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罪人天使  作者: 雨月
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しょのご 『断末魔』!初めての遭遇!!

契約、それは相手と自分をつなぐ見えない絆といっても過言ではないかもしれない。そして、契約は同種族同士ですることが基本であるが、中には他の種族と契約するものもいる。種族同士で契約した場合、その力が増幅される。そして他の種族とした場合は稀に、その双方の能力が使えるようになったりもする。基本的に一回しか出来ないのであるが、唯一その例外がある・・・・・・




 私、霜崎 亜美はもとこの学校の番長だ。

(この前負けてしまったのでその称号は他人に譲った。

)何故番長になったかは簡単なことである。

私が高校二年生になったとき(今から二週間前の事であった。

)同じクラスの友達が柄の悪そうな上級生の男子生徒に絡まれていたのを助けてあげたことがきっかけであった。

(私が通っている高校には変態が多い。

)勿論、相手は人間であったので遠慮するくらいのことはしてあげたので未だに病院にいるかもしれない。

それから今まで大変なことの連続であった。

いつのまにか上級生の男子から『蒼霜』と呼ばれるようになってしまい、二日に一回のペースで他校の番長たちに絡まれるようになった。(校門の所に手下を連れて立っている。)その相手をぼこぼこにしておいたので他校の番長たちも未だに病院生活をしているかもしれないが私はそんなことより彼らが大地に沈む前に呟く言葉の方が気になっていた。皆、口をそろえて

「・・・・俺が負けるなんて・・・『紅時雨』以降だ・・・」

(たぶん前半は嘘だ。

)そんなことを言って倒れるので私は気になって夜も眠れなかった日が一回あったかもしれない。

まぁ、気になったので従兄弟である賢ちゃんに聞いてみた所、その『紅時雨』は今まで一度も負けたことが無いと言っていた。

賢ちゃんにそれについて調べてもらった所、弱冠、高一で悪名高い知流高校の番長たち上級生のほとんどを一人で倒してしまったらしい。

人間ではないのかと聞いたら『紅時雨』は人間だと賢ちゃんは言っていた。

その時は恐ろしい人(人間としては)だと思っていたが『紅時雨』が実際に転校してきて拳を交えた所、なんともまぁ、かなり変わった人物だと言うことが分かった。(まず、攻撃を避けるのが凄かったし、特に驚いたのは女の子がかなり苦手みたいな所だ。)今日の朝、通学路で後ろから追いかけてみて声をかけるとびっくりしてその場に転んだりもしていたのだった。




 住む場所が変わってしまった僕たちは母さん達に連絡を取ることも出来ずに困ってしまっていた所を賢治により救われた。

今は使われていない賢治の旧家を使ってもいいといわれそこに移り住むこととなった。部屋は前より多くなっており、ホントにこんな所に住んでいいのか思っていたが、母さん達が帰ってきたことにより家が崩壊してしまうことを説明しなくてはいけなくなってしまった。とりあえず、ガスが爆発したというなんとも適当なことを言った所、母さんとお父さんは

「それじゃあ、ちょっと旅行に行って来るから、霜崎さんによろしく言っておいてね。」

といって旅行に行ってしまった。その際、美奈さんのことを家族に言った所、

「別にいいんじゃない?」

と言われて公認として僕のお手伝いさんとなってしまった。彼女にも部屋があてがわれており、大きさは僕たちと同じ大きさである。そして犯人の二人組は同じ部屋に住むこととなった。これは当然の行為であるし言い出したのはあっちの方からでもある。そんなこんなで日曜日を過ごして、月曜日となった。


 誰かに呼ばれたので目を覚ますと目の前に美奈さんの顔があった。驚いて立ち上がり、起きたばっかりだったので布団にしりもちをつく。


「おはようございます、いい朝ですね。」


「ああああああ、う、うん!おはよう。」


 手を出されたのでそれを眺めていると、皆さんが面白そうな顔になり、


「つかまって下さい、私が起こしてあげますよ。」


 そう言われたので反射的にそうしてしまった。そこで僕の部屋の扉が大きな音をたて、開け放たれる。


「グッドモーニング!兄さん!起床の時間だよ!・・・・・・ってあれ?」


 そう言って入ってきたのは蕾であった。そして僕を見て顔つきが変わった。


「そ、そんな!この前(時雨が帰ってきた次の日)起こそうと思って早起きしてたからそのときよりも早起きしたのに!また邪魔が入るなんて・・・うわぁぁぁん!」


 そう言って廊下を去る音がして蕾がいなくなる。それをしばらく眺めていたが未だに手を握ったままだったのを思い出したので起き上がる。顔が真っ赤だったのが自分でも手に取るように分かる。


「うふふ、時雨様は可愛いですね。今度また起こしてあげますよ。」


 ある意味、僕にとって一大事なことである。今度からはもうちょいだけ早起きしようと頭の片隅にでも置いておこうかな?

 そこで、皆さんがこの前みた、メイド服という奴ではないことに気がついた。今きている服は僕の物でその上には緑色のエプロンが取り付けられていた。そして頭の上にはやはり緑色の三角巾が装備されているようだ。そんな美奈さんをずっと見ていたからだろうか?急に皆さんからしゃべりだした。


「あ、これはですね、昨日、時雨様のお母様から頂いたものなんですよ。私が着ていた服はあそこにかかげられています。」


 指さされた所には僕のぼろぼろの制服と彼女の冥土服が静かにハンガーで吊るされていた。


「実は、時雨様の制服はぼろぼろだったので修復させてもらいました。」


 明るくそう言って制服を渡してくれた。亜美さんによって貫かれた所と、皆さんによって思いっきり袈裟切りを食らってた箇所はほとんど後が残らないように繕われていた。おまけとしてか、暗めの青い学ランにはチリ一つついていなかった。


「あ、ありがとうございます。」


「いえ、私はあなたのお手伝いさんですからね。時雨様のためならたとえ火の中水の中ですよ。そんなことよりそろそろしたくをしないと学校に遅れますよ。ささ、着替えてください。」


 このままボーっとしていたら美奈さんに全て剥がされかねない状況だったので自分で着替えるために一度部屋を出てもらうことにした。

今、僕のタンスの中には何も入っていない。

まぁ、今洗濯しているのがあるので困っていないからいいがこれからも当分は制服を着ていないといけないと思われる。

(結局この前、服を買うことは出来なかった。

)さて、そんなこんなで着替え終わり、朝食を食べに広間に行くとそこには既に学校に行く準備をした二人とニコニコしながら立っている美奈さんが待っていた。蕾は微妙にしょんぼりと、涼は目をぎらぎらさせながら朝食を口に運んでいる。その二人の間の席が空いていてどうやらそこが僕の指定席らしい。この二人の間に座るのは普段でも居心地が悪いのに今の雰囲気はこれまた別の意味で気分が悪くなりそうだ。


「・・・おはよう、二人とも。」


「うん、おはよう兄さん。」


「・・・・・・おはよう。」


 覚悟を決めて間の席に座り、目の前にある料理に手をつける。こうなったらやけだ、彼女達が口を開く前にここからいなくなってしまえば良いんだ!

 そんな都合いいことは起こらず、僕が目玉焼きをようやく食べ終わった所で涼が口を開いた。


「・・・時雨、あんたもしかして蕾に手を出したの?」


「(びくぅ)なに言ってるのかよく分からないけど、僕は少々ながら女の子に弱いの知っているだろう、自分から触れることなんてあまりしないよ。」


「!時雨は女の子に弱かったの?何故?」


 美奈さんはにこやかに笑って聞いていたが、急に口を開きこの会話を打ち切らせるためなのかどうか分からないが、とりあえずこの会話を終了させてしまった。


「はいはい、皆さんはやく学校に行かないと遅刻してしまいますよ。ここで悪いですが朝食タイムシューリョ―です。」


「時雨、この件は家にかえってきてから聞くからね。」


「それでは、兄さん先に行ってますね。」


 二人はそのままいなくなり、その場に残ったのは僕と美奈さんだけになり、唐突に口をまた開いたのは美奈さんであった。


「・・・・今日の運勢は最下位がさそり座でした。『何かめんどうな出来事を他人から押し付けられたり、お金を拾うとありえない人物と出会う。』と言ってましたよ。」


 僕の星座はさそり座である。何故、彼女が知っているのかは分からないがそんなことより今は学校に行くのが先決である。(特に気になるのは後半部分。)僕は美奈さんに礼をいって二人と同じように家を出たのであった。先程の星座占いがホントかどうかは実際に今日という日を送ってみないことには分かりようが無い。




 そんなこんなで時雨、二日目の学校が幕を開けるのである。彼は今回かなりめんどうな事柄に引き込まれる。これには少々彼の家族の過去が混じってもいるがそんなことは関係ないだろう。


 時雨は学校に向けて歩き出して数分のところで賢治とであった。(電柱に寄りかかってからすとにらみ合っていた。)時雨に気がついて彼のもとに歩いてくる。


「やぁ、時雨君おはよ。この前君に言っていたことを悪いけどここで言わせてもらうよ。君にお願いしたいことは近頃ここらで暴れまくっている『断末魔』という連中をどうにかして欲しいんだ。四人組のグループで構成は確認されている今の段階では男が三人、女が一人となっている。」


 一瞬、この前襲ってきた三人組かと思っていたがそうではないようだ。(これが美奈さんが先程言っていたことのひとつに違いない。)


「具体的に被害をあげるならば人外のもの・・・多くは断罪天使が襲われている。(逃げようとしてこけた。)まぁ、被害的には軽症を負ったりしているのだが、(膝をすりむいた。)そこまで危険視しなくてもよさそうなんだが一応一般生徒を巻き込んでしまった場合がいけないからすばやく対処をしておいてくれると嬉しいな。それでは健闘を祈るよ。ちなみに相手も人間じゃないから手ごわいと思うからね。」


 まだなにかいいたそうな顔をしていたが賢治はさっさと僕を置き去りにしていってしまったので僕はそのことを考えてた。名前から考えるにめちゃくちゃよわそうというかなんというか・・・それでもこれ以上の被害が出るのは確かに寝起きが悪いなぁ・・・。

 そんなことを考えながらぶつぶつ呟き登校している時雨の後ろに不穏な影が一つ。その影はなにやら呟いている時雨の背中を叩き・・・・


「や、おはようさん!」


 亜美は時雨を軽く叩いた後、前に回りこみ彼の顔を覗き込んだ。


「うわぁ!び、びっくりしたぁ。」


 やはり、驚く時雨を見て亜美は笑う。彼が心臓麻痺で死ぬ日はそう遠くないかも知れない。


「ははは、ごめんごめん、全くもってすきだらけだね。そんなことじゃ、夜道も歩けないよ。たぶん変質者に教われてアウトだね。」


 男を襲う変質者には襲われたくないなぁ。そんなことを思う時雨は前に賢治に言われたことを亜美に聞くことにした。


「えっとさぁ、契約って何かな?前に賢治に聞いたら亜美さんに聞くように言われたんだけど。知ってる?」


「け、契約って・・・・それは・・・・なんというかなぁ。そうだ!学校で教えたげるよ。そ、それじゃあね。」


 先程の笑顔は何処にいったのだろう、慌てた様子でチーター顔負けの速さで(彼女の場合本気で走ったらそれ以上になるかもしれない。

)学校に向かって走っていった。

ちらりと見た顔はなんとなく赤くなっていた様なきがした時雨はその後を追おうとして何かの音を聞いた。

硬貨が地面に落ちたときの音によく似ている。

(意外に耳がいい時雨は音で硬貨の種類を当てるという特別スキルをもっている。

)時雨はその辺りを音を出した物(彼はその音の主を五百円玉と推理した。)を探していると五百円玉が落ちていた。彼がそのまま無視して学校に行ったら運命というものは変わっていたかもしれない。五百円玉を拾い、視線を上に向ける。そこにはすらりと伸びた細くて白い足があり、その先には白いパンツが・・・・


「ぶっ・・・あわわわわぁ。」


 時雨はその場にしりもちついて鼻血を勢いよく吹き出していた。アスファルトに血が飛び散り慌てて立ち上がった時雨はさらにその顔を驚愕に染めた。


「!?何で君がこんな所にいるんだ!」


「お久しぶりですね、お兄様。」


 驚く時雨の前に立つ何処となく時雨に似ている色白で可憐そうな少女は顔を微笑みの形に変えて時雨を眺めていたのであった。

彼女の名前は不和ふわ 氷雨ひさめ。時雨の元、父親が離婚したときに連れて行った時雨の双子の片割れである。妹で幼い頃から病弱だったので医者だった父親に引き取られていたのである。そして時雨はその後全く氷雨にあった事は無い。今の時雨には氷雨が別の何かに見えていた。人間ではない何かに・・・・


「・・・・・・・・。」


 彼の元父は交通事故で死んだと時雨は祖母から聞いていた。彼が運転していた助手席には・・・・・・氷雨が乗っていたと聞いていたのだ。事故現場には氷雨のいた形式などは全く無く、助手席にはただ血がついてたらしい。その後、彼は写真の中の氷雨にあったぐらいである。


「今日からお兄様がいる高校に行くことになったんだ。よろしくお願いしますね?」


 彼女の服装は上が、学ラン、下がスカートという彼が通っている高校の格好であった。

時雨はただ頷き去っていく彼女をボーっと眺めていた。その結果として彼は転校二日目で遅刻になりそうになってしまったのだが・・・・とりあえず彼にはこれまた不可解な出来事の始まる序章に過ぎなかったかもしれない。死んだはずの妹、時雨は心臓がドキドキしているのを感じていた。(もしかしたら先程見た白いものの余韻かもしれない。)




 教室に入った時雨を迎えたのは(数の少ない)男子達の喜びであった。


「おお、時雨ではないか、今日もまたもや転校生がこのクラスに来るそうだ。しかも美少女らしい!」


 女子達も浮かれている様で時雨の席の近くにいる方々も騒いでいた。


「いやぁ、どんな人かなぁ。今から楽しみだよね時雨君!」


「・・・・・・ああ、そうだね。」


 彼は氷雨のことを考えていた。(転校生は彼女で間違いない。)一体全体彼女は何者だろうか?まず人間ではないのは確かだろう。

 隣に座っている亜美は赤い顔のまま時雨を見ていて話し掛けてこようとしないし、彼の近くには男子が数人(全男子)いるのだが、彼らは先程教室から出て行き、このめちゃくちゃ広い校舎の中を職員室に向かって突っ走っているに違いないだろう。まさしく走り屋な男子達である。


 分からないことは他人に聞くことが一番、そう思って時雨は男子の中で唯一座って何かを見ている(その表紙は美少女の絵がかかれていた。)賢治のもとに行った。


「・・・・ねぇ、賢治は死んだと思っていた人物が自分の前に現われると思う?」


「そうだね、よくあるんじゃないかなぁ。僕としては日常茶飯事だからもうそこまで気にしなくなったよ。」


 そんな日常はいやだが、今はそんなことを行っている場合ではない。昨日賢治から買ったあの本を読んでいると興味深いことがかかれていた。それには『紅色の翼を持つ天使は相手が何者か分かるような感じを覚えるという。』と書かれており、(手書きであったが、なかなかの達筆でもあった。)つまるところは氷雨は・・・なんであろうか?


「ねぇ、賢治・・・・」


 時雨は先程の事を事細かく説明して、賢治に氷雨の正体を聞くことにした。一応、あの事(氷雨のパンツを間違って覗いてしまったこと。)も話しておいた。


「なるほど、多分その彼女は・・・吸血鬼ブラッドイーターだね。数えるぐらいなら英単語の一つでも覚えた方がいいと思えるほどある魔族の中の一つだよ。」


 賢治はそう言ってほとんどそのことについて興味を失ったようで時雨を見てから未だにボーっとしている彼の従姉妹を見て頷いた。その顔は何か面白いことを考えている顔である。


「ちょいと、亜美こっちにきてくれないかな。」


 席に座って時雨の背中を見て顔を赤く染めている亜美はその声に我にかえり間抜けな返事をした。


「へ、別にいいけど。」


 時雨の前に立たせて賢治は亜美の後ろにまわり、不思議がる亜美と目線を合わせることとなった時雨は当然のように亜美から目をそむける。下を向いたのは間違いだっただろう。


「春風のいたずら!!」


「きゃ。」


 時雨が下を向いた瞬間、堅持はあろう事か亜美のスカートを思いっきり上にあげたのであった。

下を向いていた時雨は当然のようにそれを直視。

朝から立て続けに起こった出来事により彼は(鼻)血をいきおいよく吹き出しながらその場に気絶してしまったのであった。

かろうじで二人に血はかからなかったが賢治はそのまま逃走。

その後、鬼神と化した亜美と壮絶な(リアル)鬼ごっこを展開、この前のメイドたちとの鬼ごっこも凄かったがそれ以上に校舎への負担が凄かった。

亜美が諦めて(賢治相手では流石の亜美も捕まえるのが不可能らしい。)帰ってくるまで時雨はその場に放置されたままであり、クラスにいたほかの人々はそれを唖然と見ていただけであった。そして、元凶の賢治は時雨が意識を取り戻した所で天井から降ってきて一応形だけの謝礼を時雨に述べたのであった。(亜美に対しては全く悪いことをしたとは思っていないようだ。)


「あ〜ごめん。(全く持ってその声からは誠意と言うものを感じられない。)これは実験だったんだよ。それにまさかあの亜美のパンツを見て鼻血吹き出して倒れるなんて夢にも思わなかったんだよ。(彼がこれまで試してきた相手はそろって嫌そうな顔をした挙句、

「うわっ、損した。」

と言って亜美に殴られた。)」


 ここで亜美が行った男子への報復を書かせてもらおう。

まず、女子に嫌がらせをしてくる男子(ナンパみたいなことをしていたらしい。

)はすべて屋上につるされた。

体育の時間覗きをしていた男子を柔道場まで引っ張っていきサンドバックのように扱った。

そして最後に・・・亜美を間違えて男子だと思って声をかけてきた男子を天使化したあげく空に打ち上げてしまった。最後のは思いっきり被害者がかわいそうだったがこれもこの学校には少々スケベな人物(男子)が多いからである。結果として、この学校にいた多くの男子はありえないことに転校したり、学校を辞めていったりもした。学校を辞めていったある少年A君のその後を書かせてもらおう。


「・・・ええ、もう凄まじいですね。夜眠っていると彼女に思いっきりぶっ飛ばされた夢を何度となく見るんです。あれから女の子を見ると自分から近づかないように心がけています。この前、あの彼女に会いましたが僕はその場で意識を失ってしまいましたよ。」


 そこで、今時雨たちが通っている学校に未だにいる少年B君は違うことを言っている。


「いやー、彼女に殴られるとなんていうかそのね、こう、何か言葉で説明するのが難しい何かを感じるんだよ。」


 つまり、今この学校に残っている男子の多くはそんな危なそうな趣味を持つ連中が多い。一応言っておくがこれはあくまで多くのであり、ちゃんとまともな連中は・・・・多分いると思う。

 だから、そんな亜美のパンツを見て鼻血を吹き出す男子はいなかった。実際、他にパンツを見た少年C君のことを書きたいと思う。


「いやぁ、他の女子のなら結構覗いているんだけどあの時は運が悪かったね。その後あったテストでろくな事無かったし、見てもなんだが得した気分なんてないなぁ。どっちかって言うと見ると損するような気がするね。例えるなら・・・・校庭に生えている木に蜂の巣を見つけたときと似ているね。」


 この体験を語ってくれたC君はその後誰かに闇討ちを喰らっているらしく近くの病院で生活している。(亜美は知らないと言っているが目が泳いでいたと賢治は語っている。)


 そして、睨んでいる亜美をおいて賢治が席についたときにチャイムがなり、先生ともう一人誰か入ってきた。(いなかった男子は後ろの方から顔を赤くしたまま鼻の下を伸ばして入ってきた。)


「えー、彼女は・・・不和 氷雨さん、ここの高校の近くにある鮮斗羅琉高校から転校してきたそうだ。皆仲良くするように。」


 今日の先生はなんとなくなげやりであった。その隣に立っている美少女、氷雨を見てクラスの興奮はいつもより高かった。


「不和 氷雨です。皆さん、これからよろしくお願いしますね。あ、家族構成は生き別れと言うか・・双子の兄がいます。好きな食べ物はトマトです。」


 自己紹介をしている氷雨を取り囲んでいるクラスの女子達を見て時雨はその近くに行ってない亜美の顔を見た。(机は隣なので恐々と眺めている。あまりにずっと見ているとまた鼻血を出すに違いない。)その顔は少しこわばっているようだ。


「・・・・『寒凪』・・・不和 氷雨だって・・・」


「へ、『寒凪』って何?」


 賢治がこちらにやって来て詳しく説明をしてくれた。


「ああ、思い出したけど彼女はここらで有名な番長さんなんだ。女の子の番長が多い気がするのは僕だけかなぁ。まぁ、そんなことより彼女はかなり冷徹で流れている血は青いって噂があるくらい極悪非道なんだよ。それ以降、彼女に近づく男子はいなくなったって言われているからね。現われたのはそうだねぇ、高校一年の初めぐらいだったかな。彼女に告白した男子は全て振られたそうだ。なんでも、夜道で襲ってきた変質者を幾度となく捕まえたりしていて警察にもお礼を述べられたことが結構多いみたいだね。」


 賢治の目は紅く染まっており、その目は・・・・・氷雨を凝視している。


「お兄様、これからは一緒に住めますね。」


 いつのまにか時雨の前には氷雨が立っており、クラス一同ぽかんとしていた。そんなことも少しの時間であって、また騒がしくなる。


「ええ、うそぉ。時雨君が双子のお兄さん!!ってこんな可愛い妹が他にもいたの?」


「うーん、そういえば確かに似ている感じがするね。」


 特に男子からの鋭い視線は恐い。まるで親の敵を見る眼だ。


「畜生、奴はあんな奇麗な妹が他にもいるくせに女子が苦手なんて・・・」


「そうだ、蕾ちゃんや涼ちゃんがいるくせにそんなに妹キャラが好きなのか!このロリコンやろうが!」


「お前、やっぱり背の低い亜美なんかが好みなんだろう!」


 そんな好き勝手なことを言っていて賢治は笑っているが亜美と氷雨はにらみ合っている。


「・・・・・これはこれは、『蒼霜』さんではありませんか・・・お久しぶりですね。」


「よくいうね、この前も会ったじゃない、『寒凪』さん?」


 彼女達からはもはや人間とは思えないオーラがめちゃめちゃ吹き出している。クラスメートは教室の隅に退避しており、先生は既にこの教室から去っていた。時雨は二人の間にいつのまにかはさまれている状況に陥っており、これはまた、ある意味恐怖である。


「ここの高校の番長さんは男の子を足蹴に扱っていると噂に聞いていますよ。それに男の子に全く興味ないとか?私のお兄様に触らないでもらいたいんですけど。」


 時雨の左手を掴む。時雨いわく、その手はすべすべしていたらしい。


「それは・・・・スケベが多いからよ!あんたも今まで男子からの告白を全て蹴ったらしいじゃない。」


 氷雨に対抗するように時雨の右腕つかむ。そして時雨いわく、温かみのある手であったらしい。


 にらみ合う二人の真ん中で時雨の心境は微妙なものであった。賢治に助けを求めるように目を向けるとその顔はめちゃくちゃ面白そうにしており、時雨は孤島に置き去りにされた気分を生で味わっているような感覚を覚えた。


「私のお兄様から手を放してください!それともなんですか?あなたは私と決闘するとでも言うのですか、『蒼霜』さん。」


「のぞむところよ。その天狗みたいな性格、へし折ってあげるんだからね。」


「・・・・・・。」


「それでは、二人の決闘の司会者を勤めるのは生徒会といたしますね。」


 いつのまにか教壇には複数の人物が立っており、真ん中を賢治、それから横に何人かの生徒たちが立っている。


「ルールは簡単、只今巷で有名な『断末魔』を退治してきた方の勝ちです。人間とは思えないあなた達ならできると思いますので頑張ってください。商品は『紅時雨』ですので気合も入ると思います。なお、時雨君も参加オーケーなので頑張ってくださいね。起源はこれから先『断末魔』のメンバーを捕獲、断罪、もしくは僕のところに連れてきた人が優勝です。」


 どうやら、僕はまだ大丈夫のようだ。そんなことを考えながら賢治を見ている時雨は

両脇にいた二人はいなくなっていることに気がつき辺りを見回した。そして

「教室の窓が開け放たれていた。他のクラスメートは驚いてそっちの方向を見ている。


「ほら、時雨君、早く行かないとあの二人に遅れをとっているよ。このままじゃ君が物品になる日も近いと思われるね。(とっても素敵な笑顔)」


 賢治に言われて時雨は慌てて教室を飛び出した。無論、きちんと廊下の方からである。しかし、慌てていると道に迷うことは多い。(時雨はまだここにきたことは数回である。)案の定、時雨は無駄に広すぎる校舎の長い長い迷路の中で迷子になってしまい困ってしまった。


「授業しなくていいのかな?」


 教室に戻ろうにも戻る道が分からなくなっていて困っているので授業どころではない。辺りを見回していると一人の男子生徒が目に映った。(恐ろしいことに教室から半分顔を出して時雨を見ている。)


「すいませーん、道に迷ったんですけど!」


 その男子生徒はいきなり時雨に襲い掛かっていた。とっさにそれを避けて(反射的に)けりを腹に喰らわせる。相手はひろーい廊下の向こうに吹っ飛びまた起き上がる。その目は獲物を見つけた動物の目をしていた。


「何で襲ってきたんだ?まさか亜美さんが言ってた男を襲う変質者か?」


 いやいや、そんなことはない。

説明させてもらおう。

襲い掛かってきた奴は食者イーター

時雨が賢治からもらった本の中にかかれていた多くの魔族の種類にその名前が刻まれていた。

食者は人間を喰らったりもするのだが、多くは人間を食べたりはしない、それは味がまずいらしく栄養も無いらしいので(人間に襲い掛かった食者は腹痛を起こしてトイレと友達になることが多い。)人間には無害だが人外の物にとってはうるさい存在である。一度狙われると付きまとわれたりもしてストーカーに狙われている気分(報告として自宅の窓にへばりついていたりしているらしい。)を味わうらしい。そして食者にはさらに詳しく分かれており、食べる部分でその呼称を決められている。


「・・・のど渇いた。新鮮な水分が欲しい・・・じゃなかった。」


テストで出てくる問題をとくようにして考えていたが食者はまたもや襲い掛かってきた。いつのまにか水の固まりのような獣の姿になっている。


「・・・・我、『断末魔』の水神。天道時 時雨を仕留める者。」


 獣がそんなことを言っていてその鋭く長い爪をかざして時雨に突っ込んでくる。それを避けて拳を叩き込んでいる時雨はこの食者を何とかして倒せないかと考えていた。



 そんな中、結構前に鳴ったチャイムが再び鳴り響く。これは多分一時間目の終わりを告げるものだ。すると、水神と名乗った食者は時雨から離れて一気に走り去っていこうとした。


「・・・挨拶として今回はこんくらいにしてやらぁ。その首丁寧に洗ってまってな。」


 捨て台詞を残して人間状態になった少年は颯爽と歩いていこうとして(時雨はその間去っていく後ろ姿をただ眺めていたのであった。)時雨の後ろから飛んで来た竹刀を食らって窓から落ちてしまった。


「時雨大丈夫、怪我は無い?」


 やってきたのは涼で小脇に抱えているのは教科書である。その顔は少しながら青くなっている。どうやら時雨の心配をしているようだ。


「ああうん、ちょっと驚いたけど・・・・怪我は無いよ。そんなことよりどっから竹刀だしたんだ?」




 

 そして吹っ飛ばされたあげくに二階からのひも無しばんじ―ジャンプを自分の意思で無く他人の意思で決行された水神は・・・・やはり生きていた。頭から落ちたのになぜか尻をさすって起き上がり、一言。


「・・・癖になりそう。」


 この学校には変人が多く集まっているのかもしれない。

 そんな中、教室の窓から飛び降りした他の方々は公舎内の剣道場で激戦を繰り広げていた。


「そりゃぁ。」


「なんの!」


 天使化した亜美と吸血鬼の氷雨は激しいぶつかり合いを見せており、なかなか決着がつきそうに無い。それどころか剣道場が破壊されそうな具合である。今の状況は床が所々抜けており、切り結んだ相手を吹き飛ばしたりしたので既に壁はいたるどころにへこみが出来ている。その後も彼女達の無駄と思われる決闘は続く。


 がきん、ぎぎぎぎぎっ!ばきん!


 白い剣で戦っている亜美と自分の血を固めて剣として使っている氷雨の実力は互角のように思われ、切り結んだときには口を開きそこで戦いを始める。


「・・・少しはやるみたいですけど、さっさと諦めて降参したらどうですか?」


「何いってんのよ。そっちこそ負けを認めたらどうなのよ。」


 二人がそんな校舎を破壊しかねない状況の中一人教室に残っている賢治は・・・・


「ああ、美奈さんかな?これから時雨君の携帯の番号などを教えるからめもっておいてくれないかな?え、うん、そうそう・・・・」


 休み時間中に携帯を取り出して友人の携帯の画面を眺めてそんなことを言っている。さらにそれを聞きつけたクラスメート達は時雨の電話番号やアドレスを勝手に自分の携帯に登録。それを知らない時雨は涼と未だにいるのであった。




 吸血鬼ブラッドイーター食者イーターの一種である。

その名の通り血を求め、その血が彼らにとって美味しいものならば吸血鬼は強くなったりできる。

余談として朝の目覚めが良くなったり、無理な姿勢をしていても疲れなくなるなどの報告を受けている。彼らは罪人天使とどこかにている所があり、その数は少ない。力を具現化させるときに現われるものは翼こそ出てこないものの罪人天使のような赤い剣のような物を授かると言う。一説では罪人天使のなりそこないといわれている。


 これからは『断末魔』との戦いとなっていくと思われます。流されるままこの状況に既に慣れてきている時雨の運命はいかに!!そして、呼んでくれる人達ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますね。

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