13、おっさんの修行
誤字、脱字があれば教えていただけると嬉しいです。
目を覚ますと肉の焼けるいい匂いがする。
大吉は寝ぼけ眼をこすりながら、起き上がる。
においのする方を見ると、またしても肉の塊が焼かれており、
その前にはひらひらのピンクのエプロンをつけた…
大吉は近くに落ちていた石を持ってオーバーハンドスローで…振りかぶって…投げた!!
石は長身の大吉の一番高いところを通って投げおろされるように角度をつけ、しっかりスナップを効かせたことによる回転で威力をさらに上げ、針の穴を通すようなコントロールでその頭に…
<って危なっ!!殺気こもっとるで。>
おっさんの頭に当たるぎりぎりの所で石は吹き飛ばされたように方向を変え、壁に激突した。
岩でできている壁にめりこんでいる。
「ちっ。」
<いや、わしも一応死ぬんやで。せっかく、大吉が喜ぶようにおめかししとったのに。師匠の心、弟子知らずやわ。>
<何を言うてはるんですか師匠。そんな気色悪い格好のボケまでしてうまいことツッコめらんですいません。
きっちりツッコみ(ころし)ますから。>
大吉は素敵な笑顔でさっきより大きな石を拾う。
するとその騒ぎがうるさすぎたのかハクが目を覚ました。
<あっハクちゃんが起きたで。さぁ、飯にしよ。そんなん持っとらんで手を洗ってき。>
すこし額に汗をかきながら話をずらそうとするおっさん。
<はぁ、わかった。それじゃ、朝飯食べよか。>
朝から肉は重い気がしたが、三つ目熊の肉のうまさのおかげか、ペロッと食べてしまった。
<それでおっさん。修行つけてくれるって言うとったけど実際何するん?>
<おお、そやな。まずは戦い方を教えたるわ。>
<そのことやねんけどな、何でか俺血を見ると吐き気とめまいがしてフラフラになってしまうねん。
三つ目熊のときもギリギリやってん。>
<なんや、そんなことか。大丈夫や、わしにかかれば一瞬や。>
<おぉ、頼もしいやん。それじゃ楽しみやな。
そや、俺もおっさんみたいな魔法使いたいから教えてや。>
<あぁ、無理無理。自分全く魔力ないもん。
教えようにも魔力0のやつには何もでけへんわ。>
<でも、今まで体を強化したりして生きてきたんやで。
俺は気って言うとったけど、魔法みたいなんちゃうの。>
<ちゃうちゃう。あんな、落とし人ってのは魔力を持てれえへんらしいねん。
でもその代わり特別な力を持つ。
わしが会った落とし人の嬢ちゃんは自分で念力って言うとったけど、手で触れらんと色々ものを動かす力を持っとったで。
わしも魔法である程度同じようなことはできるけど、嬢ちゃんは別格や。
1つの軍を全員浮かして1km先まで吹っ飛ばしたり、ドラゴン相手に山を持ち上げて上に乗っけてつぶそうとしたり…>
<それって俺と比べられんほど強くない?
ってかそんなんに勝てらんやろ。>
<やから言うたやろ。三つ目熊ごときに苦戦しとるようじゃ全然や。
とりあえず、どんな力なんか見せてもらうで。
ここでやったら家むちゃくちゃになるから外行くで、ついておいで。>
大吉はおっさんの後について、その後ろに暇なのかママガーとハクがついて外に出かけた。
家から少し離れたところでおっさんはあたりを見渡し止まった。
<ここなら、家から離れとるから壊す心配ないし、開けとるから充分力使えるやろ。
それじゃ大吉、さっそく使ってみ。>
<わかった。>
そう言いながら大吉は体の気を強めた。
体から黄色い光が漏れてくる。
<はようしいや。>
<いや、もうしてんで。黄色い光見えへんのか?>
<えっ、ちょっと待ってくれや……うん、確かに力は全体的に上がってはおるみたいやな。
でも、光なんて見えへんで。>
おっさんが何かを唱えるとおっさんの黒目が青目に変わった。
恐らく魔法で見ているのだろうが、正直おっさんがカラコンしたみたいで………
<なんか、失礼なこと考えてないか…>
<そんなことあるはずないでしょう、師匠。
でも、光は出とるよ。それじゃこれは?>
大吉は右手の拳に気を集めた。
右手がはっきりと黄色く光っている。
<いや、右手に力が集まっているんはわかるけど光は見えへんな。
もしかして自分にしか見えへんのちゃう?
それで力はどれくらいか地面殴ってみ。>
おっさんに言われるがまま地面を思いっきり殴る。
ドゴォォォン
地面に1mほどの穴ができる。
<ふむ、なるほど。ちょっとそのままでおって。
直接調べてみるわ。>
おっさんはそう言いながら大吉の頭に手を当て何かつぶやく。
すると大吉は体の中を何かが一瞬通ったような感覚を感じた。
<うわっ、気持ち悪っ!>
<ちょっと調べただけや。悪いもんちゃう。でもだいたいわかったわ。
自分が言うとった気ってやつは強化魔法みたいなもんかな。
まぁ、比べられへんほど強いはずやのに全然使いこなせてないことは…まあええわ。
それじゃ次にこれ振ってみてん。>
おっさんが右手を横に出したかと思うと黒い渦が出てきてそこから一本の剣を取り出した。
<うぉぉぉぉおお、すっげぇ。アイテムボックスってやつか?>
<いや、アイテムボックスが何かわからんけど、これは空倉庫って言うて荷物を持って歩かんでも空間をつなぐだけで道具を取り出せるってやつや。
それより、ほれ。そのままの状態で振ってみ。>
おっさんから剣を受け取り振ってみる。
軽すぎて変に振り回される気もするし、どうも変な感じがする。
<おぉ、なるほど。それじゃ、次はこれな。>
おっさんに言われるがまま色々な武器を振り回す。
槍に斧にでっかい槌に、ブーメランまで……
<決定しました。自分は武器使うな。全く才能のかけらもない。
下手な奴が使うと自分も周りがケガしてまうわ。
それに、一応とはいえ三つ目熊を素手で倒せたんやろ。
それじゃあ、武器持ってもそない変わらん。>
<えっ、でも一か八かの全力でやって何とか倒した後、力使い切って倒れてるんやけど…>
<そのことかいな。大丈夫や。それはつまり自分が赤ちゃんやってことや。>
<赤ちゃん?>
<そや、多少自分で練習はしたみたいやけど戦ったことほとんどないやろ。
そんな使い方だけしって動きは赤ちゃんみたいな状態じゃ使いこなせたとは言わへん。>
おっさんはうまいこと言ってやったというようなドヤ顔をしながらこっちを見ている。
<はぁ、赤ちゃんの意味がようわからんけどとりあえずおっさんのドヤ顔がうっとうしいってことはわかった。>
<なんでやねん。赤ちゃんやで。わかりやすいやん。>
<わかった、わかった。はい、話、先進めて。>
<なんかさらっと流したな…
まあ、結論を言うとやな。もっと戦ってなれる必要があるってことや。
とりあえず、慣れてからやな言葉とかほかの事は。>
<戦うっていうても、俺血があかんねんけど…
ほんまに大丈夫やねんよな?>
<大丈夫や、大丈夫。それじゃさっそく行こか。
あっ、ママガーとハクちゃんは危ないから家帰っとき。>
<えっ危ないって…?>
<大丈夫、大丈夫。>
そうしてママガーとハクとは離れ、おっさんは自信満々に移動し始めた。
森の中に入っていく。
ひたすら大吉は歩いた。
周りの木はどんどん大きくなっていく。
一時間ほど歩いただろうか。
<なぁ、おっさん。まだ着けへんのか?>
<もうちょいや。>
さらに歩いていく。
さらに1時間後…
<なぁ、おっさん。まだ着けへんのか?>
<もうちょいや。>
さらに歩いていく。
何度かその繰り返しをしたところで急におっさんが止まった。
<そういや、自分何持ってきてる?>
<いや、急やったから何も持ってきてないけど…>
<そうか、まぁええわ。あれ見てみ。>
おっさんが指さした先は大きな崖になっていた。
<あすこはな、深部の反り返りの釜って言われとる場所やねん。
一度入ったら崖が反り返ってて外に出られへんし、中には強い魔獣がたんまりおるから死ぬまで出られへんという恐ろしいところや。>
<深部?そこって危ないからママガーに行くなっていうとった場所やろ。
しかも反り返りの釜って、危なすぎるやん………
…まさか、俺にあすこ入れって言わんよな?>
その瞬間、茂みの中から目がいくつもあるイノシシが大吉とおっさんに向かって突っ込んできた。
それを片手間のようにおっさんが右手を上げるとイノシシが浮かびあがり、高速で回転し始めた。
<おっ、こりゃ百目ボアの子どもか。むっちゃうまいねんで。
ちなみに、百目って言うとるけどそんなに目はなくて目の数は個体によってちがって、目の数が多いほど強くてうまいねん。
高速回転しとけば気絶できるし、血が偏って血抜きが速くなるで。>
<へぇ…ってそれより、おれ血もあかんし、あんな所むりやって。>
<大丈夫や。わしにまかせい言うたやろ。>
<えっ、血怖いの治せるん?>
<そや、そこの崖の所立ってみい。>
大吉は言われるがまま、崖のふちに立った。
<それで目をつぶんねん。それじゃ行くで。>
言われたとおりに目をつぶる。
すると頭から生臭く生暖かい液体がかけられた。
なにかと思って目を開けると辺りは血の海…
大吉の上には首と胴体が離れそこから大量に血を流している百目ボアの姿が…
大吉はめまいと、吐き気で倒れそうになるのをぐっとこらえる。
<実践に勝る練習はなしってな。
そんなに血を浴びてたらすぐに魔獣たちに気づかれて何もせんかったら餌やろな。
そうなりたなかったら、せいぜい頑張るんやで。>
おっさんの笑顔。
人をこんなに殴りたいと思ったことはない…
思いっきり気をこめて殴ってやろうとした瞬間、おっさんが右手をあげると大吉に突風が吹いてきてそのまま反り返りの釜の中に落ちていくのであった。
修行パートと言いながら、確認だけして終わりになるとは…
大吉、すべての武器に対する才能、魔法の才能は0となります。
残念!!!




