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罪人天使  作者: 雨月
7/31

しょのなな 多分、馬鹿みたいな図書館

「時雨君、これをもって逃げてくれ!」


「分かった。剣冶はどうするの?」


「ここを原形とどめないようにしてから逃げるから、先に逃げててくれ。」


「わかった!それじゃまた後でね!」


 紫の羽を使うことが出来ない狭い廊下を走る少年は、床に落ちていた雑巾に足をとられてすっ転んだ。どうやら掃除係が落としてそのままにしているらしかった。紫の羽を持つ天使は彼の友達から渡されたボタンのようなものを彼のお尻でおしてしまった。


 結果、世界は終わりを迎えたのである。




 今で時雨は目を覚ました。先程まで気絶していたような感覚と似ている。頭がぼうっとしている状態から覚醒させるために手で顔を叩こうとしたがその肝心の手が動かない。手がある方向を見ると美奈のからだの下になっている。


「!?」


 慌てて鼻をおさえたが(片手)いつも来る感覚がまったくこない。何故だ?何故なんだ?不思議に思う時雨は馬鹿みたいに美奈の寝顔を眺めていた。いつもならこんなに近くに女性がいたら赤くなる顔も今日はまったく赤くなっていないみたいだ。どうしたんだ?これは夢だろうか?そんなことを考えている時雨は昨日の事を思い出した。


「・・・ぶっ!!」


 キター!あの感覚が戻ってきたが前のものよりしょぼい。

どうやら本当にあれは治っておるようだ。

時雨の感覚から言うなら女の子を見たら恐怖を感じていた。何故鼻血が出るかは分からないがとりあえず恐かった。しかし、今は違う。これなら何とかやっていける気がした時雨の心は軽かった。そんなこんなで生まれ変わった?時雨の生活が今、ようやく始まろうとしていた。試しに美奈を触ってみることにした。


「・・・時雨様、できれば私の胸の上に置いている手をどかしてくれませんか?」

「わわっ、すいません!!」


 まぁ、過ちを犯すことはよくあるだろう。・・・・・これから僕には今までよりも苦しいことが起きるかもしれない。それでも、僕は強く生きていこう。時雨はそう言って心に誓うのであった。


「冗談です、触りたいなら触って結構ですよ。時雨様のメイドですからね。」


 うふふと笑って美奈はその場を去って行った。辺りに誰もいなかったら時雨は助かったに違いない、もしも誰かいたらかれは磔の刑となっていたところである。くわばらくわばら。



 それから、時雨は朝の挨拶をみんなにしてから一人で先に登校したのである。


「ねぇ、美奈さん、時雨の様子がおかしかったんだけど何かあったの?」


「ああ、女の子恐怖症が治ったんですよ。」


「!!え、じゃ、これから兄さんにおさわりしても大丈夫なんだね!これまでそんなことしてたら鼻血をあたりにぶちまけてたから・・・」


「ええ、大丈夫です。」


「じゃ、あんなことをしてもこんなことをしても大丈夫?」


「・・・・えーと、それは・・・試してみないとわからないですね。」


「じゃ、私がお兄様のあれをあれしてこうやって・・・」」


「さ、それより学校に行かないと知りませんよ。」



 ちなみに、その後彼女達は遅刻となり、時雨は兄妹だかららという理由だけで職員室に呼び出しを喰らうのである。前途多難なお兄さんである。


「や、時雨君すきありィ!」


「あ、おはよう亜美さん!」


 登校時、網にあった時雨は彼女の近くで朝の挨拶をした。隙をついて時雨に血を出させようとしていた亜美は驚いた。


「ど、どうしたの!今日は赤くならないなんて・・・」


「治ったんだ!まぁ、その、いろいろあってね。結果としては治ったからよかったけどこれからは大丈夫、きちんと亜美さんの隣で授業をうけれるから。」


 今までも亜美の隣の席だが、亜美とは約2メートルの距離をおいて机を構えている。


「へぇ、ほんとに鼻血でないの?」


「うーん、多分。」


「わかった、じゃ、今日はちょっと用事があるから先に行くね。」


 他の生徒がやっているようなことが出来て時雨は嬉しかった。以前の彼がそのようなことを行えば気絶するか鼻血を吹き出すだけである。そして、もう一人時雨を見ている人物がいた。それは賢治であり、この前見たときみたいに電柱に背中を預けている状態で時雨を見ていた。そんな賢治に気づいた時雨は彼のもとに走っていった。


「おはよう時雨君、今の君は無駄に喜んでいるよ。」


「え、そうかな?」


「うんうん、そんなことより君にバイトがあるんだがどうだね?」


 今の時雨はバイトをしていないので(知流高校にいたときは何故だか知らないが下級生がお金を持ってきたりしていたので代わりに勉強などを教えていた。)今の季節は温かい春だがお財布の中は厳しい冬である。


「うーん、じゃ、どんなことすればいいのかな?」


 新聞配りをそろそろ考えていた時雨は一応賢治の仕事の内容を聞くことにした。彼が頼んでくる仕事はたぶん尋常なものではないかもしれない。そんじゃそこらのバイトと格が違うと思われる。


「えっとね、今回はボディーガード。」


 時雨が想像していた仕事よりはマシであった。(ちなみに彼は単身で空手家三百人と戦うと思っていた。一度似たようなことがあった。)そんでもって時雨は首を縦に頷くことにした。どうせ痴漢あたりが相手になるぐらいだろうと時雨は思っていた。


「そうかい、じゃ、早速行こうか?」


 これから学校なのにどこに行くのだろうかと思いながらも賢治を追って行った時雨はびっくりした。

曲がり角を曲がった所には黒塗りのなが―い車があったのだ。こんな車を見たことはこれまで一度も無い。(ちなみにそれはテレビでの話である。)そして黒いタキシード?をきた老人が後ろのドアを開ける。中から出てきたのは黒い服(学ラン)を着た上品そうなお嬢様?そんなお嬢様の事を見たことがあるような気がした時雨は賢治に話し掛けた。


「ねぇ、この前賢治の隣に立ってた人じゃないかな。『断末魔』の話をしてたときさ・・」


「そうだよ、彼女は生徒会、文化委員長なんだ。」


 さて、お嬢様と生徒会長はどちらの方が権力が強いのだろうか?時雨がそんなことを話していると賢治にその文化委員長が近寄り話し掛けていた。


「おはようございます、生徒会長様。本日はどのようなご用件ですか?」


 どうやら生徒会長の方が権力が上のようだ。時雨が彼の頭の中でそのように決着をつける隣で賢治は文化委員長に返事をしていた。


「ええ、実はあなたが探していた護衛さんを見つけたんですよ。実力は僕が保証しますから。」


 そして賢治は時雨を彼と彼女の間に持っていって紹介した。


「はい、これが保証書つきの護衛さんです。」


 賢治は無言で時雨に合図する。その合図を自分で自己紹介して欲しいと受け取った時雨は自己紹介を始めた。


「えーと、僕の名前は天道時時雨です。このまえ、転校してきました。」


「いえいえ、そんなにかたくならなくていいですよ。」


 時雨は生まれて初めて見るその高貴なオーラに緊張していた。これは今まで戦ってきた敵の比ではない。月とすっぽんの差があるだろう。それにこの文化委員長とやらは人間ではないようだ。魔力と言うかなんというか不思議なもやもやが彼女をつつんでいる。


「時雨君、彼女の名前は志乃村しのむら ほむらさんと言って、魔界を治めている人の娘さんの一人だよ。魔法使い(マジック・ユーザー)らしい。」


 魔界を治めている人=魔王。これまた、賢治の友達だけあって普通の人ではないようだ。


「はい、これからよろしくお願いしますね?」


 その笑顔は初体験の天使の笑顔。時雨はその笑顔を見ただけで彼女のボディーガードを承諾したことを幸運だと思った。まったく都合のよい頭である。


「さて、それでは学校に行かないといけないね。」


 賢治はそう言って走り去っていったので時雨も後を追おうとしたが、執事と思われる人物に呼び止められた。


「時雨様、私はこれより魔界に帰りますのでお嬢様をよろしくお願いしますね。」


 そう言って焔を降ろした黒塗りの車は去って行った。その場に残された時雨と焔は徒歩で学校行かないといけなくなってしまったのである。時雨としては別にいいのだが、このお嬢様はどうやらはじめて自分の学校まで歩いていくようだ。(時雨は多分すぐにギブアップすると思っていた。)



 そして歩き始めて十分後、時雨が予想していた事態に陥った。


「うう、足が痛いです。」


 そう焔は言って座り込んだ。時雨はそんな彼女の前にいって座り込んだ。


「僕の背中に乗って下さい。あまり乗り心地はよくないと思いますがそれでも今よりは楽になりますよ。どうぞ、家臣の背中へ・・・お乗りください、ご主人様。」


 そんなくだらない言葉を言っている時雨に焔はおんぶされた。


「はい、ありがとうございます。」


 体重を預けてきたところで時雨は立ち上がり顔に?マークを出した。背中に何か柔らかい何かが当たっている。そして彼は考える。何だこれは・・・もしかしてこれは・・


「!?」


 あやうく鼻から液体がこぼれそうになったがそれをふんばって歩き出す。彼はこのとき本当にあれを治して良かったと思ったそうだ。そしてそれは彼にとって幸せな時間をもたらしていた。

 焔からはいい匂いがしていて、時雨は幸せであったがそれも長くは続かなかった。


「はじめまして天道時 時雨君。」


 いきなり上から女性が降ってきて時雨に話し掛けてきたのだ。時雨は驚いた。そしてこの人は悪い人(スカートから出ている足にはすね毛ボーボー)であると直感的に反応して急いで後ろにいる焔をおろす。


「うふっ!!私の名前は『断末魔』の風神といいます。ってぐふぅ・・・・」


 時雨はそんなことお構いなしに殴りかかり風神をその場に沈めることに成功した。普段の彼であったらそのようなことをしないだろうが、今日は違っていた。


「さ、早く背中に乗って下さい、今のうちに学校に行きますよ。」


「は、はい。分かりました。でも、この人はいいのですか?」




 道路に倒れて苦しんでいる人物を見ながら焔はそういうが時雨は首を振り(時雨はこの人物に関わるとろくなことがないと瞬間的に感じた。)その場を後にすることにした。そして、倒れている人物の横に新たな影が現われる。その人物は倒れて動かない人物を軽蔑の眼差しで見ながら独り言を言った。


「・・・やはり役に立たないリーダーですね。まさか私に女装するなんて思っていませんでしたけど・・・なるほど、私の服が消えていたと思ったら犯人はあなただったんですね。帰って来たら覚悟しておいてください。あまつさえ、パンツや下着まで着用するなんて・・・・」


 時雨が恐れもせずに彼女(彼)を殴ったのは結果的によかった。本物の風神はそんなリーダーを置き去り(彼女も時雨と同じように彼を殴っておいた。)にして姿を消した。


「ままぁ、オカマさんが道で倒れているよ!」


「こら、指さすんじゃありません。」




 そして、あれから走りに走ってチャイムギリギリで学校にすべり込んだ時雨は焔をおろした。登校中の生徒たちは不思議そうに彼らを眺めていたので焔が恥ずかしいだろうと思ったからである。


「それでは僕は教室に行きますね。」


 そのまま自分の教室に行こうとした時雨の制服がつかまれる。どうしてだろうかと思って後ろを振り返ってみると焔が少々恐い顔で時雨を見ていた。


「何言っているんですか、あなたは今日、私のお供ですよ。」


 そう言って凄い力で引っ張っていく。

時雨は登校中の生徒たちに指で指されながら自分の教室ではない所に連れて行かれたのであった。彼女が時雨を連行していった所はなぜか図書館であった。ここの図書館には初めてくるよう気がした時雨はその大きさに驚いていた。校舎の大きさもさることながらこの図書館も相当大きい。そんな驚いている時雨に焔は説明してくれた。


「ここの図書館は凄いんですよ。種類も豊富だし、本を大切にしています。それにこの図書館にはランクがあってよく利用する人はいろいろなことができるようになるのです。」

 なるほど、壁には紙が貼っており、それには次のようなことが書かれていた。


『・・・ランクは胴、銀、金に分かれており、胴では一般の本が普通にかりれます。銀は危険度が高い本もかりれるようになり、金は図書室の奥にある部屋に入ることができるようになります。』


 奥の部屋に続く所にはカードを差し込む所があってそれがないとおくにいけないようだ。

時雨が他の所をうろうろしていると焔から離れ迷子になってしまった。あたりは子供が借りることが出来ないようなムフフーな本が置かれている。治っているとはいえ、時雨にとってここは危険地帯、急いでそこから脱出するために道を適当に進みようやくゴール(焔のところ)についた。あぶなかった、後一分でもいたら本に赤い血がつくところであった。


「あ、言い忘れていましたが、あちらのほうに行った場合は警察に補導されますので気をつけてくださいね。少々過激なものがありますので・・・」


 時雨が先程までいた危険地帯を指差す。焔は時雨がいなくなったことに気がついていないようだ。時雨は思いっきり首を何度も何度も上下運動をさせながら焔の後を進んでいった。

 それから十分後、迷路のような図書館を進みようやく焔は足を止めた。

(この時点で時雨の背中に乗ってナビゲーターとなっている。)そこには机があり、いろいろな書類が置いていた。隣には眼鏡をかけた少年が目の下にくまを作りながら寝ている。焔はその人物を起こした。もっとも、起こし方は非常にむごい。どこから出したか分からないが辞書でその無防備な少年を叩いたのである。


 めきょ。


「んがぁ!す、しゅいません、焔文化委員長!」


 立ち上がって頭を下げる少年を見ているとかわいそうになった時雨は彼に話し掛けた。


「きみ、大丈夫かな?」


「はい、大丈夫です。そろそろ授業が始まるので失礼させてもらいます。」


 そう言って走り去ってしまった。しかし、時雨には次のように聞こえた。


『あ、悪いですけど僕の身代わりとなってください。それではさようなら。』


 やれやれと思いながらも時雨は背中に乗っている自分より少し背の低い女の子を降ろす。降りた焔は先程座っていた少年の椅子の隣に座りメモ帳らしきものを取り出して時雨にページを開けて渡す。無言で渡されたメモ帳には今日の予定が書かれていた。


『今日の予定その一、午前は奥の部屋にある蔵書の点検。担当は文化委員長。』


 そしてそれを時雨が呼んでいる間に焔は金色に輝くカードを持っておくにある部屋に向かって歩き出した。


「私が帰ってくるまで時雨さんはそこで本でも読んで待っててください。」


 彼女はそう言って奥の部屋に続く道を行くために曲がり角を曲がり姿を消した。時雨は言われたとおりに近くの机においてあった辞書をとって眼鏡をつける。適当に取った本の題名は『魔法入門、炎が魔法初級者にも使える本』というので興味をもった。そしてそれから30分後、初めの魔法の呪文をゆっくり頭に入れていた時雨のところに焔がやってきた。


「ど、どうしたんですか!」


 這いつくばって何とか戻って来たようだ。その顔には疲労の色が見える。


「・・・私は・・・もう無理です。どうか、かわりに・・・・やっぱり私をおんぶしてください。」


 読んでいた本を置いてあった机の上において焔に背を向ける。背中に柔らかい感触がしたのを確かめて時雨は立ち上がった。体重は軽いので別に苦にならない。

 道案内をしてもらいながら本棚の迷路を進む。奥に進むに連れてだんだん明かりの数が少なくなってきてさらに道に迷いそうな構造になっている。


「・・・もしここで迷ったりしたら誰か助けにきてくれる人いるんですか?」


「いいえ、元々ここの図書館は学校の恐怖スポット第一位なので近付こうとする人たちはあまりいませんね。年間、行方不明者なんかも結構出ますよ。(ここにきた生徒全て)」


 迷ったら大変だと思いながら天井に届くぐらいの高い本棚を見上げる。


「しかし、本当にスゴイ数の本ですね。」


「ええ、実はこの高校では自分で本も出せるんですよ。この高校の図書館には生徒が書いた本も入っているんです。私も書いているんですがなかなか読んでくれる人がいないんですよ。」


「へぇーどんなのを書いているんですか?」


 時雨はこの高貴そうなお嬢様ならきっと趣味のピアノとか楽器の事を書いているに違いないと思っていたが現実は違った。


「えっとですね、題名は・・・」


 彼女の口から出てきた言葉に聞き覚えのあった時雨は記憶をたどりその名前を思い出した。それは賢治が売りにきた本の名前であった。


「え、それ、僕持ってますよ。」


「ほ、本当ですか?実はまだ一つしか売れてないんですよ。」


「・・・多分僕がその一つを買っている人物ですよ。」


 そこまで話して時雨は強い風が吹いたので背を低くする。そして、目の前に竜巻のような現象が起こりその竜巻は人型となった。


「・・・身長百六十後半、きている学ランに傷がある、優男みたいな顔・・・よし、どうやらビンゴのようですね。」


 そして摩訶不思議竜巻人間はさらに強い風を起こしながらしゃべり始めた。


「初めまして、私の名前は『断末魔』のメンバーである、風神です。」


 そう言ってから人間の姿となった風神は朝に会ったものよりまともであった。時雨はこのとき朝のように彼女を殴ろうとも思わなかった。


「朝、あなた達の前に現われたのは私たちをまとめているものが私に擬態(女装)したものです。」


「・・・ちなみに性別は?」


「男です。名前は炎神といいまして、好きなものは美少女のお人形で嫌いなものは勉強。好きな言葉は『MAKEの過去形』。嫌いな言葉は『努力』です。それから・・・」


 その後『断末魔』のリーダーの役立たずぶりを披露してから彼女の愚痴になった。


「・・・それからあの馬鹿は何度言っても集会場のトイレに美少女のポスターをはるので困っているんですよね。今度警察にでも行こうかな?時雨君はどう思いますか?」


「それは・・・何か落ち着きそうにありませんね。」


 さらにその後、立ち話もエスカレートしていき四時間目が始まる所で風神が、


「あ、すいません、今日はちょっとこれから用事があるのでそろそろ行きますね。また時間があるときにきますので・・・それではしー君、焔さん、さようなら。あ、それとケータイのアドレスを教えておきますね。」


 呼び方もいつのまにか変わっており、いつのまにか仲良くなってしまった時雨と焔であった。強力な旋風が起きてあたりにかぶっていた埃もついでに持っていって『断末魔』の風神はいなくなってしまった。


「さて、しー君私たちもそろそろ行きましょうか。」


「そうですね、そろそろ昼休みになりますからね。」


 何事もなかったかのようにマイペースな二人は思い鉄の扉の前にやってきた。鉄の扉にはカードを差し込む所があり、時雨から降りた焔は手に持っている金色カードを差し込んだ。


 がちゃ。


 何かが開く音がして時雨は目の前にあるおも―い扉をあけた。


「・・・時雨さんは悪魔だったのですか?」


「いえ、違いますよ。何か罪人天使と言うそうです。」


 驚いた顔になる焔だが時雨はその顔を見ていなかった。前を向いていたから分からなかったのである。


「あの、罪人天使なんですか?」


「はぁ、たぶんそうですよ。」


 その後、完璧に開けられたドアの中を覗きながら時雨はここで後ろを振り返った。


「あきましたよ、焔さん。?どうかしたんですか。」


「・・・時雨さんは罪人天使がどのようなものか知ってますよね?」


「数が少ないんでしょう?」


 その後、時雨はかなり意外な真実を知ることになる。それは賢治が教えてくれなかった事実であった。


「・・・罪人天使はこの人間界にはあなたを含め二人しかいません。他の罪人天使は全て天国に連行されました。多分、あなたを襲うであろう人物達がやってくると思います。気をつけてくださいね。」


「?何かよく分からないけど分かりました。気をつけます。」


 二人でそのまま奥の部屋に入る。そこは外より乾いており、外の比ではないぐらいに本があった。背表紙には時雨が読むことが出来ないような字であったり、かすんでいて読み取れないものもある。


「この本はなんなんですか?」


「まぁ、魔界に関する本やら天界の本やらはたまた年齢制限のかかっている本のレアなものとかですよ。ちなみに、最後の種類の本を読もうとするとトラップが作動しますので止めてくださいね。」


 その言葉に時雨は反応した。(最後の種類ではない・・・と思う。)


「具体的にはどのようなものですか?」


「例えば、魔法使いが記した魔道書とか、魔王が書いた本などですね。ベストセラーにならなかった本もここでは取り扱っているんですよ。いわばここは裏の図書館。」


「・・・ちなみに名づけるならなんていいますか?」


「そうですね。ここに来るのは私ぐらいだから・・・『私の秘密の花園』ですね。」


 多分、ここに来るのはこの文化委員長が最後に違いないと思ってしまう時雨であった。早速?仕事をするために焔は時雨に指示を出す。


「時雨さんは右の方から見ていってください。この前見たときは誰も触ってなかったし、ここには私たち以外いないはずですので本が抜けていたらすぐに報告してください。あ、それと・・・」


 彼女が言ったことは時雨は忘れないだろう。そしてここにはもう二度ときたくないとも思った。


「奥にある鏡の前を通ったらさようならですので気をつけてくださいね。」


 その声には冗談はまったく含まれていなかったので時雨は首を縦に動かして肯定の動作を取った。焔と分かれて本の点検をする。意外に楽だったのだが、量が多く、彼のノルマを達成することには彼の時計はとっくに次の日になっていた。だが、疲れはほとんどない。


「はい、お疲れ様ですね。ここは時間の間隔があやふやなので時計なんかを頼りにしても意味がありませんよ。それでは昼食を取りましょうか。」


 外に出て図書館の時計を確認すると丁度昼休みになっている時間帯だった。先程、机があった所に戻るまでに道に迷っていたりもして昼休みは終わってしまった。ここから校舎をうろついていたりしたらそれこそ放課後になりかねない。ホントはいけないのだが、今日は特別に図書館の中で弁当を食べることとなった。


「はい、時雨さん、あーん!」


「いえ、結構ですよ。」


 食べ終わって今度は午後の仕事を始める。


『図書館のなかで誰かが迷子になっていないか調べた後、掃除をする。担当は文化委員長。』


 それから迷子はいないか時雨が歩き回り・・・


「あれ?ここどこ??」


 自分が迷子になり、一時間をかけて焔のもとに到着。焔と共に図書館のなかを掃除してこの日の図書館の仕事は終了、既に窓から優しい光を送っていた春の太陽は沈んでいた。校舎を出たところで黒塗りの車が焔を待っていたのでそこでお別れとなった。


「それではさようなら、また会いましょうね?」


「ええ、また今度ですね。」


 そう言って車は去っていき、時雨も帰宅しようとしたが、学校の方から校内放送が流れてきた。


『2年、2組の天道時 時雨君は後30分以内に職員室にきて下さい。こない場合は覚悟してもらいますね!』


 慌てて時雨は回れ右、職員室に向かって全速全身!いつもの三倍のスピードで職員室に行ったのであった。

 用件は今日、彼の妹達が遅刻したことと先生にきちんと図書館にいないことを伝えなかったことだった。お説教はすぐに終わったので帰ろうとしたら今度は携帯が鳴り出した。


『天道時 時雨様。また鬼ごっこをして遊びませんか?あの場所で待ってますね!』


 その後、彼が家にかえった時には他の人たちは眠っていた。ぼろぼろになってしまった時雨の第二回目の鬼ごっこはまた今度にしておこう。




 世界が滅んでから、神様たちは激怒した。

その結果としては人間界にいる罪人天使をすべて捕獲することとなった。

だが、中には抵抗するものもいて、その行動はなかなか治まらなかった。特に凄かったのは紫を持つ罪人天使で、彼を襲うものは全て痛い目にあっていた。一時期、罪人天使が世界を滅ぼしたと噂がたったがそれはすぐに消えてしまった。結果としてはその罪人天使以外は天国に連れて行かれてしまったのであった・・・




 


 今回、何かどっと疲れました。さて、そんなことより、『断末魔』の方々がほとんど出すことが出来たのでよかったです。というより、まだ生徒会メンバーはあまり出てないので次回で少し出したいと思います。

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