ジル・エレクトール
「…ラン君、最近闘技場に行ってばっかりだね…。」
リンセルアンセル両方と付き合うことになってから早2週間。
俺は…、闘技場にいた。
「…学園、楽しくないの?」
「そんなことはないよ。…充実もしてる。」
アンセルが、少し心配そうな顔でこちらを見つめてきた。
今までとは打って変わって、感情を出せるようにはなってきたし同時に、冷たい感じがする雰囲気も徐々に暖かくなってきた気がする。
サイコル…の特徴ェ…。
罵られたいって、思ったことはないけどね!
「…でも、自由授業は全部魔法訓練と身体訓練に当ててるし…。」
「俺が二人を守るんだよ。」
アンセルの目をしっかりと見つめる。
彼女の目に、不安の揺らぎがあった。
「…二人とも、大好きだからな。」
…闘技場なら金も入るし。
結局、生きていくためには金が必要だ。
「…このごろ、おかんの調子がおかしい。」
おかんって…。
ウスギリか。
…確かになぁ。
「…まあ、苦労人だし。」
「おい、ロキアス! 次の試合お前だぞ!」
「…ん、ああ! アンセルごめん、今日はこれで最後にするから。」
アンセルが俺の腕をそっとなでる。
「気をつけて。」
「ああ。」
勝っちゃいました。
ダメなんだよ。
絶対相手が「ウェイカーだから魔法使えないだろう」っていう判断でくるから…。
武器を生成した時点で既にあいては戸惑う。
噂に聞いていても、なかなか対策はとれないのかね。
その場合、だいたい負けるのは相手がフライドかサイコルの時だけ。
「…お疲れさま。」
「ああ、ありがとう。」
アンセルがタオルを持ってきてくれた。
それを手にとって、彼女に話しかけた。
「…今からどっか、行くか?」
「…うん、お願いします。」
…よよ?
なんで敬語?
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「…アンセルって…、何か好きなものあるのか?」
「…本が好き。…あとラン君が好き。」
俺はものか。…うれしいけどさ!
…でも、…ああ、具体的にって事ね。
「たとえば…好きな花とか、そういうの。」
「…好きな花は…アイスドロップが好き。」
アイスドロップ…。
聞きなれない花だな。
今度、探しに行くか。
「誕生日は?」
「…神様の聖誕祭…。」
「…それ、いつ?」
この世界には、属性ごとに神様が居て、聖誕祭というものを祝うらしい。
…俺には理解できん。
クリスマスみたいな奴かな?
…去年はリンと一緒にいたけど、あまり特別なことはしていなかった。
「…9月24日…。」
…ああ。はい。
この世界は暦で季節がはっきりし過ぎている。
9ヶ月周期だから、確実に9月は冬だ。真冬だ。
何度もいう、この世界に秋は存在しない。
「ありっ? アンセルとランじゃん?」
「…ウスギリか。…お隣さんは?」
ウスギリが…男と歩いていた。
鷲みたいな翼が生えている。
フライドか。
「ああ、ジル・エレクトールだよ。…俺の幼なじみだ。」
「初めまして。」
…なんていうか、うん。
礼儀正しい。
顔は…傷。
頬に『メ』みたいな感じの傷。
「…ああ、これですか。…これは暴漢に絡まれたときに付いた傷ですよ。大振りのナイフで切られましてね。」
なるほど。
…まあ、物騒なんだろうな…。
アンセル、頼むから無表情で顔をそっちに向けるな!
「…ところで、アンセリツティア嬢と、貴方…ラン・ロキアスが交際をしているというのは事実ですか?」
はい、爆弾きましたー。
俺は気にしないけどね!
「ああ、リンセルとも付き合ってる。」
「…それは、双方に了承を得て、ですか?」
うん。やはり顔色が変わるか。
こんなに人気があるのか、アンセル…リンセル…。
「もちろんだ。…本人に聞けば?」
「…まあ、それが正論でしょうね。」
エレクトールはうなずき、アンセルに話しかけようとして…失敗した。
「…う、美しくて正視できない…。」
どれだけ美人なんだよアンセル!
アンセル本人は、引いたような目でエレクトールを見つめていた。
「…そんなにかぁ?」
「…ウスギリも普通に話をしているのが驚きです。」
俺はお前が驚きだ。
どんな目してるんだ。
ああ、傷のせいかそうかそうか。
「む、傷のせいではないですよ。失礼な。」
「俺って、顔に出やすいタイプ?」
洞察力たっか。
「…そんなの、承認を得てるに決まってるじゃない。」
アンセルが不機嫌そうに呟いた。
それを見て慌て出すエレクトール。
…端から見ると、凄く愉快である。
「…まあ、これからよろしく、エレクトール。」
「ジル、でお願いします。」
鬼気迫る顔で強調された。
「…ああ、ジルは名字を好まないんだ。」
「ということです。ジルで。」
「ああ分かった分かった。」
うっさいな。
イチイチ強調するなよ、チミィ。




