23話『火星、空中戦』
空中で機体を安定させ、滑走路の方へ舞い戻る。フライトユニットをつけたサイクロプスにマキシ機とジン機は防戦一方となっていた。
「マキシ!ジン!下がれ!」
そう通信で送り、ルビー隊のサイクロプスのフライトユニットにロックオン。
フライトユニットに付いているガトリング砲で攻撃を仕掛ける。
命中。敵のフライトユニットは爆散し、それに巻き込まれて機体も爆発。滑走路に墜落する。
「よくやった!坊主!」
「ありがとう!ケイくん!助かったよ!」
マキシとジンから感謝を告げる通信が入る。
「僕はこれより単独行動に移る。サイ、大丈夫だな。」
「大丈夫です。パイロット。戦術データリンクの範囲から大きく離れますので、マキシさん、そちらで繋ぎ直してください。」
マキシは飛び去る僕の機体に
「了解じゃ!坊主!行ってこい!」
と言い、そして
「頼んだぞ。」
と一言加えた。
*
混戦地帯へ向かう。戦線はこちらが押されており、基地入り口付近まで後退している。
厄介なのは、やはり空を飛ぶルビー隊のサイクロプス。
そこでサイが僕に呼びかける。
「これだけこちらの軍が推されているともなると、まだ、敵陣営の上を飛ぶと対空砲火に晒される可能性があります。」
「なるべくですが、味方陣営の上を飛びつつ、向かってきた敵航空勢力への攻撃が有効かと思われます。」
「了解だ。勝算があるならそれでいい。」
しかし、ルビー隊のような大人と戦闘する事になるとは。
銀河帝国の大人の軍人は、なんでも厳しい訓練を乗り越えて来た、そんな人たちらしい。
しかも最新鋭機サイクロプス。おそらく火星を陥落させたのも大人の部隊の力があってのものだろう。
機体スペックなら圧倒的に上だが、それだけで勝てるだろうか。
僕はただのクローンなのに、大人の兵士に。
「パイロット、弱気になってますね。」
サイが僕の心境に気づく。
「少年兵団から見た大人の兵士は英雄そのものだった。そんな人たちに面と向かって勝てるか……」
「パイロット、先程倒したではないですか。」
「あれは偶然で……」
「パイロット、この命の奪い合いに偶然なんてありません。パイロットのロックオンに相手も気付いていたはずです。それでも避けきれなかった。」
「射角、そして軸、それは全てパイロットがコントロールして編み出したものです。それで相手が避けきれないなら、我々の方が上手だと言うことです。」
「それがダメなら私が計算しなおします。我々は2人で戦っているのです。」
サイは本当に頼りにもなるし、それだけじゃない。僕の気持ちを持ち上げてくれる。
「そうか。僕らは2人で戦ってる。負けるわけがないな。」
「その意気です。パイロット。」
味方から通信が入る。
「フライトユニット付けた援軍!?しかもストライカー!?」
味方からの通信を受けて、僕は作戦指揮を行う空母ツクヨミに通信を入れる。
「コマンドポスト、こちらストライカー。ブレイブ2のケイだ。フライトユニットを手に入れた。敵航空勢力の対処に向かう。援護を要請する。」
「こちらツクヨミ。まさか基地に残されていたとは。了解した。全機、戦線を押し上げ対空砲の撃破に迎え!敵航空勢力は頼みの綱、ストライカーが対処に当たるそうだ!」
丁度友軍機達の上を飛んでいる。
友軍機達のは通信で僕に応援を送り、そして、決死の攻撃に向かう。
ルビー隊は動きを察知し、僕の存在に気づく。
1機を失い、7機の編成。
隊列を組んでこちらに攻撃を仕掛けてくる。
エンゲージ!
ファーストコンタクト。
僕はもう出し惜しみはしないと思い、フライトユニットに付いている空対空ミサイルを全て放つ。
6発のミサイルを向かってくる1機に放つ。
サイから
「パイロット、いい判断です。」
と声がかかる、
そのサイクロプスは回避行動を必死に取るも、振り切れずに爆散。
その隙に盾を構え、ガトリング、そしてアサルトライフルで射撃。
それは残念ながら当たらない。
ファーストコンタクトで空対空ミサイルの攻撃がないとなると、敵は降下作戦の時にミサイルを使い切ってるようだ。
しかし、背中に付かれるのはまずい。相手はまだ6機もいる。
そこで地上部隊からの援護が入る。どうやら敵の対空攻撃用武器を奪った味方のようだ。
「ストライカーのパイロット!俺も加勢するぞ!」
そう通信が入る。
対空砲火を浴びて6機のうち1機のフライトユニットが火を吹く。そして爆散。
敵は対空砲火を回避行動して、その機体を叩こうとする。
低空飛行に移ったところを高所から有利を取る。
敵1機に向かい、ガトリングの掃射を行う。
機体からフライトユニットにかけて掃射を浴びた敵機は爆散する。
しかしもう遅い。
支援をしてくれた味方機はヒートブレードで両断されていた。
「助けられなかった……」
「パイロット、今は集中してください。」
再度上空に上がった敵機のモノアイが僕を捉える。
4機とのドッグファイトが始まる。
なるべく友軍の陣地の上を飛ぶようにして立ち回る。
地上からアサルトライフルやバズーカ砲で援護が入るが、やはり高速で動いている航空勢力に当てるのは難しい。
4機に追われる形となる。
ロックオン警報が鳴り止まない。
ガトリング砲を背面に向けて掃射する。
そうすると僕を捉えようとしていた1機に運良く当たる。当たりどころが悪かったらしく、そのまま下に落ちていく。
そこでサイから提案がかかる。
「パイロット、Gはものすごいかかりますが、振り切るにはターンをするしかありませんね。」
「機体制御は私に任せて、思いっきり旋回してください。」
「了解した!任せるぞ!サイ!」
機体をターンさせる。確かにかかるGはものすごい。血管が切れそうだ。なんとか耐える。
後ろを追う3機は射撃をするも、僕に当てることはできなかった。
サイが上手に機体を制御したからだろう。
そうしてアフターバーナーを再点火、今度はこちらが向こうを追う番だ。
1機が立ち止まってこちらを射撃しようとする。
「考えが甘いですね。」
とサイが言う。
その敵機にアサルトライフルの射撃をお見舞いする。
動いていなければもちろんそうなる。
全弾命中し、下に落ちていく。
「しかし、サイ。本当にこれが銀河帝国軍の核を担う部隊だとは思えない。」
「パイロット、私も色々と思考をしましたが、戦闘を終えてから言いますね。」
残る2機。そのうち1機にロックオンをする。
今度は僕が後ろを取っている。
「当たれっ!!」
フライトユニットのガトリング砲で攻撃する。
敵機のフライトユニットに着弾。空中で爆散する。
最後の1機。
機体を高速のまま旋回させ、距離を詰められる。ヒートブレードを構え、空中で白兵戦をするつもりだ。
「来る……!」
敵機の一振りをなんとか躱す。
躱しながら、スラスターで姿勢を整える。そうしてガトリングで攻撃をする。敵機は被弾したが、まだ向かって来る。
「勇敢ではありますが、少々無茶のし過ぎですね。」
サイは冷静に分析してる。
ヒートブレードの斬撃がまた僕を襲う。僕はそれをぼろぼろになったシールドで防ぎながら、アサルトライフルを腰にマウントし、対アームド用ダガーを取り出す。
それを敵機のコックピットに突き立てる。
敵機は力が抜けたように、下に落下していく。
「やった……」
「パイロット、お疲れ様です。」
*
「最後の1機、おそらく隊長機だろうけど、それ以外は、それほど強くなかった。そういえば考えがあるって言っていたが、何故なんだ?」
降下しながら僕はサイに語りかける。
「パイロット。おそらくルビー隊は少年兵団ありきで編成された部隊だと推測されます。要するに少年兵団との連携が取れない状況に持ち込めばこの通り、普通のアームドパイロットなのです。」
「パイロットも言っていたと思いますが、少年兵団はおそらく、先程の戦闘でも捨て駒のように配置されています。そこの上にルビー隊のような部隊を置くことによって、少年兵団と、いい言葉で言えば連携。悪い言葉で言えば盾のように扱って立ち回れるのです。」
「サイ。解説をありがとう。英雄のように見えた部隊も、少年兵団を捨て駒に扱って、盾のように扱ってたからなんだな。」
「パイロット、だからと言って銀河帝国軍への怒りに任せ、敵陣に突っ込むなどはおやめくださいね。戦場では冷静さを欠いてはいけません。」
「確かに怒りは感じるが、そんな事しないさ。まず、戻るところがあるだろう。」
「その通りです。さぁ、皆さんの所へ戻りましょう。」
火星の空を滑る。
下の戦況は、ルビー隊を陽動し、撃破した事もあって、こちらが圧倒的に有利となっていた。
3機がデータリンクを結んでる場所まで飛んでいく。
もう対空砲火もほぼなくなっていた。
マキシに通信を入れる。
「ルビー隊をやった。僕も合流する。」
マキシから折り返し通信が返ってくる。
「坊主……!やってくれるとは信じてたが、凄いぜ!空中戦で8機も落とすとは、驚きだ!」
「よーし!坊主も合流する事だ!一気に戦線を……」
そう言って言葉が途切れ、マキシがまた喋りだす。
「な、なんだあの機体は!新型か!?いや、まさか……ストライカー……!?」
マキシが動揺している事が伝わってくる。
「どうした!?何があった!マキシ!」
マキシは僕の問いには答えない。交戦しているのだろう。
「は、速いッ!並の人間がやれる技じゃねぇ!!」
「坊主!!合流は早めにだ!!なんとかこっちで、敵の新型を食い止める!!」
敵の新型……?
「パイロット、早く行きましょう。何か、嫌な予感がします。」
アフターバーナーを点火し、みんなの所へ向かう。
無事でいてくれと願いながら。
24話へ続く。




