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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
4章.学院編Ⅱ・半固定14号パーティ

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4-09.騎士科5年次ベンジャミン先輩



 学院が季末休業中の秋季第十一週・闇の曜日、一般寮の相談室。


「要するに焦っているんだろう?」


 それまでは話を聞く側にいた騎士科5年次ベンジャミンが総括した。


 今回の面談の発端となった騎士科のジュスティーヌ、そしてジュスティーヌに無理を言って混ぜてもらったマックスが苦笑いでほほを引きつらせる。

 ジュスティーヌの付き人的ポジションの魔術科ヴィオラはどこか達観中。


「ていうか、まだ秋季だぞ。1年次の4分の1でしかないんだぞ?」


 ジュスティーヌたちも例年の時系列段階、いわゆるロードマップは諸先輩方から聞き取ってはいる。


 しかし、そのロードマップ上ではほぼ1年かけて到達する第一層最奥の拠点での宿泊狩りを、すでに行い成果を出しているパーティが存在する。


 ええ、第14号パーティってやつらなんですけどね。


 常識から斜め上にカッ飛んでいると一部でウワサの転生三人組が主導する例のアレが、ジュスティーヌやマックスが悩んだり焦ったりしている原因なのは間違いない。


 騎士科の中には、庶民に遅れをとっていることにプライド的にボロボロなお方もいたりする。

 だが無茶をしては、今度は己が主演の死亡事案が発生してしまうかもしれない。


「騎士科で3年卒エリートを狙うのに、第一層で停滞しているようじゃ、とでも思いつめたか」

「……はい」


 騎士科に入れるのは加護ギフトで戦闘スキルを得た者であり、学費等の問題で、多くは地方領主家やその臣下からの出身者になる。


 探索科で行われるのが、いわばダンジョン鉱山労働者の現場管理者、下士官を育てる教育だとすれば、騎士科は正規兵を率いる士官教育。


 悪くとも街の衛視、領の正規兵。

 あわよくば、どこぞの貴族様に騎士として召し抱えられるかもしれない。


 エリートとされる3年卒には王家のくだされる一代騎士爵がほぼ確定だし、優秀評価の4年卒の一部が一代従士爵を賜る慣例もある。


「マックス君はまあわかる。俺も少し前までは4年卒で衛視狙う程度には野心があったからな」


 しかし、ジュスティーヌが一代騎士爵を欲するのは、ベンジャミンの理解の範疇をこえる。


 女性貴人護衛などの関係で、騎士科には女子も入ってくる。

 だが彼女たちは爵位に対する貪欲さはなく、4~5年で卒院すればいいという空気感を持つ。


 学院生時代がただしく猶予期間モラトリアムであることを理解していればいるほど、そういう傾向になる。


「ま、ジュスティーヌ嬢もマックス君も、3年卒のエリートを目指すのはいい」


 個々人に、それぞれの事情がある。

 言いにくいこともある。


「最も大事なのは、騎士爵を得た後のことだ。卒院後に何をするのか、目標はあるのかい?」


 卒院後について具体的に考えていなかったのか、あるいはうまく言葉にまとめられなかったのか、ジュスティーヌとマックスは言葉に詰まった。



   ☆



 ジュスティーヌたちが考えをまとめる時間をとるため、あるいは経験談、貴重な生の声を聞かせて今後の参考にさせるため。

 セバスはベン兄さんの現況に話を振った。


「5年次の探索科の連中ってのは、おおむねレベルは足りているんだ」


 実家が学費等を出している場合は3年ないし4年卒が普通。

 生活費のためのダンジョン・アタックが不要で、その分を講座単位に目配りできるからだ。


 探索科生の順当な卒院は、現場ダンジョンで勤労する探索者としてがっつり納税して欲しい(徴税する)国策とも一致する。


 逆に、自分で学費や生活費を稼がないといけない人は、ダンジョン籠りの結果、レベルは足りても単位が足りない傾向。

 探索科に滞留している5・6年次には、そういう人が多い。


 探索科寮長の、おひげを育成中のヴィルハイムもその一人。


「なので、今の俺とはかみ合わない。ちなみに騎士科でも同じ事は起こりうるぞ。こっちは必須単位が多いからな」


 騎士科の場合、レベル12という厳しい要件クリアに時間を取られて単位不足というパターン。

 ただしこの場合は、あとは単位を揃えるだけなので、パーティ編成の悩みからは解放されている。


 だから、1年次は貪欲に単位を押さえ、2年次以降の狩りに備えるべきだと、ロードマップは過去の経験の積み重ねなのだ。


「なる、ほど」

「まず足元を固めろと」


 現在のベン兄さんのパーティは、レベル上げを目指すメンバーで構成されている。

 ベン兄さんと同じくレベル12を目指す騎士科5年次に、レベル10を目指す魔術科4年次、探索科の4年次と5年次、レベル8を目指す官吏科4年次の計6人。


「レベルのバラツキはあるが、目的が一致しているのが強みだな」


 狩場は第三層『アンブッシュフォレスト』。

 第四層は、個人戦力も相応に必要になるため無理と判断。


「第三層で滞在するには、荷物はどのくらいになりますか?」

「全部持ち込みだと、重いのは水で、嵩張るのが寝具。ほかにメシと松明やランタン油などなど、出発時は行商人めいてるぞ」


 荷物を持ったまま戦うのはキツイので、拠点の預かり屋に託すことになる。


「ボッタクリだが、場所柄しょうがない。ある程度の信用はあるが、預けた荷物が消えたなんて話もよく聞く」


 「別の客が間違った(持って行った)・こっちの責任ではない」などは典型的な手法。

 もちろん、そんな預かり屋は、いつの間にか消えている。


「信用できる相手を見付けるってのは、パーティーメンバー以外でも、それこそ日常的に必要になるんだ」

「それは、そうなんでしょうね」


 口コミが主流の社会だからね。

 誰それさんの紹介だから丁寧に対応する、なんてのが当たり前。


「本日は、貴重なお話をありがとうございました。焦りと、根本的な目標の具体化のご指摘、しかと承りました」

「先輩に貴重なお時間をいただき感謝いたします。改めて考え、また自分を見つめなおす所存です」


 ジュスティーヌもマックスも公的な言葉遣いになっているけれど、1年次のペーペーが5年次の先輩を相手にしたのだから、これくらいはね。



   ☆



 第十二週は前半の光から水の曜日で狩りをしたが、いつも通りで特筆すべきことはなし。


 週の後ろでは冬季前半分の履修登録パズルゲーム。


 といっても、前回の時間割をベースに各自で修正・調整、受ける講座を決めて提出するだけ。

 メンバーの強い要望により半固定パーティ継続のため、スケジュールを確定できることの強みを存分に生かすカタチになる。


 案の定というか、オルガたちも押しかけてきた。


 懸念の、稼ぎのための狩りは秋季後半の配分でクリアできたらしい。

 講座キツイというので気持ち減らし、その時間を剣術と棒杖術の訓練にした。


「ハナシぃ聞いてると眠くなってなあ……」

「俺らバカだからな、助かるぜ」

「またよろしくな!」


 単位セレクトも、講座枠にした時間でやっているモノを適当に取るスタイルが間違っているともいえない。


 なおオルガたち経由で流出した時間割表は、ひな形・フレームワークとして探索科寮内でじんわり広がっているらしい。



   ☆



 ユイが加護ギフトのポン付けで得た光属性魔術は【小治癒ライト・ヒール】。

 ちょっとした傷ならふさげる癒しの技だ。


「武術の訓練のけが人か、ダンジョンで顔に引っかき傷つけられたときにしか使ってないですね」

「『癒し手(ヒーラー)が活躍するパーティなんて碌なもんじゃない』が僕たちの持論ですから。いざという時は頼りにしていますが」


 それはそうと、ユイも頷く。

 霊格レベルの低いうちはMPも少なく、1日数回の使用で魔力切れの諸症状に襲われるのだから、あてにされても困る。


 その【小治癒ライト・ヒール】と同じ初等魔術階梯にある【照光ライト】の座学がすみ、実践練習に進んだということで、セバスが休業中の指導を買って出た。


 セバスが見本として示すのは光魔法の【小光プチ・ライト】。ただし応用版。

 光魔術だと一般魔術あるいは小魔術キャントリップ階梯に同じ呪文が存在する。


 光魔術の【小光プチ・ライト】と【照光ライト】の違いは、属する階梯と消費MP由来と考えられる効果時間。

 つまり、呪文発動までの根幹は同じと思っていい。


「このカタチと色合いをイメージしてもらいたいんです」

「実習で先生に見せていただいたものとは、大分違うんですが?」


 俗にいう天使の輪(エンジェルハイロゥ)的な円環で、昼白色よりも昼光色に近い6000ケルビン。

 形状、明るさ、色合いにはセバスの好みがそのまま反映されている。


「僕は【生活魔法】だけど、魔法も魔術もイメージ大事」

「ええ、まあ。そう教わりました」


 講師や師匠が手本を見せ、それを真似する教導スタイルが定着しているのは、それがイメージ固めに手っ取り早いから。

 だからこうしてゲンブツを見せることで、イメージを上書きしてしまう。


「輪っかなのは、単球型よりも影ができにくいからです」

「ほぇ~」


 理屈っぽいセバスはともかく、ユイちゃんはやればできる子なのです。


 季末休業中に【照光ライト】を安定して発動できるようになりました。

 ついでに【小光プチ・ライト】も。




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