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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
13章.目指すはスローなセカンドライフ編

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13-11.世襲の地位



 今年度も、コンステラリス伯爵家よりスキルオーブをご依頼の書状が届いた。

 しかも、なければないでいいのよの趣旨がわざわざ書かれている。


 伯爵という地位におごらず、こちらへのお気遣いを忘れない、善い人なのだろう。


「【拳聖】と【聖戦士】、【複合魔術】に【鋼の精神】も出しちゃえ」


 目玉品以外もあわせて金貨2640枚になりましたー。



   ☆



 豪華ながら落ち着いた調度で整えられた執務室で、伯爵様は絶叫なさられた。


 いや、役には立つのだ。手にしたブツで有意義な取引が行えている。ぶっちゃけ利益はでかい。金銭面だけとってもぼろ儲けと言ってもいい。


「なんでこう、ポンポンと宝物級をお出ししてくるんだ、あいつらは!」

「……下手にオークションにも出せず、自分たちでは使い道がない、そういう品なのでは」


 執事さん、正解!


「あー、たしかに定期便の出品予定では、『そこそこ』までしか見ておらんな」


 次に考えるのは、クラン『アスタリスク』があとどのくらい逸品を所有しているのか。

 そのブツを、伯爵家として有効に使うには。


「……はたして、スキルオーブだけなのであろうか」

「さて、それは……。ドロップは、『運』でございますから」


 老伯爵と老執事。髪は白いが腹は黒い、二人の含み笑いが交錯した。



   ☆



 春恒例のお誕生日おめでとうの会は、ジュスティーヌの宣言から始まる。


「今年度でわたしたちも29歳。でも、まだまだ元気。みんなも元気にやっていきましょー」

「「おー」」


 打ち止めと仕込んだ最後の子たちも、数えで5歳。日々忙しく世界に挑んでいる。


 前季、冬至祭週の祝福の儀では、マリエルの第三子が【無属性魔術】、ジュスティーヌの第一子は【護剣術】、ヴィオラの第一子は、なんと【闇・風・水魔術】の”トリプル”を授かった。

 この春を飛ばして、次の夏至祭週では、ユイの第二子が【火魔術】、オルレアの第二子が【直感】、アドルフ・リーリアの第二子は【算術】。


 いずれの子も進路相談と英才教育が行われる。



   ☆



 春・秋の祭週に王都で行われる叙勲式典では、功労者への勲章、褒章の授与や、新規の爵位を授ける叙爵、爵位を上に持ち上げる陞爵などが行われるという。


 なお、爵位を下げたり取り消したりの降爵や奪爵は時期不問。

 公開されるのは処刑案件で、基本は密室行事だ。


 冬の間に提出した開発地の詳細な地図に、最低限の領民確保および耕作地の開墾申告。

 あわせて代官様の報告に、なぜか各所に口を利いてくださったらしいコンステラリス伯爵家の後押しもあり、無事、国王陛下の裁可を得た。


 ジュスティーヌと転生三人組の、一代爵から永代爵への切り替えと、開発した土地にほうじる領主化が決定だ。

 名前の、いわゆる爵位称の部分もちょっとだけ変わる。


 といった次第を伝えられ、日を改めてアクヤの街の代官様が国王陛下を代理して、代官館ことクレイ城の謁見の間で叙爵の儀が執り行われた。

 ひざまずいた授爵者の肩に剣をポンポンする例のアレも、もちろんやった。


 なお、新領主の周辺有力者へのお披露目の意味もあるので、式典および披露宴の費用はこっち持ち。

 これに関しては4人がそれぞれ金貨20枚余りを支出。


 飲食の手配や給仕等は、クレイ城の優秀なスタッフが主導してくださった。

 が、それ以外の、招待客の選定に招待状の発送、街外からの来客には宿泊場所の確保など。こちらでやるべきことも数多い。


 社会的地位という足切り基準があるので、公的な式典および宴に招けない関係者も多い。

 ただし同時に、一定以上の地位者には、縁がなくともお声がけしなければならないともいう。


 代官様以下の行政幹部、衛視隊・衛兵隊代表、神殿幹部に、各種同業者組合(ギルド)のトップに大商会といった街の有力者。

 周辺の領主貴族や村落の代表に、親族・友人・知人枠。


 ウィスタリアのご実家や、学友たるドゥーレン・デ・リメル男爵様、有力探索者クラン『終末の角笛の護り手ガーディアン・オブ・ザ・ギャルホーン』を率いる『双剣の騎士』マクシミリアン・シル・ニヤーストラ一代騎士様は欠かせない。


 当事者4人はもちろん、ジュスティーヌのボーヴァルディ家の執事さんや女中さん、侍女のウィスタリア、勝手侍女のヴィオラ、ユイたち奥様衆も総動員で準備に追われた。


「実際に、つら見せてなんぼってのはわかるんだが」

「まー、この規模でご招待なんて、これっきりだとは思いますけどね」

「そうであってほしいわぁ」


 すっかりお疲れのヴィオラお姉ちゃん、テーブルにあごをのせて溶けている。


 ともあれ、これで領民から年貢などのカタチであがりをかすめ取る立場になった。


 領民化するのは、まず領主4家雇いの飼育員に小作農、雇い職人。……現状と変わらないね。

 いずれは土地持ち自作農や独立職人なんかも現れるでしょう。


 耕作地拡大のため、街道延伸のため、村基盤の整備(整地)のため。

 人手はいくらあってもいいのだが、春先に暇しているようなヤツはロクなもんじゃないと親方衆が言うので臨時動員は解除。


 人足の護衛と害獣駆除のために雇っている探索者パーティは入れ替わりがあるが、中には狩人に転向し領民になりたいという人もいる。

 30歳前にダンジョンを引退、土地に根差して生きるセカンドライフは、成功した探索者の類型のひとつだ。



   ☆



 過去3回のガーディアン戦で、対戦相手が1体ずつ増えていることを踏まえ、春季は10人パーティで臨んだところ、推定通り4体出現した。


 剣士にぼろきれ、荷物持ちは対戦経験あり。

 いかにも魔法使いな新顔は、とんがり帽子にごっつい節くれだった杖、意味ありげな刺繍のちりばめられたローブをまとっている。


 ま、いかに強大な遠距離攻撃魔法があろうとも、タメが必要な時点でね。


 夏季の第5回戦は5体が相手。

 剣士に重戦士、荷物持ちに魔法使い、そして新顔は長耳の人影。


 ノータイムで弓バシバシと、クラン『アスタリスク』同様の攻撃手段をお持ちだった。

 が、それだけ。他4体を何もさせずに始末して、展開した遮蔽から射撃戦。数的有利で圧勝である。


 お楽しみの宝物は、春夏あわせて全部で9点。


「1体1つってことだな」


 魔力の焦点具にもなる短剣『エイゾース』、切れ味抜群の短剣『エア』、【縮地】スキル付属の短ブーツ『エアフォース』、三重積層装甲の全身鎧『テシオドウス』。

 指輪型の『属性汎用・魔力の焦点具にして蓄積具』は消費MP軽減効果もあり、多分、魔力の焦点具の最高峰。

 バングル型の『携帯収蔵庫(非生物限定、5立方m)』、長さ10cm弱の角錐型の飾り『攻撃ビット』。

 容量30倍の『魔法鞄マジックバッグ』に『【鑑定】』のスキルオーブ。


 どれもこれも垂涎のブツであり、メンバーの目もぎらついている。


 春・夏で、メンバーのレベルは92か93。

 転生三人組は横這い98で予想通り。


 オークション出品39点、金貨4230枚。

 宝物以外での特記レアもん、収納の腕輪が2点、Lv1の成長のオーブが1点。


 うん、出るときは出るのだ。狙っていないときほど出ると、都市伝説にも書いてある。



   ☆



 夏の終わり、マリエルの第一子アリッサと、ウィスタリアの第一子コーティが学院3年卒を果たした。


 アリッサは王国認定薬剤師試験に合格、コーティは成績優秀者として一代騎士爵を引っ提げての凱旋だ。

 なお学院では『アリッサ姫の騎士団』団長をコーティが務め、姫も素直に祭り上げられ、かつ、恐るべきハラストメンターとして活躍したとかなんとか。


 コーティは、卒院でも別れず残ったパーティメンバー4人とともに、クラン『アスタリスク』入りを希望。

 アリッサは実家のポーション工房を継ぐ関係で数えられていないが、クランに入っていけない理由もない。だって、母のマリエルは工房もクラン活動も両立させている。


 ついでに、縁のあった家政科の子どうかなというので、ジュスティーヌ邸のメイドに採用。これで執事にメイド3人体制になる。


「ラブの気配を感じたのです」


 でも、ジュスティーヌのラブラブセンサー(自称)はあてにならないからなあ。


「どちらかと言えば、下僕を採用していただきたいのですが」


 執事さん、メイドも必要としつつも、直接自分の手足となる部下を要求。


 本来、メイドは倍いても足りないらしいのだけど、食事や洗濯の類がクランと合同で、ジュスティーヌ邸のみのお仕事は掃除くらい。

 しかも客室はほぼ使っていない。


 執事さんは、領主化案件の絡みで対外的にも駆けまわってもらっているのでお忙しい。

 侍女のウィスタリアと実質侍女のヴィオラも、それなりにお忙しい。


 自領にも、もうワンセットの雇用が必要になる。


「領地に領主館を建ててから考えましょう」


 ジュスティーヌ、必殺の先送りである。



   ☆



 今年度も、身内に訃報が相次いだ。


 秋の終わりにクリスの父が逝き、春半ばにはプリムローズの母、そしてリーリアの母が続いた。


 晩年、寝食に困らず、孫に囲まれて逝ったんだからいいじゃないとセバスの母は言う。

 親世代はそういう歳、覚悟もしているのだ。


 そういえば、学院時代はアドルフたちのパーティメンバーで、マックスたちのところに行ったものの、大手クランに引き抜かれた風魔術士君も亡くなったそうだ。

 ダンジョンではなく、娼館でズブリされたとかなんとか。


 マックスたちのクラン『終末の角笛の護り手』との定例会で、腹黒双子の片割れのカールが清々したと言い放っていた。


 たしかに不義理な面もあったが、恨みとは根深いものだなと感じた転生三人組であった。




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