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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
2章.ニュービー探索者編

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2-11.入寮のご相談



 第十週の無の曜日、転生三人組は学院に来ていた。


「昼過ぎの約束ですが、遅れるわけにはいかないのでしばらく待つことになります」

「時計ないとルーズだもんな」


 場所は探索科寮の食堂。

 前世からの性分ゆえに隅っこのテーブルにつき、待ち時間で話し合いを進める。


「俺の【個人倉庫】、変化なし。ただ、魔力的にちょっと余裕が増えている、ような気がする」

「MP10が11や12になった感じ? 僕もそんな感じですから、地道に成長しているってことかな」


 【自己認識ステータス】でわかる霊格レベル、1の次は2と整数部分のみ。


 この表示上のレベルが上がったところで、急に筋肉ムキムキになったり頭の回転が上がったりはしない。

 ゲーム風に言えば筋力や反応、MPやLPなどの能力値的なものは地道に成長する。


 ただ、比較的わかりやすい体力・筋力・持久力みたいなものと違い、MPやLPは日々の積み重ねの効果、成長を実感できるタイミングは少ない。

 なんとなく、余力が増えてきているかな、という感じ。


「少しずつでも成長しているならなによりだ。自分の【通信販売】も変化はない」


 ヨッシーの次はラッドの現況報告。


 『入金/買取』でのポイント変換も例のキノコ以外はうま味なし。

 ギフトの成長条件が『回数』だった場合に備え、日々『入金/買取』回数をこなすのに利用している採掘ガラなどは1ポイント未満。


「ちなみに、手に持った分を一括りにまとめてポイント変換できるようだ。あと、まとめた容器ごとも」

「小技ってヤツなのかな」


 キノコ錬金でポイント富豪になったこともあり、ラッドは本命の取引累積額を積み上げることを第一とする。


 つまり、ダンジョン内でシリアルバー(チョコ味)や手羽先を食し水を飲む。スライムを見かけたらリサイクルできないゴミをシュー!超エキサイティング?


 その効果はヨッシーも絶賛だ。


「動物性たんぱくに脂質にビタミン、栄養充足って感じ。もうやめられない」


 本日も、手土産として木皿に手羽先をのせて持ち込んでいる。


「僕の【生活魔法】は、記録のある呪文の再現と、光属性の魔法の応用を狙っているところです」


 セバスの適正相性的には火属性が最優なのだが、安全性の面で光属性をチョイス。

 ただし、MP総量の問題で試行錯誤が制限されるため、目立った進展はない。


「松明の代わりにならない?」

「MP的に2時間分くらいかなあ。ところでこの段階で魔法使いを誇示するような振る舞いって、どう?」


「目を付けられそう」

「やめよう」


 そういうことになった。


 魔法使いTAI計画(プロジェクト)も進展なし。


「瞑想しながら魔力を動かす訓練しか思いつかないんですよ」

「魔力を動かすのがこんなに難しいとは」


 うなだれるヨッシーだが、加護ギフトのついでとはいえ魔力を認識できるかどうかの壁を越えられていることを喜ぼうね。


 魔力操作で体外に魔力を出せるようになれば、具体的な魔法を試す段階なんですがとセバスはヨッシーのお腹をなでた。


「【魔力感知センス・マジック】……ほんのり感じる無属性……闇属性の方が強い?」

「闇属性! いけませんね、これは」

「大丈夫? 眼帯つくる? 包帯まいちゃう?」


 たぷたぷぅ。


「いやさすがにそれは、恥ずかしいかなって」


 前世で黒革の指ぬきグローブとか妙に幅広の金属パーツ多めのベルトとかしていた時期もあるヨッシーだが、怪我もしていないのに眼帯や包帯は音楽性が違うらしい。


「自分は?」

「ラッドは……無属性、強いていえば風属性かな?」


 魔力の色合いをなんとなく感知するだけの簡易診断とはいえ、属性相性の診断は高額の水晶鑑定とバッティングするわけで、利権怖いわぁと三人は口をつぐんだ。



   ☆



「セバスチャン君だよね、待たせちまったかな」


 変声期をすぎてやや低い声。

 生え始めたヒゲを大事に育てている青年が、探索科寮の食堂扉口で片手を挙げた。


 待ち人の到来に僕がセバスチャンですと席を立って挨拶し、続いてラドクリフ、ヨルグと紹介。


「俺はヴィルハイム。探索科在籍で、ここの寮長もしている」

「こちら、お口に合えばよいのですが」


 手土産として持ち込んだ手羽先を木皿ごと差し出す。

 人間社会の潤滑油は、世界が変わろうと変わらない。


「お、気を遣わせちまったか。わるいなあ」


 ヴィルハイム寮長は三人と向き合うように席に着き、さっそく一本つまんでかぶりついた。


「うまいやん!」


 まあね。

 肉質から香辛料や調味料、すべて前世日本基準で調理されている手羽先だからね。


「庶務課で、部屋割りなどは寮長に一任されていると聞き、ご相談がありお時間いただきました」

「え、なにこれうまいやん!」


 6本入れていた木皿はあっという間に空になり、名残惜しそうに骨をしゃぶるちょぼちょぼヒゲの青年が出現した。


「なあ、どこで買ったんだ?」

「ああいえ、こっちのラドクリフが今日のために特別に用意したものなので……」


 嘘ではないよ。

 どこに【嘘発見】とか【真偽判定】とかいうギフト持ちがいるかもしれないと考えると、嘘は極力つかない方針の三人なので。


 ちょぼヒゲはひとしきりブツブツと呟いたのち、残念そうに骨をしゃぶるのをやめた。


「部屋割りってもな、新入りに関しちゃ名簿をもとに空き部屋に適当に割り振るだけなんだ。面倒なのは年次進んでからさ」


 今日だって、卒院者の明け渡しに滞留者の移動、寮長補や当事者も交えて朝から相談会議だと肩をすくめる。


 学院では季毎に中休みと称される第六週と、季末休業の第十一週・第十二週、授業は休みとなる。


 といって教員や施設が休めるわけではない。

 特に学院としての年度切り替えが行われる夏季と秋季の間は、各寮において卒院者を送り出し、滞留者を再配置し、新入生の受け入れが行われ、かなりごたつく時期でもある。


「3人で同室希望な? 本来4人部屋なんで、冬季で入ってくるのを引き受けてもらうことになるかもだが、そこは勘弁しろよ」


 一般寮では同室者の年次をばらけさせて部屋内の序列を作り、先輩に寮生活、ひいては学院生活の教師役をやらせるが、探索科寮では秋季の新入生のみで部屋を割り当てる。


 これは、パーティメンバーが固定化するのに伴い部屋の移動があることを前提にしているため。


 探索者活動が主となる探索科だからこその運営方針であり、一般寮と探索科寮の、どちらのやり方がよいというものではない。


 ラッドが木皿を回収すると、空いたスペースに見取り図が広げられた。


 部屋を示され、水の曜日までには空けとくが掃除は自分たちで、前住人の残したものは処分してよし、女子寮は男子禁制等々。

 詳しくは読んで把握しておくようにと、数枚の薄板を綴じた『寮生活の手引き』を渡される。


「幼年科から何人かくるが、一緒でなくてよかったのか?」

「あー、同クラスだとリンツ君なんですが、彼は商家の専属探索者だそうで」


 当のリンツにしても「同じ幼年科ってもなあ、セブは役人閥で俺は商家閥じゃん?」と、将来設計が異なるのでセバスとパーティを組む気はない。

 ならば、部屋を同じにするメリットはない。


「役人閥でもぶら下がり組と地生え組は没交渉だもんなあ」


 子供社会でも、親や家の社会階層に応じたグループができてしまうもの。


 自身も覚えがあるのだろう。

 寮長はまばらなあごヒゲをさすった。




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