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第1話 悪役令嬢、妙案を思いつく

 

「なるほど……あくやくれいじょうね……」


 目前の鏡に映る姿を見ると、納得がいき頷いた。突然ではあるが、元OLである私は恋愛小説の世界に転生を果たしたようだ。そしてなんと、物語の中での悪役令嬢に成り代わってしまった。


「こくがいついほうは、めんどうね」


 私が成り代わってしまった悪役令嬢の名前はフィオラ・テンバル。公爵令嬢であり王太子殿下の婚約者である。フィオラはヒロインに数々の嫌がらせをし、断罪され国外追放される。

 王太子殿下の婚約者という立場に興味はないが、国外追放というのが厄介だ。生活するにはお金が要る。働き口や、拠点をどの国に選ぶか考えるだけでも頭痛がする。私は面倒事が大嫌いなのだ。楽して過ごしたい。


「そういえば、スキル……『魔法創造』」


 右手を前に出し、フィオラのスキルを発現させる。淡い金色の紋章が目の前に浮かぶ。如何やらスキルは健在のようだ。『魔法創造』とは文字通り、魔法を新しく作れるスキルであある。


「あ、そうだ。これならいけるかも」


 私はある考えを思いつき、金色の紋章に手を置いた。折角のスキルだ。最大限利用させてもらおう。悪い笑みを浮かべた。



 〇


「おとうさま、おかあさま。ごそうだんがございます」

「フィオラ、どうしたのだい? 新しいお人形が欲しいのかな?」

「お腹が空いたのかしら? ケーキを食べましょうね」


 絨毯の上を歩き、居間へと辿り着いた。そこにはソファーに座る男女が二人。フィオラの両親である。


「いいえ、どちらもひつようありません。しょうだんです」

「……え? フィオラ?」

「ど、どうしたの?」


 微笑みながらの提案を一蹴し、二人の前に立った。私の態度に両親は怪訝な顔をする。先程までは五歳児の可愛らしいフィオラだったが、今の中身はOLの私だ。戸惑うのも致し方無い。だが成り代わりの事実を伝えたところで、理解が得られる確証はない。このまま押し通すのがいいだろう。


「いっけんはひゃくぶんにしかず。といいますから、みていただいたほうがはやいです」

「こ……これは!? か、鏡か?」

「まあ! 私達の姿が映っているわ……」


 私が手を翳し画面を表示した。そこには、現在の居間が表示されている。驚く両親の姿が画面に映る。


「いいえ。これはかがみではありません。カメラをきどうしているだけです。まほうで、げんざいのようすをうつしとっているのです」

「か……かめら?」


 驚きながらも、表示されている画面を見上げる両親。魔法がある世界では、科学製品の知識は存在しないようだ。


「カメラとは、ふうけいの、いっしゅんをきろくしたものです。これがカメラでさつえいした、えいぞうのしゃしんです」

「そ、それで……この魔法は……」


 簡単に説明しながら、カメラで先程撮影した私の部屋の写真を表示した。母親は言葉を失い。父親は冷や汗を浮かべながら、恐る恐る私に訊ねる。


「わたしのスキルで、さくせいしたまほうです。そのばのふうけいや、えいぞうをきろくすることができます。もちろん、そのきろくをきょうゆうできる、まほうもかいはつづみです。きょうゆうすれば、はなれたばしょでもおたがいに、はなしをすることがかのうです」


 私がスキルで作った魔法は現代では当たり前だった、スマホの機能であるカメラだ。風景を記録する写真と動画。勿論、今後のことの為にライブ配信者をするためのネットワーク魔法も作成済みだ。

 この世界には通信魔法はあるが、取り扱いが難しく範囲広くない。遠くに連絡を取る際には、伝書鳩か書簡を届けるのだ。そんな世界に私の魔法があれば、会話をすることが可能になる。国内の状態が迅速に知れることは、大きな利益だ。そして情報はお金になる。


 私はこの魔法の開発者として、使用料金を貰えれば一生働くことはなく過ごすことが出来る。国は国内情報を、私は使用料金を貰える。お互いに利益がある提案なのだ。


「……っ! そ、そう……なのかい……」

「つきましては、このまほうのふきゅうは、このくにただいなる、こうけんをもたらすことになります。こくおうへいかと、まほうしょうへの、おとりつぎをおねがいいたします」


 宰相である父親や聡明な母親は、この魔法が齎す利益と混乱を察知しているのだろう。顔色が悪いのがその証拠だ。だが、私は楽して過ごしたい。


 にっこりと笑顔で、宰相である父親にお願い事を口にした。





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