しょのじゅうに 形となった罪(後編)
紫の羽を持つ罪人天使はいない。そんなものは神様が創った物でもない。神々が創造した罪人はもはや彼らでは防ぐことなど出来ない。神々は恐れた。そして、異分子は全て取り除くことにしたのである。
雨が降る中、時雨は泥だらけの体を立たせて紫色の翼を持つ人物が飛んでいった方向をずっと見ていた。
「ほら、時雨風邪ひくよ。」
不意に時雨を叩いていた雨がさえぎられ彼の目の前に少女が現われる。その顔はどこか心配そうな顔をしていた。
「あ、ありがとう涼。」
いまさら傘をしていても意味が全くないのだが、時雨は涼にお礼を述べた。そして、校舎の壁にぶつかって気絶している人物を見る。しかし、そこにその人物は既におらず、代わりに賢治が手を振っている。
「おーい、あいあいがさなんてしないでちょっとこっちに来てくれないかい?」
何故だか知らないが面白そうな顔をしていたので時雨は涼に手を引っ張られるような感じで賢治の元に向かった。
「さ、この事件はこれで終わり。時雨君はせっかく迎えが来たんだから早く帰って温かくしないと風邪ひくよ。あの眼帯貴族は僕が責任をもって捕獲したから安心していいよ。」
時雨があの紫の羽を持つ人物の事に触れようとすると・・・
「帰った帰った。今の君に必要なのは情報じゃなくて包帯だよ。全身傷だらけじゃないか。」
時雨の体は刺された覚えのないところまで血が出ているし、学ランはぼろぼろ。まるでぼろ雑巾のようだ。時雨は黙って回れ右をして校門のある方に歩き出した。涼はそんな時雨の後を小さい体で追いかける。家の近くまで無言だった時雨は涼に話し掛けるわけでもなく、ポツリと呟いた。
「・・・・哀しみの天使か・・・・」
それを聞いた涼は時雨に問い掛ける。
「何それ?」
「いや、さっき事件の犯人に外に投げ出されたときに聞こえたんだ。それ以外は聞こえなかったんだけど・・」
そんな風に難しそうな顔をしている時雨の背中に涼は飛び乗る。
「時雨、ここ、右肩の当たり凄い傷だよ。」
「え、あ、うん。注射器でぶすりとやられたんだよ。」
時雨はこれ以後先端恐怖症になるかもしれない。家に涼を背負ってはいると美奈が心配そうな顔をして立っていた。その手には包帯と塗り薬が握られている。
体を奇麗に洗った時雨は次に美奈による手当てを受けることとなった。
「良かったですね、時雨様が人間だったら多分死んでるかもしれませんよ。出血多量で今頃お墓の下になってましたよ。」
塗り薬を時雨の体に塗っている美奈の手つきはなんだかへたっぴである。時折顔をしかめながらも時雨はその荒い治療を耐えていた。
「しかし、本当にぼろぼろにされましたね。今日は天使化をしなかったんですか?」
「・・・実は舌をかんで失敗してしまったんです。」
うーん、これは笑うべきなのか慰めるべきなのか美奈は判断に困ったのであった。とりあえず話を変える事にした。
「それより涼様のあれを直す方法を聞いてきたんですか?」
頭の上に手を置いて耳の形にして動かす仕草をして時雨はあっと声を出す。
「・・・・聞くの忘れてた。」
溜息をつきながら治療の終わった時雨はとりあえず涼を呼んだ。もしかしたら何かわかるかもしれない。
「どうしたの?」
涼がやって来て時雨の膝の上に乗っかる。美奈はそれを見てほほえましい気持ちになった。
「ちょっとゴメンね。てぇや!」
涼の頭をパコンと叩いてみる。今までならにょきと生えてくるのだが、今回は何も出てこなかった。涼が時雨を睨むだけである。
「いたいなぁ。何すんだよぉ。」
「え、ご、ごめん。」
今度はぽんと頭に手を置いてみるがやはり何も出てこない。これならどうだと撫でても全くあの不思議な耳は出てこなかった。
「時雨様、とりあえずは結果オーライでいいんじゃないんですかね?身長は依然として小さいままですが・・・」
どうやらあの耳と涼が小さくなったことは関係ないようである。何故であろうか?時雨は難しい顔をしながら涼の頭をぐりぐり回すのであった。
「明日も学校ですので今日は休んだ方がいいですよ。学ランの方は私が何とかしますから。」
「あ、うん・・・ありがとう。」
時雨は泥だらけでずたぼろ、更に赤く染まった学ランを美奈に渡してその場を後にした。氷雨が帰ってきてないのが時雨にとってなんとなく心配要素の一つでもあったが、彼女の事は大丈夫だろう。そんなことを考えていたから涼が言った事を時雨は受け入れる羽目となった。
「時雨、一緒に寝よう?」
「ああ、うん。」
「ホント?やったぁ。」
そして、はっと気づいて訂正しようとしたが遅かった。涼は自分の部屋に戻ると枕を持ってやってきた。
「さ、寝よう寝よう。」
「ちょっと待った。どこで寝るの?」
もういまさら間違いだったと言うことは出来ない気がしたので時雨は諦めたような口調で涼に言った。時雨の部屋はこの家に存在しない。
「ここ。廊下で寝ようよ。」
いつの間にか廊下には布団が準備オーケーとなっている。
「ちょっと狭くない?」
「大丈夫だよ。」
時雨を引っ張って涼は嬉しそうに布団に入る。
もとより布団は一つしかないので結局は二人で寝ることとなる。
電気なんかほとんどない廊下は暗いので良く分からないが時雨はできるだけ涼と距離をとろうとした。寝返りをうったときに涼をつぶしてしまったら大変であるし、再び美奈に誤解される可能性が高い。まぁ、廊下に寝ている時点で他人にばれるのは間違いないだろう。寝ぼけた誰かが二人を踏まないことを願っておこう。
「しぐれぇ、こっち来てよぉ。」
不意に甘えたような感じの声を出して涼は時雨を呼ぶ。時雨はちょっと意外だと思いながらも仕方ないと頭の中で整理して涼の近くに体を動かす。もっとも、廊下は狭いのでほとんど変わらないのだが・・・
「甘えてもいいよね?」
時雨の返事を待たずに涼は時雨に体を寄せる。時雨が量がいる反対方向に体を向かせる、涼はそんな時雨の背中にせみのごとく張り付いた。これでは時雨はうかつに体を動かす子は出来ない。
「つかまぇたぁ!」
「ははは・・・捕まった・・」
内心焦りながらも時雨はこの次の涼の行動を考えた。子供が次にしてきそうな事はなんであろうか?
「えへへぇ。」
時雨の背中に顔を押し付けて時雨を抱きしめる。そして、そんなことをしていることによって夜はふけていくのであった。
朝起きるといつのまにか涼の顔が目の前にあった。デジャビュ?そんなことより時雨は驚いた。なぜなら涼が重いのだ。これは彼女の体重が元から重いのではなく、昨日に比べたら重いと言うことである。つまり、それが意味することは一つ。
涼の体が元に戻ったのである。
涼の肩を掴んでゆすろうとして廊下に人影があった。この時間帯に起きているのは時雨か美奈ぐらいなものである。そしてその人影は美奈であった。
「!!時雨様、朝っぱらから何そんな幼い子を襲っているんですか!!」
「ち、違うよ!体が戻っているんだよ。!!」
その弁解の仕方も勘違いされる可能性が大きいような気がしないでもないが今回は目をつぶっておこう。しかし、美奈が驚くのも無理はない。こんな狭い廊下にやはり二人がはいることないので涼は時雨に覆い被さるようにして寝ている。よくもまぁ、こんな体勢で寝れるものだ。
「そうですか、それではそろそろ起きた方がいいと思いますよ。」
昨日、涼がぶかぶかのパジャマを着たのは正解だった。もしも、小さいサイズのものを着ていたら大変なことになったに違いない。時雨は静かに寝息を立てている涼を起こさないようにわきにずらして布団から出る。そして、立ち上がり、違和感を覚えた。
「あれ・・?」
「どうしたんですか、時雨様?」
体から力が湧きあがるような感覚を覚えて時雨はしかめっ面をする。天使化をしたときのような感じがするのだ。とりあえず、時雨は顔を洗い、トイレに入る。
『おはようございます、時雨様。』
「え、ああ、うん。おはよう雷神さん。」
そう答えて時雨はちょっと黙った新型トイレを見た。
『どうやら時雨様は悪魔と契約を交わしたようですね。』
「え・・・なんだって?」
その後、時雨はトイレによる契約の授業を受けたのであった。
『・・・つまり、時雨様は間違ったとしても涼様と契約してしまったわけです。そして、涼様は力を失っていた状態から時雨様と契約したのでもとの大きさに戻ったのですよ。一般的に悪魔が力をなくすと小さくなることは知られていませんね。』
ついでに涼が小さくなったことまで分かった。トイレにしておくのはもったいない。
「じゃあ、やっぱり僕は・・涼とその・・事故だったとしてもキスしてしまったの?」
『そうですね、そのようになります。罪人天使の時雨様なら神様も悪戯かもしれませんがまだ契約は出来ますよ。』
時雨は微妙な心境でトイレを後にする、すると涼と鉢合わせ。一瞬ビビってしまう。
「おはよう時雨!昨日は良く眠れた?」
「え、う、う、うん、おはよう。よく眠れたよ。」
ちょっと涼は不思議そうな顔をしたが、笑った。そして、少し顔を赤くしていったのだ。
「私はずっと時雨の妹だよ。駄目かな?」
その目は何かを知っている顔でもある。
「え、もちろんだよ。」
家の上では二つの影が立っていた。
「うーん、僕ってやっぱりついてないのかなぁ?」
「生まれ変わっても時空が変わっても世界が滅んでも君はロリコンなんじゃないかい?これが君の罪だろうね。いや、大体君は女好きだろうね。」
「へん、いいやい、僕は僕だ。彼は彼。誰と契約しようがどうでもいいよ。僕は彼が間違いを犯さないようにしないといけないんだからね。」
「もう、間違い犯してない?」
「・・・・・・・。」
朝の日差しに包まれて二人の人影は消えた。片方は肩を落としていたような気がする。
学校ではいろいろと騒がれていた。どうやら賢治が色々としゃべったようだ。一ヶ月前から起きていた女子を襲った犯人は転校してきた、番長、『紅時雨』によって捕まったと言われていた。時雨が教室に入るなり既に他の生徒は座っており、そのことでもちきりだった。
時雨が入ってきて席につくとみんなに囲まれてたのであった。
「やるねぇ、時雨君。」
「私が捕まえるはずだったのに!」
そんな声が聞こえてくれるが、頭をばしばし叩かれる。特に約三名のクラスメートからの攻撃は凄まじい。
「くそう、時雨の奴はいっつもおいしいとこもって行きやがって。」
「この前は俺たちを保健室に送り込んだくせにぃ。」
「気がついたのは昼休みだったんだぞ!!」
そんな中にも氷雨の姿は見当たらない。誰かに聞こうとして先生がやってきた。生徒たちはそれぞれ自分の席に戻っていったので時雨が聴くことは出来なかった。
「えー、実はみんなに連絡がいくつかある。まず一つ目、保健室の先生が捕まったので新しい保健の先生が見つかるまで保健室の使用は出来なくなる。この前、保健室に送られた人達は再びそのようなことがないように気をつけること。二つ目、このクラスにいた氷雨さんは昨日を持って転校することとなった。詳しく分からないが、本人からそのようなことを聞いたので間違いないだろう。そして最後、天道時時雨クンは本日トイレ掃除をする事。理由は終わった後に伝えます。以上。」
先生は教室から出て行き、時雨は顔をしかめた。遅刻もしてないのでそんな掃除をする事自体がわからないのだが、しょうがない。そんななか、隣の席の高仲が時雨に話し掛けてきた。
「時雨君、氷雨の事何か聞いてないの?」
時雨自体初耳だったので昨日からあっていないことを言うと・・・
「うーん、兄の時雨君にも言ってないなんておかしいね。」
「ただ単に旅に出たくなったんじゃないの?」
亜美はそのように言って時雨の顔を見ている。その顔はどことなく心配をしているような顔である。
「それより時雨君、学ランがとてつもなくぼろぼろで血のにおいがするんだけどホントに大丈夫だったの?」
「え、うん。凄いぼろぼろになったけど大丈夫だよ。」
時折刺された箇所が痛むが、そこまでない。そして、今度は賢治が時雨の元にやってきて言った。
「トイレ掃除は覚悟を決めたまえ。トイレを侮ると痛い目を見るぞ。」
うんうんと頷いている賢治を亜美と高仲、そして時雨が見たが賢治はただ頷くだけであった。
「あ、そういえば高仲さんのお友達はどうしたの?近頃全く会ってないよ。」
「凪って呼んでください。あの二人はですね、行方不明になりました。この前のトイレ掃除の時に・・・。確か、おとといぐらいだったですかね?トイレは気をつけてくださいね。この学校にはちょっとした噂がありますから・・・」
凪はそう言って席を立ち、どこかに行ってしまった。
「それってどういう事?」
「ああ、それはね、高校なのに怪談があるんだよ。女子トイレだから時雨君にはあまり関係ないと思うんだけどね。放課後のある時間帯にトイレの個室に入ると声が聞こえてくるそうだ。自分以外に人はいないし、何かがいるような気もしない。ただ単に声が聞こえるだけなんだよ。そんな話さ。」
どこにでもあるような感じの怪談だが、横から亜美が口をはさんだのでその怪談は変わってしまった。
「え、私が聞いたのは違うよ。トイレの個室の中にいると声が聞こえるって言うけど、それは水の神様が通る音って聞いているよ。それに、時間帯はどっちかというと夜だよ。」
時雨はどっちみち関係ないだろうと思い、その話を聞いていた。
「それに、人を襲うって聞いたこともあるし、過去にも行方不明者が出たんだよ。」
消えた一年生の謎・・・と言う題名でこの学校の怪談の一つらしい。
そして、今日は時雨の番となった。
夕方、時雨は男子トイレで一人で便器を擦っていた。今のところはきれいにしているし、床も掃除した。後、残っているのは個室だけである。個室は三つあり、廊下側から時雨は丹念に舐めるようにきれいにしていく。トイレは白く輝き、時雨に感謝しているようであった。もっとも、トイレから御礼を言ってもらってもどうかとは思うが・・・・。
とりあえず、時雨はトイレ掃除を完了。この後先生を呼んできて奇麗になったのを見せれば帰ることができる。時雨は帰宅部なのでこの後は暇である。
『・・・ああ・・・あ・・』
そんな時、時雨の背後・・・一番近い個室からそんな音が聞こえてきた。不審に思う時雨はその個室の扉を開けて正直ビビった。
便器から水が溢れ出し、その水はなんと手の形をしていたのだ。そして、その不可思議な水の塊は固まっている時雨を掴み便器の中に連れ込んだ。時雨は謎の手に捕まれた所で気絶してしまい、その後どのようになったかは分からない。
目を覚ますと下水道のような所であった。辺りは暗いというわけでもなく、それなりに視界は良好である。どうやらとても広い所のようだ。そんな中、奥のほうに人影があり、その人影は時雨のほうを向いた。
「おや、しー君じゃない?どうしたのこんな所で?」
『断末魔』メンバーの一人、風神である。時雨の高校の制服を着ていて(といっても学ランとスカートだが・・・)不思議そうな顔で時雨を見ている。
「ここはどこなんですか?」
「ああ、ここはお馬鹿なリーダーさんが作った旧、『断末魔』の安らぎの地よ。今はマンションの一角に移動されているけどね。もう一度聞くけどどうしてこんな所にいるの?」
時雨はトイレ掃除をしていて起こった不可思議現象の事を話した。風神はその話を聞き、時雨にその現象を説明してくれた。
「・・・・それは間違いなく、あの水神の仕業ね。しー君をしとめようと思ってんじゃないの?あっちの方にもっとここより広い所があるからきっとそこに水神はいるわよ。水神を地獄に送るなら後で墓参りに行くと伝えておいてね。」
時雨の返事を待たずに風神は回れ右をして光が多く入ってきている方向にある曲がり角を曲がり消えてしまった。残された時雨は風神が言ったとおりのほうに歩き出した。『断末魔』とは敵同士だが、風神とは友達なので時雨はあっさりとその言葉を信用したのである。
「・・・・あ・・・ぁぁ・・あぁ!!」
奥に進むごとにそのような声が聞こえてきた。時雨は声が聞こえてくる扉の前で天使化をすることにした。昨日の二の舞にならないように彼なりに努力した結果である。
鍵がかかっていた扉を紅い剣で切り裂き、中に入る。
「こっからはやくだしなさいよ!!」
「そうです、早く出しなさい。」
「鍵なくしたんだからしょうがないだろ!今さっき誰かを捕まえたから多分助けに来るはずだ!それまでの辛抱だ!!」
ひろーい、部屋の中でこの前見た水神が二人の女子高生に追っかけられている。二人の女子高生は天使化をしているようで、白い剣を振り回しながら水神を追いまわしている。
「って、あぶなぁ!!」
片方が白い剣を水神に向かって放り投げた。その件は水神の頭の横を通り、彼の前にある壁に刺さる。
「さぁーて、長かった鬼ごっこも終わりですよ。昨日からの鬼ごっこは二人の鬼による・・・血が騒ぐであろう、血劇で終幕ですよ。」
「三枚に下ろされるのとハンバーグの元になるミンチ、どっちがいい?」
「ま、まて、お前らをここに落としたのは俺だが、ここから出れなくしたのはお前達だろう!!責任は双方にあるはずだ〜。」
壁にじりじり追い込まれている水神はここで時雨の存在に気づいたらしい。
「あっ!助けが来たぞ!!」
二人が振り返ったほんの一瞬をついて水神は水の獣のような形をとり、時雨の後ろにまわり時雨を盾にするようにたった。しかし、次に時雨の耳元で時雨が驚くことを喋り出した。
「まさか、『断末魔』ってだけで女の子と付き合えないなんて知らなかったぜ。この前、炎神に規律を聞いてな、それにより俺は『断末魔』を抜けることにしたんだ。だが、抜ける前にしー君こと、天道時 時雨と再戦をするつもりだったんだが、手違いであの二人が来ちまったんだよ。今の俺はお前に構っているほど暇じゃねーんだ。だからお前と会うのは今日で最後だ。さらばだ。」
そんなことを言っている水神めがけて凶暴化した天子は白き光を放つ剣をバンバン投げてくる。つまり、水神の前にいる時雨にとってはいい迷惑だ。つい先程彼の耳から血が飛び散った。
「やべぇ、それじゃな。」
そう言って水神は必死の形相をしてなくなった扉をあっという間に突破して下水道に流れている水と一体化して消えてしまった。
「まぁぁてぇぇ!!」
「逃がしませんわ。」
そして、もはや天使と言うより青森のなまはげのような顔をした二人は水神を追って下水道にダイブ。凄い根性である。そのまま消えてしまい、時雨は再びその場に一人、残されたのであった。とりあえず、外を目指して全身、先程風神が消えた方向に歩くことにする。そして、彼が見たものは・・・
「何処だここ!!」
どこかの山奥である。と言うより、古くなった家が近くに見えて、更にその近くに一つの井戸がある。まるで恐怖映画のワンシーンのようだ。井戸のほうを向いていると白い手が出てきた。
「う、う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」
そんな時雨を見下ろす一つの影があった。
「・・・あとは二つか・・彼が犯していた四つの罪、『ロボット人形をばらばらにした罪』と『その昔、時雨君がおもらしした罪』は消えたからね。後、残っている罪は『うちわで女の子のスカートの中身を確認していた罪』と『火遊びした罪』だけだ。これが終われば『断末魔』もお終いか・・・。しかし、まぁ、あの時雨君もいろいろあったんだねぇ。」
運命の歯車は大きな音を立てて外れていた。神々は慌て、その補修をしたが間に合わなかった。そして、外れた歯車は世界を混乱させたのであった。
余談だが、時雨が自分の家にたどり着いたのは数日後だったらしい。
頑張ってみました。いや、何処が頑張ったかときかれたら困りますが・・・さて、今回は時雨の罪といった目標で書きました。どうでしたでしょうか?