家出の清算
それから数日後には文吾さんに呼び出され、エデンの喫茶室のテーブル席で差し向かった。
文吾さんは怒り顔ではなかったが、散々手を出すなと言われた反物質に少し関わったので、かなり腹を立てているだろう。
僕は殴られる覚悟だった。その前に一応謝っておく。
「すみません」
「…………各宙域から遠距離観測したところ、ジェットが止まり次々と消えてるのが確認された。恐らく次元の穴に入り込んでるのだろう。反物質も出てくる様子はない。経過観察は続けるが、少なくとも数万年はこの拮抗状態が続くとAIは予想してる。宇宙の危機は去ったな」
「そうですか」
僕は胸をなでおろす。
「お前のことだから失敗した時のことを考えて、家族を巻き込みたくなかったのは分かる。最悪、この世の全てが消滅するからな。だから説明もせずに一人で家出したんだろ?」
「はい」
「結果的に宇宙は救われ、反物質には直接関わってないからリアクターを利用した件は責めんが、孫らを泣かしたのは許さん!」
「あたっ!」
僕は文吾さんからデコピンをくらう。痛いが、これでもかなり手加減してくれていた。
でなければ体ごと吹っ飛んでいる。そしてガン、という音が響き渡る。
文吾さんがテーブルに頭を打ちつけて、そして両手をついていた。テーブル土下座だ。
「お前がいなくなってから飯は食うんだが、遊ぼうともせず全員が一箇所に集まって、うずくまったままになる。そして時折すすり泣く。明るい笑い声が消えて毎日が真っ暗闇だったぞ」
「マジ、すみません!」
「ありゃーお前、爺に百発殴られるよりキツいぞ。落ち込んでる孫達を見てるのは、辛いなんてもんじゃない! あんなのは二度とごめんだ。だから今度何かするなら、俺にだけでも相談してくれ、光太郎!」
ああ、迷惑をかけたなと熟々思う。僕も頭を下げるしかない。
「はい、お義父さん。次はちゃんと言いますので」
これで文吾さんとの話は終わった。
次に七五三ゲーム大会を途中で放りだしてきたので、こちらも対応せねばならなかった。
詫び石ならぬ、補償金を大会参加者に支払ってサービスを終了しようと思っていた。
ケジメはつけねばならない。大炎上してるかと思いきやバベルに聞いてみると、
『宇宙でユーザーが爆増してサーバーがパンク状態です。光太郎が作ったことが知れ渡ったのが原因ですね。公式サイトで批判的な意見はほとんどなく、好評で対戦が盛り上がってます。それと大会参加者からのメッセージですが……』
「うん」
【金はいらんでござる。またお手合わせ願いたい】
【お金は入りませんわ! それより子種、子種、子種ちょうだーい!】
「…………」
ルミナスさんは、まだ諦めてはいないようだった。
僕は公式サイトに謝罪動画をあげてゲームサービスを続けることにした。
これだけユーザーが増えてしまうと、課金ユニットの返金額が莫大になり、とても対応しきれるものではなかった。
熱狂はいずれ冷めるだろうが、臨時サーバーの増設とアップデートを考えねばならなかった。
ただのインディゲームだったのが大きくなりすぎて、僕とバベルだけではアイデアの限界。
そこで娘達が運営に協力してくれることになる。
そして嫁さん達のお仕置きはまだ終わってない。僕はパルテアの本星ペルセポリスにいた。
「救世主様、宇宙を救ってくださってありがとう!」
「この御恩は一生忘れません、光太郎様!」
「偉大なる道祖神に感謝を!」
多くの星騎士達がメタル・ディヴァインで警護をする中、僕はド派手な格好でパレードカーの上に乗り、手を振って沿道に集まった人達に応えていた。
自分を褒め称えてくれる晴れ舞台なら喜ぶのが普通だが、目立つことを嫌う僕にとっては苦痛だった。道化だよー。
これが嫁さん達からの罰である。判決を告げたのは輝夜さんだった。
「ジェットを止めた件で、銀河中から感謝の声が上がっています。是非御礼をしたいとのことで、同盟各国の感謝パレードと祝賀晩餐会に参加してもらいますよ、光様。これは強制参加で欠席は絶対に許しません!」
「えー! いやーそんなのお金がかかるし、警備も大変だし気持ちだけ受け取るわけには……」
「そうは行きません。エデンで各惑星を巡って視察し、ついでに外交交渉するのは計画されていたことです。VR会談だけでは足りないこともありますから、各国の外交使節団も旅に同行します。御礼のオファーが多くて毎日パレードしても十年かかりますが、一年だけの月二回にまけときます」
「うう……」
「ついでにクイーンⅤの復活コンサートをしますので、サポートもよろしくお願いしますね、光様」
「……はい」
これは慰問活動だろう。幾百万の言葉で平和を語るより効果がある。
僕に逃げ場はなかった……。
「わーい!」
「きゃきゃきゃ!」
パレードカーには今回の立役者の娘達と母親達も乗っていて、大歓迎されていた。
娘らは喜んで跳ね回っているが、嫁さん達は僕の隣に来ては尻をつねっていく。
痛いよー。
僕は我慢して笑うしかなかった。ただ、なにもしてこない嫁さん達もいる。
イザベルさんとアンジェラさんだ。
寛大な姉さん女房だなーと思っていると、抱きついてる娘達を撫でたあと、僕に向かってポキポキと指を鳴らし始めた。
「うふふふふ」
「おほほほほ」
あー、今晩相手をするんだった。やっぱり許されてはおらず甘くない。
これは色んな意味で絞られるな、もう若くないから二人がかりでもきついのに、三人だとしんどいなー……しかも底なし。
宇宙を救って善人扱いされてるが、家庭では家出した悪者である。理不尽だー!
ああ、とかくこの世はいきづらい。
そして、僕の苦労はまだまだ続くことになる……。
次話で完結です。長かったなー、そして新作公開しますので、★評価よろしくお願いします。




