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105.最終話 永遠に咲く光

 小さな女の子が「じいじー」とたどたどしい足どりで駆けてくる。

 その先にいるアルヴァンが笑顔でその子を抱き上げた。


 「お父さん、王宮に居なかったから、きっとここだと思って」

 

 走り寄ってきたマナが、息を弾ませながら笑う。

 腕の中の少女――ナナは、まだ一歳。マナとセトの愛娘だ。


 ここは、ユナが最期を迎えた森。

 アルヴァンが建てた小さな神殿が、その一角を守るように立っている。

 祭壇には花が絶えることなく供えられ、野の花々が静かに咲き誇っていた。

 ユナの好きだったストロベリーアイスも、淡いピンクの花弁を揺らしている。


 その祭壇の傍らで、ルカが祈りを捧げていた。

 あの日の後、神官長の座を降り、国中を巡ってはユナを想い祈り続けてきた。

 今はこの神殿に身を寄せ、彼女を想いながら、この場所を守っている。


 祈りを終えたルカが振り向くと、マナとアルヴァンに微笑みを向けた。

 

 「今日も……花がきれいに咲いています」

 

 アルヴァンは小さく頷き、ルカと視線を交わす。

 その瞳には、かつての複雑さではなく、静かな敬意が宿っていた。

 そして心の奥で、彼女にそっと語りかける。


 (ユナ……今日も君の花は美しく咲いている。君が守ったこの国も、ちゃんと生きている)


 この場所に来ると、いつも彼女が微笑んでいるような気がする。


 ふと、森を渡る風が三人の間を抜けていった。

 花々が一斉に揺れ、ストロベリーアイスの甘やかな香りが漂う。

 その風はどこか懐かしく、遠い日と同じ温もりを運んでくる。


 花弁がひとひら、空から舞い降り、アルヴァンの肩へとそっと触れた。

 その瞬間、耳の奥で、あの穏やかな声が微かに響いた気がした。


 ――ありがとう。


 マナがその花弁をそっと手に取る。


 「……お母さん、きっと今日も見てますね」

 

 アルヴァンは空を仰ぎ、小さく笑った。


 「ああ、そうだな……」


 光に透けた花弁がふわりと舞い上がり、陽光の中で瞬きながら森の空へ昇っていく。

 その軌跡を追う彼らの瞳には、確かに――ユナの面影が揺れていた。

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