【14へ行け】
『トモダチと一緒にファンタジーかつゲームっぽいわかりやすさのある異世界に転生でチートでスローなライフをしたい』
ヨッシーの願いは(だいたい)すべてかなえられ、剣と魔法のファンタジーな今世に道連れ転生、ラッドにセバスの悪友三人そろいぶみ。
だが、都合のいいだけの話などありはしない。旨い話には裏があるというではないか。
10歳の祝福の儀の際に、『白い部屋』でこの世界の管理者の配下を名乗る『まばゆい人影』から、諸々の対価として、三人が獲得する霊格、言い換えれば経験値を天引き徴収することを告げられる。
レベル100で完済だが、達成できなければペナルティも確約だ。
三人は、いわば借金的なものの返済を至上命題として、探索者稼業に身を投じた。
仲間たちとのダンジョン・アタック20年、ついにレベル100に到達。
功成りし者、領地貴族の一員として、田舎でスローでセカンドなライフがすぐそこにある。
☆
三人組、30歳の秋。
王都で行われる秋の叙勲式典に、男爵に陞爵するジュスティーヌは絶対に参列しなければならない。
地位に見合う護衛などの同行者も必要だ。
しかしまた、探索者クランの業務や、子どもたちの進学に卒院対応など、アクヤの街に残る人員も必須。
ジュスティーヌの侍女のウィスタリアに侍女枠のヴィオラは当然として、ボーヴァルディ家の執事さんとメイドさんから合計3人。
そこに転生三人組と、比較的手すきなアドルフにフィアフを加え、総勢で11人の王都派遣団となった。
「よくよく考えると、男爵って面倒です。今回だけでなく、この先も王都の社交にも出ないといけなくなるし」
「しょうがないじゃない。騎士爵には広すぎる封土、横やりがないとも限らないんだし」
ジュスティーヌをヴィオラがたしなめる。
開発し封じられた領地は、広さだけみれば確かに男爵クラスの貫目が欲しい。
実際に使える土地の広さや実入りを……それでも、いくつかの騎士爵家で分割するのが妥当でもある。
アクヤの街の代官様も後任予定の代官補様とともに王都参詣に同行し、正式に職を辞す。
王都では、今回の陞爵にもお力添えをいただいた、クラン『アスタリスク』の後ろ盾でもあるコンステラリス伯爵家とも面談の機会を持つ。
以下、各所および有力者へのご挨拶行脚。
「ダンジョンで魔物相手って、ラクな仕事だったんですねえ」
「それを言っちゃあおしまいよ」
ヴィオラお姉ちゃんのツッコミ炸裂だ。
☆
探索者業界では、いかなクラン、パーティも、結局、中の人次第だといわれる。
『終末の角笛の護り手』は、現在のアクヤの街で知らぬ者のない、超有名攻略級トップクラン。
『双剣の騎士』マクシミリアン・シル・ニヤーストラ様、30歳の男盛り。イケメンからイケオジに、今が一番脂ののった時期。
「随分と差が開いてしまった。だが、君たちという先例がなければ、一代騎士爵ですら得られなかったろう」
ワケありの生まれの娘が、ついに男爵位にまでのぼった。
一代の立身出世物語を近くで目にしてきたマックスは、嫉妬心を制御して賛辞を贈る。
そういうマックスが大好きな転生三人組は、貴重な魔道具などの献上で叙爵を狙うというルートを詳細に説明した。
マックスのクランにも、プレス侯爵という強力な後ろ盾がある。
第八層でドロップを狙う攻略クラン、ブツのあてがないとはいわない。
1年後、マックスは永代の騎士爵に無事コンバート。
『日焼け肌』オルガや『筋肉で語る男』アズクルも従士爵を賜った。
「俺らが貴族さまたぁよお、ガキの夢でも見やしなかったなあ」
「土地持ちって面倒なんだろ? なら大将の被官ってヤツのママでいいよな」
野望の果てはまだ引き上げられると、腹黒双子のジョゼフとカールも黒い笑みを浮かべている。
そういえば、ベンジャミン兄さんは探索者引退後、クラン『終末の角笛の護り手』の事務方として働いている。
働かなくても食べていける貯えはあるのだが、部屋でゴロゴロしているとお嫁さんに蹴られるのだそうだ。
☆
子どもたちにとって、クランのコミュニティの中だと当たり前のことが、外の世界、学院では当たり前でなかったりする。
学院幼年科、そして本科。
新たな刺激の中でカルチャーショックを受けながら、子どもたちは成長していた。
もしかして、親たちはとんでもないのかもしれないと思い始めたきっかけはさまざま。
当たり前にダンジョン最深部の話をする。
騎士科のロードマップ、『ダンジョン最速理論』の更新者。
マルク工房印の魔石拾いセット、考案したのは親たちらしい。
超有名クラン『終末の角笛の護り手』と定期的な会合を持ち、団長のマクシミリアン様を相手にタメ口をたたく。
しかも、あの社交組織『ボンテージCLUB』の名誉会員だ!
世間に知られていない?
知られないように、目立たないようにふるまっているだけ。
余計なやっかみは、本当に面倒だ。
思い悩む子どもたちに、転生三人組が送る言葉がある。
「心に棚をDIY!」
「「DIY! DIY!」」
健やかに生きる秘訣ではあるかもしれない。
☆
子どもたち世代の受け入れを始めたクラン『アスタリスク』には、親世代として解消すべき問題がある。
大量の留保品がそれで、ジュスティーヌが男爵位をもらいに王都までお出掛けした時点で……
・武具類208点
・アクセサリ類61点
・魔道具類24点
・スキルオーブ21点
以上とは別枠に
・魔法鞄25個
・収納の腕輪23個
・転移の指輪2個
・攻撃ビットなどの特殊なアクセサリ6個
・成長のオーブが合計2.5レベル分
・『蘇生薬』2個
・『若返りの秘薬』1個
・TSポーション『一夜の夢』1個
ほか、ヨッシー倉庫に眠る、組合に提出できないアイテムの数々。
☆
留保品のうち、存在を世に知られれば、国家的陰謀に巻き込まれる未来しか見えない薬物系は、国家認定薬剤師マリエル様に一任だ。
「あやしい秘密研究はマッドサイエンティストに付き物」
「まかり間違って、なにかしらの成果が得られたらうれしいな」
「魔法薬は、クスリ成分よりも『概念』成分の調達・抽出・調合が大事だから、期待はしないでね~」
成長のオーブは、誰も要らないという。
そもそも一般的な認識だと、最前線の探索者でもレベル50台、数少ない大ベテランで60台がいるかもねというところ、彼らは全員90台。
転生三人組のようにレベル100必達でもなければ、これ以上あげる必要がないのだ。
あとは効果が大きすぎるもの、世間的な影響が怖いものは死蔵、抱え落ちもやむなしだ。
そのへんは引き続き留保としつつ、権利を確定させてしまってもいいモノをメンバーで分配した。
方法は、①くじ引きで順番を決め、②その順番で欲しいものを確保し、③逆順で欲しいものを確保、①に戻る、の繰り返し。
叙爵関連で持ち出しのあるジュスティーヌと、転生三人組は成長のオーブの分として、1巡目の分配に参加しない。
分配後、比較的グレードの低いもの、例えば武具類3本を収納できる『収納の腕輪』などは、取得者から自分の子どもに卒院プレゼントとして贈られるなどした。
誰の、どの家の権利品かを明確にしたうえで、クランへ貸し出された魔法鞄などの品もある。
ただし、どんな品であれ、効果に見合った力を身に着けていない者には渡せない。
『殺してでも奪い取る』
人の欲の恐ろしさよ。
取り扱いを慎重にせざるを得ないのだ。
☆
探索者からの引退は、組合の必死の引き留めもあり、季に1回のガーディアン・チャレンジだけを継続で数年を過ごした。
途中、国王陛下の代替わりに伴う宮殿の増改築に際し、トレント材需要が暴騰。
探索者組合に泣きつかれ、クランとして調達を主導……というていで在庫を放出。
ダンジョン深部から地上までの運搬の手配が、子どもたち世代の大仕事となった。
「フォローできるうちに実地で組織運営を教えられてよかった」
「それな」
また、アクヤの街から王都までの運搬を差配し功績を認められた新しい代官様とも、とても良い関係を築くことにつながった。
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領地に関しては、結構おカネ使ったはずだけど、14人で割ると、一人頭金貨数百枚程度しか支出していない。
「減ってない……」
「むしろ、増えてる」
アドルフとフィアフが遠い目をする。
第八層品のオークション出品やコンステラリス伯爵家への融通で、各自に年間金貨400~500枚の収入があったからねえ。
おカネは寂しがり屋で仲間を集めるとはよく言ったものだ。
まあ、あって困るものではないのがおカネ。
特に金貨は、大組織や貴族にとっての決済貨幣でもあるけれど、貯蓄財の意味も強い。
いくつかの宝箱に小分けして大事に保管し、子々孫々に『いざという時に使うがよい』とでも言ってやればいいだろう。
開発面では、重機を用いて川湊および水路の整備をしたり、街道の拡幅、勾配の調整、耕作・放牧地の整地、住宅地の造成、お堀や土塁に、リアルスケール盆栽遊びとやりたい放題。
経営面でも、自給自足を軸に食肉特産品や温泉静養、医療ケアなどに力を入れ、収支バランスは黒字に転向。
弱点と言えば、社交性。
でも最寄りのアクヤの街の代官様とは良い関係を築いているし、田舎の弱小領主が自領にこもって王都に出てこないのも珍しくはない。
総じて、なんとかなっている。
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月日は流れ、多くの縁者に見守られる中、探索者クラン『アスタリスク』創成メンバーの最後の一人が臨終の時を迎えていた。
今世での名をヨッシーこと、王国騎士ヨルグ・シルズ・グッドマン。
世間的には『グッドマン グルメガイド』の創始者にして、食肉の改良に生涯をささげたデブとして知られている。
ただ耳の人の彼と、二人の獣耳の人の妻たちが世に送り出した『オルレアンジドリ』、『ジャルマブタ』、『シモフリグッドマギュウ』の肉を用いたグルメ、『甘辛テバサキ』『ブタドゥーン』『石焼ステーキ』はアクヤの街の名物であり、訪れた際には必ず食していただきたい。
心に潤いを求める紳士には、B-CLUB直営の『バニーガーデン・THE ROYAL』をおすすめしておく。
ヨッシーの、おぼろな意識が急にはっきりしたかと思うと、なんかこう『白い部屋』にいた。
しかも、先に逝ったはずのラッドとセバスがくつろいでいる。
「おっすおっす」
「なに、俺、死んだ?」
「感覚的には、僕も今しがたここに居たってとこです」
旧交を温めていたところに、『まばゆい人影』が降臨した。
『レベル100超越おめでとう。君たちへの報酬として、記憶や霊格そのままに再転生を約束しよう』
「「「えっ?」」」
『そう、次の転生先は新規ダンジョン。君たちにはダンジョン・マスターとして人類の成長を導いてほしい』
条件不達成ならペナルティ。
達成したならばボーナスだ。
ここはまではわかるよね?
「仕事の報酬は仕事って、そういうことじゃないでしょーーー!」
なにやら叫んでいるので補足してあげよう。
『強くてニューゲーム』
「「「OK。」」」
条件反射っぽい返答だが、合意とみなしてよろしいですね。
それでは皆様ご安全に、【14へ行け】。




