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金四郎のスマホ世界でのある場所の活動記  作者: pipingjam
第5編:記憶編
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さんじゅういち 記憶保管庫の扉

未登録エリアの奥。


半次郎は、目の前に現れた大きな扉を見つめていた。


【記憶保管庫】


その文字は、普通のランプ画面では絶対に見ることができないような古いデザインだった。


現在のランプは、明るく華やかだ。


イベント、ガチャ、ランキング、部屋作り。


誰でも楽しめる場所になっている。


しかし、この場所は違った。


まるで時間が止まっている。


古いコメント。


消えた日記。


存在しなくなったアバター。


それらが静かに保存されていた。


「……ここに、昔のランプがあるんだな」


半次郎は小さくつぶやいた。


自分が遊んできた世界。


楽しくて、笑って、時にはガチャで大失敗して叫んだ場所。


その始まりが、ここにある。


でも同時に、不安もあった。


もし、この場所にある記録が、自分の知らない自分を示していたら。


もし、半次郎ではなく金四郎としての過去に、何か隠されていたら。


「入る?」


料理人フレンドが優しく聞く。


その声で、半次郎は少し安心した。


「……うん」


「ここまで来たなら、知りたい」


すると横から発光体が割り込む。


「当然です」


「発光体さん?」


「未知のエリア。限定データ。過去ログ」


発光体の体がいつも以上に光り始める。


「つまり、レア情報です」


「そこなの?」


半次郎は思わずツッコんだ。


「普通は怖がるところじゃない?」


「怖さより価値です」


「相変わらず考え方がゲーム脳だな……」


いつものやり取り。


その瞬間だけ、緊張していた空気が少し軽くなった。


しかし。


寝落ち神だけは、扉を見たまま動かなかった。


「……」


「寝落ち神?」


半次郎が声をかける。


すると、いつもの眠そうな声で答えた。


「ここ……昔入ったことある」


全員が止まる。


「え?」


「え?」


料理人フレンドと半次郎の声が重なる。


寝落ち神は目をこすった。


「たぶん」


「たぶんって何!?」


半次郎が叫ぶ。


「寝てたから」


「寝ながら入ったの!?」


発光体が静かに言う。


「新記録ですね」


「褒めるところじゃない!」


半次郎のツッコミが響く。


だが、寝落ち神は真面目な顔をした。


「でも……覚えてる」


「何を?」


「この中に、最初の半次郎がいる」


その言葉で、空気が変わった。


半次郎は息を止める。


「最初の……半次郎?」


寝落ち神はゆっくり扉を見る。


「ランプにはね」


「最初から、名前を引き継ぐ仕組みがあった」


「誰かが消えても」


「誰かが続けるように」


半次郎は画面を見る。


自分はただ遊ぶために作ったアバターだった。


半次郎という名前も、なんとなく決めただけだった。


でも。


もし、それが偶然ではなかったら。


ピコン。


突然、スマホ画面に通知が届いた。


非公開ユーザー。


『開けてください』


『あなたは、まだ自分の始まりを知りません』


半次郎は震える指で扉に触れた。


すると表示が変わる。


【認証中】


【利用者確認】


【金四郎】


その瞬間。


半次郎のスマホから、知らない音声が流れた。


『確認しました』


『初代利用者』


『記憶データを解放します』


扉がゆっくり開く。


その奥にあったもの。


それは――


昔のランプの部屋。


そして中央に置かれた一台のスマホ。


画面には、古い日記が表示されていた。


投稿者。


【金四郎】


日付。


ランプ開始日。


本文。


『今日から、この世界を作る』


半次郎の顔から、笑顔が消えた。


「……俺が?」


しかし、その次の文章。


そこには信じられない言葉が残されていた。


『いつか、この世界を探しに来る人へ』


『その時、もし俺の名前を忘れていたら――』


『半次郎という名前を使ってください』


半次郎は動けなかった。


自分が選んだと思っていた名前。


でも、それは――


過去の自分が残した名前だった。


そして画面の最後に、新しいメッセージが表示される。


『次に会うべき相手は、初代管理者』


『あなた自身です』


その瞬間。


記憶保管庫の奥から、足音が聞こえた。


誰かがこちらへ歩いてくる。


半次郎たちは、静かにその姿を待った。


現れたアバターの名前。


【半次郎】


しかし、その姿は今の半次郎とは違っていた。


そして彼は言った。


「やっと会えた」


「未来の俺」


――

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