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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
2章.ニュービー探索者編

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2-05.スケジューリング



 探索者としてはじめての報酬を手にした翌日、夏季第四週の水の曜日。


 いつもの木陰に6人の少年が集った。


 セバスは昨日に引き続き学院を休んで参加。

 ベンジャミン兄さんは現状、忙しくはないが暇でもないお方ゆえ不参加。


 というか昨日は、お兄ちゃんは心配性を発揮してしまっただけなので。


 おかげでいろいろな意味ですごく助かったのだが、そのありがたさを真に理解できたのは転生三人組のみ。

 道中のトークにしても、オルガたちはへーそうなんだで終わってしまっている。


 情報の価値はともかく、このガキどもには後ろ盾がいるから手を出すなよ的な、こう、微妙な人間関係というか仁義的なメンツの切り合いというか。


 むしろオルガたちこそ、そういう場の空気や人の動きに悪意の有無、ヤクザですらないチンピラの存在なんかに敏感でないとまずいんでないかなあと、セバス的に若干の不満がある。


「さすがに疲れたな。気疲れも身体のほうも、一晩じゃ抜けきらない感じだ」

「ひょろがりは軟弱だな。まあ、俺っちも足が痛いっちゃ痛い」


 ラッドに憎まれ口を叩きつつも浮かない顔のアズクル。


「どーしたよ、俺らから元気とったら何も残らねーぞ」

「いや、初めてのダンジョン稼ぎがよ、魔物相手じゃなくて荷物運びってどうなんだ」

「カネはカネだぞ? あぶねーこともなく稼げたならそれでいいじゃないか」


 特徴のないグラムは割り切っているようだが、それはそれとしてと、アズクルは力こぶを示しながらいつになく饒舌になる。


「探索者ってのはよう、もっとこう、それこそベンジャミンのあにさんみたいに切った張ったな男の仕事じゃないのかよ」


 英雄物語に代表される華々しい活躍に惹かれ憧れるのは、当然のこと。


 荷運びや兵站、滞りない事務などを評価するのは玄人という風潮、あると思います。



   ☆



 音頭を取るのはラッド。

 転生三人組のリーダー格でもあり、話し合いの場で議長を務めることが自分の仕事と自認もしている。


「自分とヨッシーは明日の風の曜日、さらに闇の曜日も荷運びを請ける」


 週3で小銅貨18枚。

 今週、夏季第四週から第十週までの7週間で126枚。寮費までは届かないが、学費相当の72枚はクリアできる。


「もちろん消耗品や靴代なんかを引く前の数字だし、予定通りにいくかは……」

「ちょっと待てよ! 学費だけなら荷運びで稼げるって、お前そう言ってるのかよ」


 驚かれても困るという思いと、まあそうだよねの気持ちがないまぜになったラッドは、とりあえず角刈り頭をかいた。


 だいたいオルガたちは昨日、養護院に帰還後、ダンジョンの稼ぎだぜと小銭を見せびらかして、不安で不安でたまらなくなった院長に「私が預かる」を発動させたツワモノどもである。


 勤労の成果をとりあげられると勘違いし激怒したオルガたちとのひと悶着は、院長の頭皮に少なからぬダメージを与えていた。


 一方で、巻き込まれたヨッシーは、容量の小さい【個人倉庫】に入りきらなくなる前に預かってもらえて助かったてなもんである。


 前世の記憶に照らしてみた院長への信頼はそれなりにあるが、「ハゲがちょろまかすようならり返せばいいだろ」とオルガたちをなだめたのが昨晩のエピソード。


「だがよう、魔物と戦ってこその探索者だろ」

「荷運びある日は、獲物奪い合う相手が減るって考えりゃ、むしろ狩りこそねらい目?」


 ぐずるアズクルと、腕を組んで考え込んでいるオルガ。


 知能指数(IQ)が10違うとストレスがひどく、20違うと会話が通じない。

 それを記憶上の事実として知っているセバスは、会話が成立することに安堵していた。


 むしろ、因果関係を考えて意見を言えるのだから大したものだ。

 前世記憶ブーストがなければ、自分たちもオルガたちを笑えないレベルであったはずだし。


「昨日見た通り、僕らコミで20人くらい。同世代で探索者になった人数考えたら少なすぎます」

「あー……そっか。そうだよなあ。この街だけじゃないもんなあ」


 探索者組合の掲示板、文盲もんもう足切り説もあながちないわけではない。


 『読めない』

 はなから興味を抱かず、掲示板を無視するには十分すぎる理由である。


「カネはあって困るもんじゃねえ」


 特徴のないグラムの反論しようのない一言で、オルガたちも荷運び参加を承諾。



   ☆



「じゃあ、さっそく申し込んでこないと」

「まあ待て、まだ話しがある」


 別に転生三人組はオルガたちを無視しても構わないのだが、それこそ縁というもの。


 無条件のご奉仕というわけでもない。

 学院に誘った以上は学費分のサポートくらいはするかのセバスはじめ、養護院の仲間のヨッシーも、パーティメンバー候補との付き合い方・関わり方のサンプルとして試しているラッドのご同類だ。


「荷運びのない日のうち、水の曜日と無の曜日を狩りの日としたい」


 水の曜日は5人。学院休みの無の曜日はセバスもINで6人。


「ん? 光の曜日と土の曜日はどーすんだ?」

「休む。休まないと続かない」


「貧弱なこと言ってんじゃねえよ」

「いやあ足痛いし、慣れるまで休み休みってのは間違ってないだろ」


 ヨッシーのフォローもあって、まあそういうことならとアズクルも矛を収める。


 消耗品代他を考えず、学費と寮費のみなら小銅貨144枚。

 7週間の荷運び報酬126枚を引くと、狩りで確保するのは18枚でいいとなる。


 生活費他も見込んだり、稼ぎの三分の一くらいは消耗品なりに消えるとすれば小銅貨400枚以上が理想。


 あくまで理想であって、計算上、一人頭週40枚を2回の狩りで確保は無理目だなと転生組は考えているが、オルガたちは気楽というか、そこまで考えていない。


「狩りでどんだけ積み上げられるか、楽しみじゃねえか」

「カネはあって困るもんじゃねえ」


 グラム君、そればっかり。



   ☆



「じゃ、探索者組合まで申し込みに……」

「だから待てってば」


 引き続きパーティとしての共有費、松明たいまつなんかの消耗品代を別枠で云々を説明するラッドだったが、オルガとアズクルが納得しない。


「ケガしても傷薬代も自分持ち。そういうことでいいんですね?」

「いいもなにも、ケガと弁当自分持ちってあたりまえじゃね?」


 良くも悪くも自己責任との認識は、当世の常識としておかしくはない。

 むしろ現時点でパーティ資金などと考えるほうが先走りすぎている。


「じゃあ、都度頭割りで清算。端数は自分預かり次回清算にまとめでどうよ」


 魔石(小)の買取価格、小銅貨1枚を崩しても粒銅6枚。セバス抜きの5人だと割り切れない。


「松明やらは各自が自前で用意すること。少なくとも、オルガたち三人で常に1本は灯し続ける。こっちも三人で1本は必ず灯し続ける」

「明かりは欲しいもんなぁ。わかったぜ」


「けどよオルガ、俺ら三人で松明1本て誰がカネ出すんだ?」

「んなもん全員5~6本持ち歩いて、順繰りに火ぃつけりゃいいだろ」


 オルガの思い付きだったが転生組も同意。

 簡単で公平だし、確実に予備があるのは安心材料だ。


「あのよぉ、荷運びの時は5人で順繰りに。1本のみでいいんじゃね?」


 これも同意。荷運び時なら、狩りほどに視界を確保しなくともなんとかなる。


「じゃ、申し込みと松明の用意に行こうぜ」


 アズクル、三度目の正直がとおり、事前打ち合わせは終了。




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