ふたりの中にあるモノ
「・・・・私、・・・・が好き・・・」
よく聞き取れなかったから、僕は聞き返した。
愛海は僕を見て肩を落とす・・そして、
愛:「私・・・は、この町が好き」
この言葉から、離れたくないという気持ちが僕には伝わってきた・・・
・・・でも、無理なんだよな・・・
愛:「和くんは・・・この町・・・好き?」
愛海から訊かれた・・・ただ、僕は頷いた・・・
和:「僕も、好きだよ・・。・・・この町が、」
僕らは互いに顔を見合わせ、同時に笑った。
そして、再び僕らは、広大に広がる景色を見る・・・
・・・・・・・
・・・・
・・・少しして僕は、目を閉じる・・・
風が頬に伝わる・・・・
この感覚・・・普段は好きなのに、今はちょっと違う・・・
――――――――――
・・・・今日でお別れなんだな・・・愛海と・・・
・・・言うなら・・・きっと今が ・・・・いいかな?
・・・でも、今言って、愛海を迷わせる・・・困らせる訳にもいかないし・・・
――――――――――
僕は目を開けて、再び広がる風景を眺める・・・そして・・・愛海の横顔を盗み見る・・・
――――――― 彼女がここに・・・ それだけで、僕は・・・ ―――――――
今になって、その存在の意味が大きくなる・・・・
僕のここ・・・ そう、・・・・胸の奥で・・・
――――――やっぱり、僕は・・・彼女が好きなんだな―――――――
和樹は、下を向きながら、ほのかに笑っていた。
・・・・・・もう・・
和:「もう、行っちゃうんだな・・」
愛海は黙って頷く・・・
和:「キャンセルなんて、さすがに無理だよね・・・・?」
僕が苦笑いすると同時に、愛海もそうした。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
―――――少しの沈黙の後、
「・・・私ね・・・ずっと一緒だと思ってた・・・」
愛海が言いだした。
「・・ずっと一緒・・ううん、・・・ずっと・・・さいごまで、・・・いっしょがよかったな・・・」
その言葉に僕も答えた・・・
「うん・・・僕も・・・高校で・・・こんな風に離れ離れなんて・・・嫌だよ・・・大学まで・・・一緒がよかったな・・・」
僕が愛海を見ると、愛海は肩を落としていた・・・、
・・・なぜだろう?
「和くん・・・、・・・・ううん、そうだね・・・大学まで・・・いっしょ・・・が・・・よかったね・・」
僕らは、お互い目をそらして黙ってしまう・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・・・どうせ、・・・どうせ今日で離れ離れになってしまうのなら・・・
・・・・なら、・・・それなら伝えておいた方がいい・・・絶対に・・・、
僕の胸の中にある・・・想いを・・・愛海に・・・・、
―――――――――――― そして、今がきっと、その時だと思う・・・・!
・・・・・・
・・・・
・・・・・だから! 、