13-02.大中小の島しょ部
冬季には、なんと7人が産休入りする。
すでに産休中のウィスタリアとあわせて、女子組全員が稼働メンバーから外れることになる。
ただし、マリエルとジャルマリスは季の頭から完全休業だが、ユイ、ジュスティーヌ、ヴィオラ、オルレア、プリムローズの5人は季の後半から休みに入る。
旧14号パーティのメンバーは、この年度で25歳。当世基準だと、いろいろとくたびれてくる年齢になる。
女子組が示し合わせて夏に励み励ませ、一斉に4人目を仕込んだ結果だ。
なんのかんのいっても妊娠・出産は命がけで、そして命を削る。
実際に、多産と過労の影響が強く出る農村部や貧困層の女性の寿命は、30台半ばともいわれる。
10歳にたどり着くまでに半分はいなくなる前提での子だくさん、多産多死社会の感覚はあるが、メンバーの子は全員生存中。
3人残れば十分だしと、プリムローズやアドルフの妻のリーリアでさえ、これが最後の子かなと考え始めている。
☆
第十層を島しょ部含めて一巡したことで、大まかな傾向と対策も見えてきた。
クラゲ群が海流に乗って移動しているという懸念はあるが、基本的には湧きポイントないし活動エリアは固定ぽいので、うまくやれば1日で数か所を回ることができる。
ただしリポップまでの時間が不明で、さらに、単独で登場する大海蛇や大ダコ、大王イカは、そもそもの個体数も少ないのかもしれない。
推定交戦エリアを経路上に設定し、リポップ間隔検証しつつの逢えたらいいな扱い。
「クラーケン、激ウマなんだけどなあ」
「こう、ぐわっって毛が逆立つ感じで霊格量くれるもんな」
リポップ問題は島しょ部も同じで、特に地竜は間隔が長いようだ。なので確実なのは1ダイブに1戦闘のみで計算。
「経験値を稼ぐにはカニ島、ワニ島巡回がよさそうだ」
「そっちもリポップまでの時間、計らんとね」
メンバー全員であーでもないこーでもないと、16日間の効率的ルーティングを考えた。
☆
島しょ部での戦闘は、まず上陸できそうなビーチまでの経路に触手が蠢く。
シー・アイランド・アネモネ、いわゆるイソギンチャクで、群生し、麻痺系の毒持ち触手を広げて歓迎の姿勢を見せている。
「上陸したけりゃ通るしかないコースにイソギンチャクの森ねえ」
「断崖絶壁に横付けしてよじ登る……ないなあ」
「なぎはらえー」
「「ひゃっはー」」
ブリッジで思案顔のセバスの眼下では、立派なヒャッハーと化した女子たちがジュスティーヌの号令で軽機関銃を乱射している。
浅瀬に近づき、鋼鉄船上から鉄量投射で薙ぎ払う。情け容赦は不要が船上(戦場)の掟ゆえに。
あらかた始末したら、ドロップ回収のたも網持ってゴムボートに乗り換え、上陸だ。
魔石以外のドロップは『よくしなるとげとげの触手』。無理に回収するほどでもないが、小銭にはなる。
ビーチから少し進んだ陸地には、第九層でもおなじみの、ちょっとした林があるじゃん?
セバスによる【魔力感知】に引っかかれば、焼き討ち上等。
シニアトレントやエルダートレント、ドライアドもひっくるめて処理されるのも第九層と同じ。
当世の油は割と貴重品でお高いし、以前は【通信販売】で買った灯油をいちいち壺に入れて準備していたが、今や『ブラックマーケット』からのナパーム購入が簡単で威力も上。
「朝のナパームの匂いは格別だ」
「勝利の匂いだな」
ラッドとヨッシーが無駄にポーズをキメながら、どこかで聞いたようなセリフを交わすまでがワンセットだ。
そしてヨッシーの倉庫に、『トレント材』や『トレントの枝・大枝』がたまっていく。
『魔石』や『トレントの実』、『甘い樹液』だの『世界樹になる可能性のある種』なら組合に提出できるけど、トレント材等はねえ。
大きく重すぎ、どうやって持ち帰ったかが問われるブツゆえ、不良在庫になっている。
☆
物騒なイソギンチャクのお出迎えと、ナパームされるトレント林は共通項みたいなもので、島の大きさで出現する魔物に違いが出る。
小島にはジャイアント・シオマネキが出現。
ゆえにカニ島と呼称する。
片側のハサミが巨大なカニで、全身を硬い甲羅に覆われている。
ハサミは武器として振り回し、挟みつけ、地獄突き等に使われるだけでなく、カスタネットのように打ち鳴らす威嚇のしぐさ(?)や仲間を呼ぶ合図。
強さは、数で押されると危ないかなという程度。
そしてクラン『アスタリスク』の面々にとっては、仲間を呼んでもらった方が索敵に割く手間が減っていいじゃんと。
特有のドロップは『甲羅の破片』、『カニ足』、『あぶく玉』。
甲羅は鱗鎧のパーツなどに、あぶく玉は衝撃で泡をぶくぶく発生させるので、煙幕玉のように使うみたい。どっちも組合買取行き。
そしてカニ足は茹でて食すのがオススメだ。
カニを食すとき、人は無口になる。なおカニミソはドロップしない。
「殻付きのママじゃなく、むき身でくれてもいいのに」
いわゆるカニポーション状態でのドロップを望むヨッシーに、ラッドが首を振った。
「スローライフってのは、不便・手間暇を楽しむもんだろ」
「一理あるような気がしないでもない」
☆
中島には全長7mにもなる巨大なワニ、クロコダイルが出現する。通称ワニ島。
水際周辺に潜み、かみつきからの捻りや水中へ引きずり込むなどが想定される。皮膚も硬い。
姿を見かけた次の瞬間には距離を取り、追いかけてこなかったので舌打ち。
ロープに肉塊を結わえて放り投げ、食いついたところで綱引きして陸地に引っ張り出し、押さえつけてのタコ殴り。
「すげぇ、俺たちドラゴンスレイヤーなんじゃ?」
「いや、ただのワニだぞ」
なぜか一部のメンバーはしゅんとしてしまったが、転生三人組はワニだよなぁ状態。
爬虫類的なゴツゴツしたフォルムは、たしかに巷でいうドラゴンっぽさはあるかもしれない。
かむ力は強いが開く方の力はずっと弱いので、口を開けさせない変形さすまた的な捕獲具も有効。
「ワニとくれば、狩り方もこうなる」
「いまさらだけど、なんであんたたちってこういう変な知識があるのよ」
ヴィオラお姉ちゃんがむくれるが、まあ、南海の孤島に遭難してワニワニでパニックなんて、中学生マインドから成長しない男には必須めいたサバイバル知識ではなかろうか。
特有ドロップは『ワニ革』と『ワニ肉』そして、『バナナ』。
「南方のフルーツなのは知っていますが、なぜバナナ?」
「そりゃ、ワニだしなあ」
「ワニとはいったい……」
ジュスティーヌは首をひねるが、転生三人組にはワニとくればバナナ園的な、ひどく偏った前世常識がインストールされている。
「ワニを見ながらバナナを食す。南国リゾート気分だな」
「バナナを見ながらワニを食す。意外にさっぱりした味ですね」
「爬虫類と恐竜と鳥類って、つながってるらしいからなあ」
ワニ革は組合提出。卸した先で、バッグにでも加工してくれるでしょう。
☆
大島には全長10m以上もある四つ足のトカゲ、地竜が出現する。なので地竜島と呼称。
「マジドラ!!」
ワニと違い、こちらはマジモンのドラゴン。
形状的にも巨大なコモドオオトカゲ(コモドドラゴン)なので、転生三人組もドラゴン呼びに違和感はない。
体重自体が凶悪な武器であり、遮蔽ごと薙ぎ払ったり、突撃かまして破砕したりの質量攻撃は、竜の名に恥じない見事っぷり。
もちろん爪や牙もあなどれない。しかも、引っかかれたり噛みつかれたりすると、毒・病気をもらう。
ブレスはみていない。
なお泳ぐこともできるので、水辺にも注意が必要だ。
硬い、強い、そして(経験値)が旨い!
「なせばなるもんだなあ」
「今度こそ、俺たち、ドラゴンスレイヤー?」
「実感がないよねえ」
腕組みが似合うクリスが嘆息するが、アドルフとフィアフは諦念を漂わせている。
まあね。倉庫から出した陣地を遮蔽に軽機関銃でけん制しつつ、横合い展開した別動隊がパンツァーファウストやらRPG-7やらをぶち込み、セバス謹製地雷ゾーンで追い詰める。
これは、狩りだ。
いかに強大な敵であっても、多の連携の前には死角が生じる。
「ふぃ~、総力戦だったな」
「やっぱつえーわ、ドラゴン」
「対熊の5倍は魔力こめたのに、吹っ飛ばせなかったのはさすがです」
【自己認識】上に、『地竜討伐証』が表示され、トロフィーが増えたと転生三人組もにっこりだ。
ドロップは『魔石(特大)』、軽く・しなやか・熱にも水にも強い『地竜の鱗』、そして何回か【鑑定】を使える『地竜の瞳』。
いずれもよろしいお値段になる。
☆
本格的な狩りにシフトした成果はレベルにあらわれた。
転生三人組はレベル77から79へ大躍進。
前半のみ参加の女子5人も79となり、クリス、アドルフ、フィアフが80でそろっている。
そしてレベル79で解禁となったのが、ヨッシーの【個人倉庫】の『同期調整』コマンド。
倉庫区画の時間経過と実空間との同期を調整する、という説明には首をひねった三人だったが、いざ試せばなんのことはなく、倉庫内の時間経過を半分から2倍速の範囲で調整できる。
「保存区画は時間経過を遅らせて、逆に熟成を早めたいモノを倍速区画ってな」
「同期って、出し入れの際の調整ってことか」
オークションには武具類8点、アクセサリ類1点、魔道具類7点、スキルオーブ3点を出品。総額で金貨1265枚となっている。




