怒ったように
「遅かったじゃない」
と、迎えてくれた。
「何が正解だったのか知りたいし、何か食べに行くわよ」
「肉だろどうせ」
そしてきっと俺のおごり。
「もちろんよ。あんたが不正解したせいで私が迷惑被ったんだから」
「はいはいごめんよ」
「すごいさみしかった」
「もうしわけない」
「ちょー不安だった」
「かたじけない」
「もう見失わないようにしててよ」
そういってカレンがスキップで前を行く。
ああ絶対に、とカレンに誓う。




