第01話「ハルスの閃光」
ここ異次元にある銀河系の中央、イプシロン星系。そこには古くから人類が誕生し、その繁栄を極めていた。
その中心となるのは三つの惑星。自然と技術と平和の星「セレス」、資源と開拓と共存の星「ハルス」、そして王政と軍事と支配の星「カリス」。
神話の時代からお互いの存在こそは分かっていたものの、宇宙開拓が進んで直接交流するようになってからは、一見思想の違いから戦争になりそうに見えた。しかし、この三つの惑星国家は三権分立による相互援助が成り立ち、奇跡的な共存を保っていたのである。
そして、セレス歴2078年のこと。
その日、科学の惑星セレスの空は、どこまでも澄み渡っていた。
シーレスは惑星セレスの学術都市である首都セイレスにあるハイスクールに通う、一人の生徒であった。今日も幼馴染みでクラスメイトであるユルグ、サイルの二人とともに、ハイスクールの週末の放課後を満喫していた。
「ねえ、ユルグ、今日の教授のレポート、もう終わったの?」
「うわっ、シーレスおまえ、せっかくの放課後にいきなり何言ってんだよ」
「いやあ、いつも提出当日になって、あたしやサイルに見せてくれって言ってるからさあ。ねえ、サイル?」
「ホントに! そうそう、ユルグってば、昔からホントに進歩がないよね。いつもあたしやシーレスに頼りっきりじゃん」
「いいじゃないか、幼馴染みなんだし……」
「いやいや、そんなんだからいまだに彼女の一人もできないんだよ」
「そっ、そういうおまえたちこそどうなのさ? 彼氏ができたためしがないだろ?」
「うっさいわね! あたしやシーレスはちゃんと男の子から告白とかされています~~~」
「うそっ、じゃあ、もう彼氏が?」
「おバカ! 彼氏がいたらいくら幼馴染みだからって男のあんたとこうやって放課後のんびりしてないっての!」
「まあまあ、二人ともそれくらいにして」
「そういうシーレスはどうなのさ? 気になる男子とかいるんでしょ?」
「うっ……、そっ、それは……」
「え~~~っ、シーレス好きな奴いたんだ!?」
ユルグはあからさまにショックを受けたような声を上げる。サイルはにやりと笑って彼を小突いた。
「そうそう、あたしら女の子はいつまでも男子みたいに夢ばかり追っていないんだよ。そんな鈍感だと、あんたのことが気になっている女子に愛想つかされちゃうわよ! その子とってもかわいいんだから! ね~~~っ、シーレス?」
「もうっ、サイルったら余計なこと言わないの!」
「ごめんごめん、シーレス。こいつがあんまり鈍いんで、ついね」
「もうっ」
「いったい何の話だ?」
だが、その平穏は、唐突に引き裂かれた。
地平線の彼方、資源の惑星ハルスの空が、不自然なほど赤く染まった。
一拍置いて、大気を切り裂くような轟音がセレスの大地を激しく揺らす。ハルスが、内側から弾けるように爆発したのだ。
「あっ、あれはハルスのほうじゃないの?」
「いったい、なによ……!?」
やがて、間髪入れずにセレス国営放送が緊急ニュースを流した。ハルスが爆破された、と。それはカリス軍による突如たる奇襲であった。
「ハルスが……爆破された!?」
都市の中央はその信じがたい事態に騒然としていく。街中に耳を劈く緊急アラートが鳴り響いた。
『緊急警報! カリス軍による大規模テロ攻撃発生! 全員、直ちに避難せよ!』
平和な週末は、一瞬にして地獄へと塗り替えられた。
「大変! 早く避難しないと!」
「でっ、でも、いったいどうやって!?」
「あんた、バカ!? こういう時のためにいつも避難訓練してんじゃん!」
「いっいや、でも実際に起こるなんて……」
「いいから早く逃げる! このままここにいたらカリス軍の連中に殺されるわよ!」
「二人ともいいから早く避難しましょう!」
シーレスは逃げ惑う民衆の濁流の中から二人を連れ出し、避難シェルターへと向かった。
しかし、どのシェルターもすでに定員に達しており、満員で入ることが出来なかった。
「くっ……、いったい、どうすれば……?」
立ち尽くす中、シーレスの脳裏に、兄シルクとその妻アレサから渡されていた緊急時のシークレットキーの存在がよぎった。
シーレスは慌てて自分の小型端末「サイフォン(PSY-PHON)」を立ち上げて、キーのステータスを確認する。
「よしっ! ちゃんとインストールされている!」
「シーレス、どうしたの?」
「早く避難しようぜ!」
「二人とも、いいからあたしについて来て!」
「シーレス?」
「いいから早く!」
他に逃げ場のない状態の二人は一瞬お互いの顔を見合わせ、シーレスの後を必死に追うことにした。
シーレスが向かったのは、先ほどの定員オーバーしている一般シェルターから少し離れた、本来なら政府要人しか近づくことが出来ない特別エリアだった。
もちろん、ここも激しい混乱に包まれている。
その区画の入り口にあるコントロールパネルの前で、シーレスは自身のサイフォンを画面にかざした。
ピピっ、と電子音が鳴り、モニターに文字列が明滅する。
【AUTHENTICATION SUCCESSFUL】
ID: SEARLESS-00-REYWELL
STATUS: VIP / LEVEL 0A (SILK-GENE PRIVILEGE)
MAX CAPACITY AVAILABLE: 5
[WELCOME, LADY SEARLESS. PROCEED TO THE CORE.]
「このシークレットキーでの定員は……五名まで! よし、いける!」
安堵の表情を浮かべたシーレスは、ユルグとサイルに向き直った。
「二人とも、もう大丈夫」
「シーレス?」
「おっ、おい、ホントにいいのかよ?」
「大丈夫、あたしに任せて!」
「そっ、そうか……。シーレスのお兄さん夫婦って……」
「そういうこと。さあ、二人とも早く!」
ドゴォオオン!
と、その時だった。シーレスたちのすぐ背後で凄まじい大爆発が起こり、硝煙の向こうから、彼女たちと同じくらいの年ごろの、大怪我を負った少年少女がよろよろと姿を現した。
「ううう……」
どうやらその少年は大怪我による出血で、既に一人で歩くことができず、少女の肩を借りて何とか立っている状態のようだ。
「ちょっと、あなたたちどうしたの!?」
「ううう……、妹と一緒に街を歩いていたらいきなり大爆発が……」
「お兄様、しっかりして下さいませ……!」
「シーレス!」
緊迫した空気が走る。シーレスの胸を迷いがよぎった。
(どうしよう……二人ならまだしも、有事にどこの誰とも知れない人たちをここに入れるのは……)
「わ、わたしは……」
「……私たちのことはいいですから、早く避難してください。これが私たち兄妹の運命なのでしょうから……」
「すまないな、妹よ……」
スっと、怪我をした少年が力尽きたようにガクッとその場に倒れ込んだ。
「うっ……」
「お兄様っ!」
それを見たシーレスは、胸の奥の躊躇いを完全に振り払った。
「二人とも、あたしたちと一緒に中へ!」
「し、しかし……」
「そんなにお互いを大事に想い合っているふたりを…」
そんなふたりを見て、シーレスの脳裏には幼い自分を可愛がってくれた兄シルクと自分の姿を重ね合わせてしまっていた。
「あたしはそんな怪我人を見捨てることなんてできません!」
「…………」
「ユルグ、サイル、二人に肩を貸してあげて!」
「シーレス!」
「そうこなくっちゃ!」
「す、すまない……」
「感謝します……」
「お礼は無事に避難できてから言ってね」
プシュウ……。
コンソールに複雑なシステムログが走り、強固な防壁が重々しい音を立てて開き始める。
【[SYSTEM: REYWELL-GOVERNMENT SECTOR-9]
INITIATING AIR-LOCK PURGE... 100%
NEURO-LINK INTERFACE: STAND-BY
EMERGENCY BIO-DATA RETRIEVAL... ACTIVE
DEEPEST COLD-RESIDUAL SHELTER ENABLED.】
「さあ、入るわよ」
いま、政府要人専用のコアシェルターがシーレスの手によって開けられた。
(第01話「ハルスの閃光」おわり / 第02話へ続く)
こんにちは、まりもです。
はじめての方ははじめまして
BlueSkyでの公言よりも早く、年内に連載開始することができました
この『シークレットALPHA』は、数年前に企画して、一度大まかな流れが出来たのですが、何度も何度も練り直して暗礁に乗り上げていました。しかし「ゆめみる、ゆき、あやなすむすび。」をいちおう最後まで書き切った時に、それの続編を書く前に、ふとこの「シークレットALPHA」の構成をこうしたらいいのではないか?と思いか書き始めてみたところ思うよりも筆が進み、一気に第三話まで書き切ってしまいました。最後までがちがちに決めすぎるといつまで経っても始まらないので、だいたいのあらすじが決まっている段階でのスタートですが、最終回だけは決まっています。たぶん、想定の1.5~2倍くらいで落ち着くと思います。
ちなみに旧作品はネットのどこにもありません。まあ、ほとんど別物になっていますが。
なるべく早く上げていきますので、どうか最後までお付き合いのほうよろしくお願いします
メインヒロインのひとりシーレスが歌う、「シークレットALPHA」の前期OP主題歌です
『ハルスの残火(Embers of Halth)改』
架空アニメ「シークレットALPHA」 OP主題歌
歌:シーレス
https://suno.com/s/6enFDeCSHkn7Psdp




