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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
9章.フォローアップ&モラトリアム編

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9-04.ダークサイド潜伏者



 春分祭週にはいってすぐ、後輩第二陣を率いるジョゼフが後輩たちを引き連れて現れた。


 第三陣は養護院からの2人。

 第四陣は養護院から1人、拡大マルク工房コミュニティ(木工・大工系職人集団)から2人。


 こうして顔を合わせれば、屋台に繰り出しておごる程度の世話は焼く。

 しかし、転生三人組が直接面倒を見たわけではないのでえにしは薄い。


 最近の学院では、拠点での荷物番に関して『助っ人』活用がトレンドだとか。

 官吏科生の『遊軍』が、日程中の1日は狩りに同行等の条件で引き受けるという。


 固定のパーティのプールメンバーだと、出番待ちになる。

 フリーの立場で複数パーティの引き合いを受けられる助っ人、助っ人をまとめた遊軍という変遷。


 いわば官吏科生全員が全学院パーティのプールメンバーという方向性だ。


 卒院から半年しかたっていないアドルフもびっくり。


「俺たちもメンバーのツテで時々助っ人頼んだけど、仕組みになってるの!?」

「そこはまあ、官吏科らしいというか」


 未来のお役人たるもの、システマティックな組織運用はお手の物、かもしれない。


 それに、もともと官吏科の卒院レベルは探索科などにくらべて低い。

 気質的にも、がむしゃらにダンジョン活動(ダン活)に励むという人物は例外よりなのだ。



   ☆



 ジョゼフとカール、プリムローズは、学院パーティにおいて騎士科のリーダーを操る黒幕体制を敷いている。


 この春季で追い込みをかけ、3年卒のエリート様になっていただく予定だという。


 ついてはご教授をということで、第四層の地図や魔物情報、狩り方などをレクチャー。


 ゲートのある小部屋を拡張し土嚢クランクも作ってあるので、ちょっとした休憩には使えるはずだ。


「けど、おまえたちはマックスのとこに潜り込む予定だろ?」

「ええ、まあ、そうなんですがね。情報源として先輩方を頼らないのも変でしょう?」

「ずうずうしい後輩仕種ってものさ、先輩」


 腹黒双子に堂々と開き直られては、転生三人組も苦笑しかできない。


 ラッドの婚約者のプリムローズは、卒院後はこっちに加わる予定。

 ただし、目的がラッドのお嫁さんなので、いずれ寿引退になるだろう。


「最短でも16歳まで待てとは言ってあるが」

「18歳だと待たせすぎっぽいし、難しいですよね」


 妊娠出産に耐えうる身体を考える転生三人組と、現世の社会事情との兼ね合いだ。


 女子組一気の引退ラッシュも懸念される。

 しかし、アドルフとフィアフ以降の男子の加入見通しがない。


「秘密の件もあるし、下手に増やせないからなあ」

「それなぁ」



   ☆



 春分祭週の最後、お誕生日おめでとうの会も定例行事となってきた。


「年度中でみなさん15歳。16歳まで残り1年。うっ……」

「元気にやっていこー」

「「おー」」


 挨拶途中で唐突に頭を抱えたジュスティーヌの猶予期間モラトリアムは残り1年。


「あー、いいかな。次の夏か秋か、僕たち結婚しようと思うんだ」


 ほどほどに席も温まったところで、クリスがウィスタリアと結婚をすると切り出した。


「一緒にいると、その、そういう気分になることもあるのであります」

「続けて」

「ティナぁ……」


 急にゲンドウポーズをとったジュスティーヌにヴィオラは嘆くが、あのへんやそのへんでもユイやマリエルが聞き耳を立てている。


「そうか。そりゃあめでたいな!」

「「ヤッフー!!」」

「あ、ありがとう」


 野郎組、あえておピンク空気を弾き飛ばすパーティー仕種でこれに対応。


 まあ、祝い事、祭り事には違いない。

 陽気にアゲアゲでいこう。


 そういえば自称『赤い彗星』のアドルフ君は、帰省の際に同じく赤髪の子となにやらいい感じだった模様です。


「春めいてきましたねえ」


 ジュスティーヌ・ラブラブセンサー(自称)の感度は上昇中だ。


 反面、『稲妻のフィー』こと狐耳のフィアフに浮いた話は聞かない。


 こちらはヴィオラを筆頭に、オルレアとジャルマリス含めお姉さま方にいじられている姿が、第三者には妹分と錯覚されている可能性が無きにしも非ず。


 フィアフ君はかわいいからなあ。



   ☆



 クリスとウィスタリアの慶事があれば、揺り返しのようなこともある。


 尾行者の一件以来、セバスは【空間把握改】を地上でも使用。

 おかしなところにおかしなもの、そしておかしな人影が無いかの確認を日課にしていた。


 でまあ、あやしいものやあやしい人とは存外いるもんだ。

 あやしいと思っているからあやしく感じるというのも事実だが。


「あの長屋、住人いないはずだよね」

「商業組合側は、取り壊して西街路からの区画に合筆するって話だったぞ」


 木戸通りを挟んだ北側、商業組合管轄側の無人のはずの長屋に入り込んでいた人影を、数日にわたって感知。


 ダンジョン内での尾行とは訳が違う。


 あの時はなんというか、ちゃんと探索者パーティのふりをしていたし、本来であれば気がつかないだけの距離も取っていた。

 その距離が一定過ぎて違和感を覚えたのだが、それはそれ。


 他者の土地家屋への侵入は普通に犯罪だ。

 自分たちに関係するかどうかはともかく、ご近所だし、さすがに放置できない。


 あやしい人が廃屋に潜んでいると最寄りの衛視隊詰所に通報、これでも爵位持ちなので衛視隊の動きは早い。


 捕縛しようとした衛兵たちを振り切り、屋根の上を飛び跳ねて逃げるというあやしさマシマシ行動を取ってくれた。



   ☆



「まことにっ申し訳ありません!」


 不審者を取り逃がした衛視隊、衛兵たちを取りまとめる立場の衛視さんが代表して頭を下げる。


「ああ、いや。なんなんだろうな」

「ただの犯罪者にしては、身のこなしがよすぎましたな」


 衛視隊にしても、動機や目的など、捕まえて吐かせないとわからない。

 当面、周辺の巡回警邏の密度を上げるというのでお任せした。


 犯罪の温床になるのでよろしくないと、廃屋を放置していた商業組合に行政指導も行われた。


 とばっちりといえなくもないが、現にあやしい人物が潜んでいたので、管理不行き届きでもある。

 取り壊しと再区画にかかる費用をケチっていただけの商業組合、あっさり更地化。


「今回の不審者、俺たち無関係もなくはない」


 だがしかし、放置して自分たち関連だった時が困る。


「警備用の赤外線センサーと監視カメラ導入な」

「みんなに持たせる防犯ブザーや唐辛子スプレーの類も頼むわ」

「木戸通りに内木戸の設置許可、申請してきます」


 自分たちの敷地際での東西2カ所に門扉の設置、マルク親方がちゃちゃっとやってくれました。


 そも、木戸通りは住人の利便のための私道なので、各自の住居にアクセスできるなら文句を言われる筋合いはない。

 街区の中央部をごそっと押さえているので、通りぬけ必須な近隣住民はいないからね。


 メンバーと使用人たちにも注意情報を発し、いざという時に使えませんでは困るから防犯ブザーや唐辛子スプレーの使用テストも行った。


「ちょっとでも変だなと思ったら、すぐに報告・連絡・相談な」

「「はーい」」


 今世の関係者、皆わりと素直なのだが、それが逆に心配になる転生三人組でもある。



   ☆



 組合でも、担当職員の汗かきおじさんが話題にあげた。


「聞きましたよ。商業組合の長屋に不審者がいたとか」


 オークションに出品以降、だいたい2週に1度は顔を出して報告を受けたり雑談したり。

 外回りの営業が、顔つなぎのご機嫌うかがいするようなものだろと、ラッドにその時々で手すきのメンバーが同行する。


「組合の内偵じゃないよな?」

「まさか。今回は我々にとっても寝込みに浴びせ水のようなもので……」


「今回は?」

「おっと、失言で……もないですね。皆様お気づきでなかったようですが、探索者の動向・素行調査は組合の業務でございます」


 組合として、有力探索者、パーティ、クランの調査はしている。

 秋季の尾行もその一環だ。


「俺たちに関係があるのかないのか。あるならば、どこが、何を探っているのか」

「関係ないならいいんですけどねえ」


 建物や住民事情などなら、家族寮を建設中の作業員に潜り込むか情報抜き取ればいい。


「組合といたしましては、希少な第五層採掘……失礼、探索者様の誕生を、もろ手を挙げて歓迎いたしておりましたものを」


 オークション出品はもちろん、第四層でのゲート小部屋の拡張なども評価を押し上げている。


 探索者にもタイプがある。


 生活の糧やちょっとした富貴を目指して励む者。

 強さを追い求める者に、冒険に魅入られた者。


 俗にいうダンジョン鉱山労働者と、自称・真なる探索者の違いだ。


 組合から見た旧14号パーティは、後者になる。


 組合に利益をもたらしており、今後も期待できる。

 今回の騒動で余計なケチがついて活動を控えられると、組合としても困るのだ。


「自分たちは、そろそろ第六層に進むことを考えている」

「マックスたちと『取引』したから、あっちも第五層に進むだろ」


 念願の魔法の武器を手に入れたぞ状態のマックスたち、すでに冬季の末ごろには第五層に突撃しています。


「ほほう。こう言っては何ですが、第五層利権をあっさり手放されるのですな」


「だって俺たち、採掘者じゃなくて探索者なんでな」

「あ、これはまた。しかりにございます、はい」


 おじさん、額の汗を拭く。





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