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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
3章.学院編Ⅰ・学院パーティ編成

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3-05.自己紹介



 学院パーティの編成発表があり、転生三人組は集合場所に指定された教室でメンバーたちと合流した。


 講師たちが制度の主旨や流れを説明。


「今日はパーティ編成の説明と打ち合わせの日だ。しっかし、おまえら本当に優秀だな」


 探索科、騎士科、魔術科で戦術部。

 戦術部の一年次は、一般の授業が学院パーティ編成となるべく重ならないように配置されている。


 これが職工部に属する官吏科などは、原則的には教育課程カリキュラムで学院パーティ編成を考慮しない。


「我々が来た時に、すでにパーティで固まっていたのは驚いた」

「説明途中で教鞭振るわないで済んだのも初めてだ」


 指示に従う。黙って話を聞く。

 教えを受ける姿勢として当たり前に思えるのは、すでに訓練(しつけ)済みの証である。


 ラッドがメンバーに呼びかけて以降、アレを真似すればいいのかと、教室内の他者が彼らを手本にしたことが今回の勝因。


「あとは、各パーティで自己紹介やらリーダー決めやら、必要なことを話し合うように」

「初回だから勝手がわからんだろうが、なに、失敗も勉強のうちだ」


 質問や相談がある場合、昼頃までは教務室にいると告げ、講師たちは去っていった。



   ☆



 語り手が去り静かになった教室に、隣近所から怒声罵声に打鞭音だべんおんが聞こえてくる。


「……あー、14号パーティのラドクリフだ。ココで4パーティが打ち合わせはちょっときついなって思うんだが、どうだ?」


 前世日本での標準的な学校の教室に比べると、面積で半分ほど。

 4パーティ24人の児童を収めることはできても、喧々諤々なグループ作業にはちょっと厳しい。


 ラッドの呼びかけに、それぞれの塊内で互いの顔色やしぐさをうかがう高度な心理戦が始まる。


 ややあって、身なりの整った少年が手を挙げて発言した。


「16号パーティのクリスティアン。たしかにココはちょっとね」


 苦笑いの背景に、近隣からの騒音がエンドレスで流れている。


「天気もいいし、16号パーティはグラウンドに移動するよ。じゃ、今日のところはこれで失礼」


 続いて学内マップに不安があるので残りたいと言い出すパーティと、もう1パーティも移動してバラケると再集合が面倒と。


「んじゃ、うちがどっかいくわ」


 ラッドたちの14号パーティは、素敵な環境音を避け、安住の地を求めて旅立った。



   ☆



 学院内で三人が知っていて、かつ打ち合わせできそうな場所など限られる。


 クリスティアンの16号パーティのようにグラウンドに出れば実技の披露も可能だが、正直、第一層はどうとでもなるとの判断から、まずは親睦を優先した。


 探索科寮の食堂の隅っこのテーブルに陣取る。


 食堂備え付けの木のコップに部屋からとってきたピッチャーでどこかの天然水を注ぎ、同じくとってきた木皿に手羽先を添える。

 抜き取った、あるいはしゃぶり終えた骨を出す用の小皿も配膳する。


 食堂でも『お湯』は有料だし食事時には提供していない。

 空いているかまどで燃料費を使って沸かすものと考えれば順当だし、主に身体を拭く時の贅沢として用いられる。


 寮内の貧富の格差(ヒエラルキー)は、冬場に露見するのだ。


「え、食べていいの?」


 教室でヴィオレットと名乗った少女の頭部で猫耳がピクピク揺れた。


「自分たちのパーティにあんたらを迎えたって認識なんだわ。はじめくらい見栄をはる」

「この分だとお昼をまたぐでしょうし、間食としてつまみながらやっていきましょう」


 朝夕の一日二食を基本とし、懐事情に余裕があれば合間合間に間食という社会です。


「ふーん。ま、下心だとしても悪くないわよ」

「あら、おいしい」

「知らないタレですが、食欲を誘うよい香りが嗅覚を刺激します。

 サイズはやや小ぶりですが、意外に食べ応えがあります。

 しかもこれは揚げていますね。表面のパリパリ感と柔らかな肉の感触、噛むほどに旨味があふれもう止まりません。

 肉の邪魔をしない癖のない油、オリーブオイルではないですし、ゴマの風味は荏胡麻えごま油……いえ、ベースは菜種なたね油にアクセントで配合ですね。

 そしてこれは何でしょう。ほのかにピリリとするスパイスも味わいを引き締めるいい仕事をしています。

 もしや胡椒!? いやまさか……でも」


「ちょっと、ジュスティーヌ様!?」

「はっ」


 そして骨しか残らなかった。


「……えっと、あんたたちって顔なじみなの?」


 ヴィオレットの頭の上では、気恥ずかしそうに耳が伏せていた。


 獣の耳と尻尾をもつ人、獣耳の人と呼ばれ、ただ耳の人に比べて数は少ない。

 なお、れっきとした人間であり、獣人という種ではない。


「僕たちは、夏の【祝福の儀】で気分悪くなって座り込んだ同士でして。そこから意気投合して探索者パーティへ」

「甘瓜一つで買収された、未来の英雄セバス様の取り巻き一号とは俺のことさ」


 そういうカバーストリーである。


 社会的階層が違う三人が、出会い、パーティを組む理由を、まああり得るかなという程度に納得させるためのもの。

 【真偽判定】的な加護ギフト持ちには、「買収されて云々」のところが嘘とわかるが、そこは別にどうでもいいよねと放置した。



   ☆



「改めて自己紹介からいこう。自分はラドクリフ、呼び名はラッド。親父は職人、探索科だ」

「俺はヨルグ。呼び名はヨッシー。養護院出身で探索科」

「僕はセバスチャン。この二人にはセバスと呼ばれています。この街の官吏の家の出で、幼年科から探索科に」


 採用面接的な、質問者、確認者、記録者の役割を分担はしない。

 もっと気楽な、親睦の呼び水になーれ的な、まず自分たちからのアプローチ。


「私はジュスティーヌです。父親は貴族ですけれど、私は平民落ち確定しているので家名はなしで、敬称も不要です」

「あたしはほら、立場上様付けだけど、本当に気にしないで大丈夫だから」


 隣でヴィオレットが補足する。


「それと、ごちそうさまでした。とても美味しかったです」


 ほぼオレンジな明るい小麦色のストレートロングに青い目。

 貴族層出身ということもあって所作に気品なども感じるのだが、さきほど食レポを披露してくれた人だと思うと、その、ね。


「えーと、ジュスティーヌさんは騎士科ということでしたよね。このパーティ、ラッドをリーダーに予定していたんですが、代わりましょうか?」

「あ、いいえ。私そういう経験がないので、そちらのパーティにお邪魔するというかたちでお願いします」

「そうね。初回の、お試しのパーティだもの、そこにこだわってもねえ」


 ジュスティーヌとヴィオレットは王都生まれの王都育ちだそうだ。

 わざわざ地方都市アクヤの学院に来た理由は、平民落ちだし、習っていた剣術をどこまで生かせるか試したかったとのこと。


「ただ、私のような他所よそから来た人って、騎士科でも浮いてるようで」

「ああ、あそこは地元の騎士家の子とか、加護ギフトで戦闘スキル得て街の衛視狙いの人なんかが集まるそうですから」


 セバスの兄のベンジャミンも、当初は衛視狙い。

 宮仕えはあわなそうと路線変更し、今では『無理をしない探索者』をモットーに掲げている。


「平民落ちっても、黙ってればテキトーな相手に嫁がされるお幸せな人生を送れたんでしょうけど」


 栄達して一代爵位でも貰ってくれれば、あたしも箔が付くし、侍従にしてくれてもいいのよと。

 敬意はともかく遠慮がないのは、ジュスティーヌの望む友人関係に応えているのだとか。


 そんなヴィオレットはスミレを意味する名の通り、濃いスミレ色の髪をおさげにしている。


「ジュスティーヌ様の護衛兼監視役のヴィオレット。ヴィオラでいいわよ。魔術科なのは言ったわよね。といってもこのレベルじゃ使い物にならないわ」

「おうよ。なんつうか、そのまんまな名前なのな」


 女の子に花の名をつけるのは庶民層でのど定番。

 女神の天秤、転じて正義を意味するジュスティンあるいはジュスティティアが由来のジュスティーヌは、平民が付ける名前としてはどうなのという塩梅。


「女の名前なんてこんなものでしょう。むしろ、そっちの子が気になるわよ」

「あわわわわわたしですか」


 おかっぱピンクの少女は、青い目を大きく見開いて怯えの色を見せていた。


「花の名前じゃないのは珍しいなって」

「あ、ええと、わたしは母が針子で、そっちの業界で言うイコニアを強調でユイコニア、なんだそうです」


 お母さん、華やかな、業界のリーダーくらいの意図だったみたいですが、定番を外すと周りから浮くのです。


「業界用語は知らないわぁ……」

「ユイって呼んでください。魔術科です。光魔術士で、【小治癒ライト・ヒール】が使えます」


 ユイの必死アピール臭に、5人は、いじめるつもりはないんだが、緊張をほぐすのが先だな、フォローしてあげないとまずいかななど、それぞれに思いを巡らすのであった。




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