正直村の殺意
【問題】
正直村の村人は、質問に対して真実しか答えません。
嘘つき村の村人は、質問に対して嘘しか答えません。
嘘つき村の村人が1人、正直村の村人の中に紛れています。
あなたは質問をして、村人A〜Cのうち、嘘つき村の村人を当ててください。
私のいる「空間」には、3人の村人がいて、1体の死体があった。
私:あなたたちはどこの村の村人ですか?
村人A:正直村です
村人B:正直村です
村人C:正直村です
それはそうである。正直村の村人は、自分は正直村の村人だと正直に答えるし、嘘つき村の村人は、自分は正直村の村人だと嘘を答えるに決まっている。
違う質問をしなければならない。
私:あなたたちはパクチーが好きですか?
村人A:嫌いです
村人B:好きです
村人C:嫌いです
分からない。この質問では誰が真実を言っていて、誰が嘘をついているのか全く分からない。食べ物の好みは人それぞれであり、ましてやパクチーは好き嫌いがハッキリ分かれる食べ物である。
そうでなく、仮に正直に答えれば3人の答えが揃うはずの質問をすべきなのだ。そうすれば、1人だけ違う答えをした者が嘘つき村の村人と断定できる。
私:あなたたちは子猫は好きですか?
村人A:好きです
村人B:好きです
村人C:嫌いです
怪しい。子猫が嫌いな人間はいないはずだから、村人Cはかなり怪しい。とはいえ、完全に黒と決めつけるわけにはいかない。もしも村人Bと村人Cが猫アレルギーだとしたら、村人Cが真実を言っていて、村人Bこそが嘘を言っていることになる。これだけではまだ特定することはできない。
私:あなたたちはタピオカミルクティーは好きで……
村人A:ちょっと待ってください。嘘つき村の村人を当てるという目的に純粋なのは良いですが、純粋すぎます。普通に考えて、もっと気になることがあるはずです
村人Aの指摘はごもっともである。ここには村人3人に加え、1体の死体があるのだ。しかも、死体の胸にはナイフが刺さっており、見るからに他殺体なのである。なお、刺し傷はナイフが刺さっている1箇所しかない。
私:あなたたちはこの人を殺しましたか?
村人A:殺してません
村人B:殺してません
村人C:殺しました
よし分かった。
私:それでは当ててみせましょう。正直村の村人に紛れた嘘つき村の村人は、村人Cです。なぜなら、村人Cが仮に正直村の村人だとすれば、村人Cの「殺しました」という答えは真実ということになります。他方、村人Aか村人Bのいずれかが嘘つき村の村人だということが確定します。とすると、村人Aか村人Bの「殺してません」という答えは嘘ということになりますので、村人Cも、村人Aか村人Bのいずれか一方も殺人犯ということになってしまい、矛盾します。刺し傷は1箇所なので、2人ともが殺人犯だ、ということはありえないからです。ゆえに村人Cが正直村の村人であることはありえないのです。よって、嘘つき村の村人はCです
我ながら完璧な推理である。水を差すことは誰もできないだろう。
村人B:いやいやいやいや、ドヤ顔しないでください。その推理は無茶苦茶ですから!!
私はポカンとする。私の論理のどこに欠陥があるというのだろうか。
村人B:今、村人Cが嘘つき村の村人だと言いましたが、仮に村人Cが嘘つき村の村人だとすると、村人Cは殺人犯ではないことになります。他方、村人Aと僕は正直村の村人ということになるので、村人Aも僕も「殺してません」との言葉のとおり殺人犯ではないことになります。とすると、誰も殺人犯ではないということになり、そこにある死体の存在が矛盾します
村人A:なるほど
村人B:もっとも、この矛盾を解消する方法が1つだけあります
この村人、なかなか鋭い。嫌な予感がする。
村人B:「あなた」に質問します。ここは正直村ですから、「あなた」も当然に正直村の村人ですよね?
私:そうです
今、「違います」と答えようと思ったのだが、自然と「そうです」という答えが出てしまった。これが正直村の村人の性というものなのか。
私はもうチェックメイトされていたのだ。
村人B:もう一度「あなた」に質問します。殺したのは「あなた」ですね?
私:そうです