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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
7章.学院編Ⅴ・卒院へ

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7-12.『旧14号パーティ』



 転生三人組が同行したことで、アドルフたちのパーティは多くの学びを得た。


 おもいっきり背伸びしたお試しのぞき見ゴブリンズな第四層体験や、パーティ内の役割連携の指摘、そして荷物という重しから解放されるメリットの実感。


 だが、荷物番をローテーションするためにパーティ人数を増やし、新しいトラブルを呼び込んだら本末転倒。

 3年卒のエリートを目指す騎士科でもなければ、現状でも十分に卒院できる。


 とはいえオルレア、ジャルマリスの女の子の日問題もある。

 プールメンバーによりパーティ活動を安定させるのは悪い話ではない。


 いよいよ始まる3年次を直前に、アドルフ・パーティは前向きな悩みを抱えることになった。



   ☆



 夏季終わりの第十二週・火の曜日。


 アドルフたちに学びと悩みを生じさせて地上に戻ったその日の夕方に、オルガたちが転生三人組を訪ねてきた。


「フィアフたちのお守りだけで、どうせ疲れちゃいねぇだろ」

「俺らで第四層流してみねぇか」


 手際の良いことにユイとマリエルにも話を通し済みで、明日に集合、日程確認だとか。

 オルガのくせに妙だなと突っ込んでみれば、案の定、黒幕は別にいた。


「週末の、ジョゼたちの第二層の狩りに同行してやったらよ、『先輩たちはこんなところで遊んでいるべきではない』ってよ」

「つうても俺ら、いま大将もアズクルもいねぇじゃん。したらおめーらがいるじゃんかって」


 きっと、ウザがられたんだろうなと、転生三人組はジョゼフたちの心情を慮った。

 オルガたちを止めなかった件で、意趣返しされたのだろう。


 きちんとユイとマリエルにまで話を回させた段取りの良さに、さすがジョゼフ、生意気で腹黒そうなだけはあると評価を上げておく。


 きっとこんな調子で、パーティーのリーダー君もいい感じに操っているのだろう。

 頼もしいことである。


 翌日に臨時メンバーで集合し打ち合わせ。


 決行は風の曜日から無の曜日までの3泊4日。

 行き帰りともに通常ルートなので、中2日で第四層を流す感じでと決まる。


 朝一で組合中庭集合なと、オルガたちは元気いっぱい去っていった。

 転生三人組も消耗品の補充に、拠点で食べるスープ鍋の仕込みにと、それぞれに動き出す。


「ていうかマリエル、工房アトリエは?」

「ふふっ」


 ユイの問いかけに胸をそらすマリエル。その胸は発育途上にあった。


 ポーション製作に魔力を使うってことは、どれだけ魔力があるかが生産数に直結ということで。

 予定をはるかに超えてレベル13などと、鍛えすぎてしまったマリエル嬢、ノルマを楽々こなしてしまいわりと暇らしい。


「まあ、ほら、それにね」


 声にはしないが口を動かす。


(逃がせないでしょ)(そうね)


 仲はいいのよね、この二人。



   ☆



 第三層拠点までの間に、ざっくりと役割ロール分担と連携の確認を行った。


 ラッドが斥候。

 オルガ、グラム、ヨッシーの元養護院衆が前衛。

 セバス、ユイ、マリエルで後衛。


 見かけ上のバランスはいいのだが、急造パーティのため連携には難あり。

 なので無理はしないを徹底し、斥候による先行確認と敵の釣りだしで慎重に進める。


「戦闘では暴れるのに、意外とおとなしく従うのね?」

「ああ? 戦場いくさばじゃあ気合いれねーとなんねぇだろ」

「俺らバカだからよ、ドツキ合い以外はアタマのいいヤツに任せとけってな」


 マリエルに向かって、おめーよりもこいつらとの付き合いなげぇんだよとのたまわれている。


「おめーこそ、なかなか小憎らしいワザつかうじゃねーの」

「あら、どうも」


 【無属性魔法使い】マリエルは、小魔術キャントリップ階梯の【力弾フォース】を用い、攻勢タイミングで気勢をそらすといった敵集団のコントロールを行っている。


 ダメージソースにはならなくともできることはある。

 そう言って嫌がらせ(ハラスメント)の手法を伝授したのは、もちろんどこかのすけこましだ。


 ユイの護衛として、マリエルを極力戦闘に関わらせずに済ませることが旧14号パーティの基本方針。


 要らない子扱いではない、予備戦力の意味も理解はできる。

 だが、わかりやすい貢献のないことはマリエルのストレスでもあった。


 そこで、かねてより粉をかけてきたセバスの誘いに応じ、魔術士への道を踏み出したのだ。

 どういうわけか【自己認識ステータス】表示は【無属性魔法使い】だが、既成呪文と修得プロセスは魔術士と同じなので問題ない。


 薬剤師資格への見通しが立った後は、訓練にのめりこんだのも無理からぬことであったろう。


ボア、流す!」

「了解っ!」


 ヨッシーの声に応えるマリエル。


 突進力が怖い洞窟猪ケイブボアも、まともに受け止めずに壁面に誘導してやれば足が止まる。


「ツェアー、【発勁ドスコイ】!」


 そこに側面から【発勁】をぶちかましてやれば、体内をめちゃくちゃに破壊されて血の泡吹いて倒れるという寸法だ。


「ゴッツアンです」


 ……呪文、発動要件の一部になっちゃってるポイのよね。

 よく見ていたのがヨッシーの【発勁】なので、発動句が「ドスコイ(dose coins)」だし、残心めいた手刀を切りながらの「ゴッツ(gods)アン(and)です(death)」だし。


 ちなみに【自己認識ステータス】で【錬気術】が表示されているメンツのなかで、【発勁】が扱えるのは転生三人組とマリエルだけ。


 その全員が無属性魔力に適性があることから、【発勁】は【力弾フォース】の特殊なモノ説を補強している。



   ☆



 第四層を流しながら立ち寄った第五層へのゲートある小部屋で、休憩中のパーティに遭遇した。


 出入り口への警戒だけで済み、十分対処できる魔物だから、第六層よりマシなんだそうだ。


 第五層?

 休憩なんてもってのほか。


「俗にいう『第五層の壁』だな」


 壁の正体は、第五層の魔物がアンデッド系であること。

 ゴーストのように霊体しかないものには、物理障壁も物理打撃もほとんど効かない。


 休めない、倒せない。

 なので、無理は承知で聖水撒きながら第五層を突破、第六層に行くパーティが多数派になるんだそうだ。


「参考になります。あ、これはつまらないものですが」

「おう、わりぃな」


 美味しい干し肉と言い張れるビーフジャーキーを、数枚毎にタコ糸で括りなおしたものを一つかみ、情報料代わりに差し出しておいた。



   ☆



 オルガたちとの第四層流しは特に事もなく、口座やお財布に正銀貨4枚分くらいの追加で終わった。


 終わったのだが、買取窓口にて青銅級への昇格を案内された。


「卒院前にゃくれなかったのにか?」

「はい。卒院と同時にメンバーが分散するケースが多いため、学院生への案内は控えております」


 でも、旧14号パーティにしろオルガたちにしろ、急造臨時のパーティで第四層の産品を持ち帰れる実力を示した。

 であれば、青銅級に昇格させても問題ないだろうと。


 レベル12以上で、恒常的に第四層以降の産品を買取に出すのが昇格の目安。

 また、口には出さないが『信用』も勘案されるため、受付のお姉さんの目利きが試される案件でもある。


「青銅級に上がられますと、相談等を受け付ける専属の担当職員が配されます。

 こちらの支部ですと基本的な対応しかできませんので、本部で昇格手続きをお願いすることになります」


 転生三人組とユイ、マリエルは聴講生として学院に入れるので、しばらくは学院内の探索者組合支部を使う予定。

 買取は問題ないが、口座を本部に移すと入金や引き出しなどはちょっと手間になる。


 オルガたちは、今後はダンジョン脇の組合本部を利用することになる。

 こちらは、各種手続き用の仮学章を返還した後は、学院の敷地内に入るのも一手間になるから。


「口座なんかも本部にうつさねぇとなんねぇのか」

「騎士様とアズクルが戻ったら、まとめて手続きするしかねぇな」


 どのみち詳しい説明等も、祭週あけて秋季にはいってからになる。


 昇格の話はまた改めてということで解散した。



   ☆



 『はがね咆哮ほうこう』とか『静寂しじま鉄光てつびかり』とか、『復活する光のつるぎ』に、『荒鷲の翼』、『白銀しろがねの牙』などなど。


 今世のパーティ名の傾向は転生三人組も把握している。


 ジュスティーヌが、「ふわふわ」とか「しっとり」とか妙な単語を口走りながらむずむずしていた時期もある。

 ヴィオラが回収してくれて事なきを得たが。


 でも結局『旧14号パーティ』なのは、転生三人組が『14』という数字に奇妙な愛着を感じているからだ。


「まあ、しばらく14に行く気はないんだが」


 ラッドは軽く言い放つ。


 もともとは、とあるゲームブックにおける『死』を意味する選択肢、【14へ行け】。

 だが同時に、メタフィクション的構造として『死から14を経て、新生して冒険は続く』ことも意味する。


 自分たちは【14】を経て、新たな生命で冒険している。

 その思いが学院の『14号パーティ』にシンクロしてしまい、2年次にあがったときに『旧』をつけてパーティ名にしてしまった。


「転生前の界隈のネタなんて説明しようがないですからねえ」

「それな」


 そんなことを、新しい住処にて語りあってしまう夜であった。




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