約束
へえ、人工魔力って、つまりは前の世界の「発電」で作られるものなのかー。
やっぱり本は必要だね。
…人工魔力について表面上でよかったのに、専門書を買わないといけないなんて予想してなかったけど。
何ページあるんだこの本。
いや…何センチあるんだこの本。
リンに辞書を借りればよかったなと思いつつ。
ん、ドアをたたく声が聞こえる。
「アンセル?」
部屋に入ってきたのはアンセルだった。
いつも通り無表情…ではなかった。
悲しそうな顔をして、俺を見つめてくる。
「…ラン君は、リンセルと付き合っていたりしないの…?」
「…いきなり何を聞き出そうとしているんだ。」
一気に脱力し、そのあとにアンセルを見つめる。
…今日はいつもの冷たい感じが一切ない。
…ずっとそのままで居てくれよ。頼むから。
「…心配しなくても、まだ付き合ってないから。」
「…ホント…?」
頷くと、アンセルは…。
俺をベッドに押し倒した。
「アンセル!?」
「…落ち着いて。」
気持ちよくしてあげるから、とアンセルは妖艶に笑った。
「リュー君…。」
「…ずっと思ってたけどさ、リューって誰?」
うん、ずっと考えてた。
彼氏…だろうなって。
なのに、こんな事していていいのかよと。
「…聞きたいの?」
「…ああ。」
アンセルが俺を引き起こす。
妖艶に笑っていた顔は一変、泣きそうな顔になっている。
「…リュー君はね…?」
「お姉ちゃんも、やってること変わらないじゃん。」
突然、ドアが開いた。
リンセル…いつのまに。
…パジャマ姿も天使です。
しかし…ずっと聞いてたのか?
「…リンセルにも関係のあることだから、黙ってて。」
「リュー君の事? …何回も言うけど、ラン君はリュー君じゃない…!」
何ともいえない感情を、リンセルは全身で露わそうとしていた。
正直言って、怖い。
俺に許可を取り、彼女はアンセルの反対側に座る。
…話が終わったら二人とも可愛がってやろう!
付き合っていないけどな!
「…大丈夫よ。…もう分かってる。」
「……あのー。そろそろ…。」
「…あら、ごめんなさい。」
アンセルが息を吐く。
少したってから、アンセルは意を決したように呟いた。
「…リュー君…、リュー・ウルガは貴方に出会うまで私たちの一番大切だった人よ。」
だった?
…だったってなんだ?
…俺に乗り換えたっていう話じゃなさそうだしな。
リンセルが俺の手を握って、話し始める。
「リュー君はウェイカーで、…とてもかっこよくて、とっても優しくて…とっても強かった。」
ベタ褒めじゃないですかー!
…俺が勝てる訳ないじゃん。
いくらスロツにチート(?)にしてもらったとは言え、条件付きだもんな…。
「で…、私たち姉妹は殆ど同時期に、リュー君を好きになった。」
「ちょうど、今のラン君みたいな状況に陥っちゃったね…。」
迷惑かけてごめんなさい、とリンセルは頭を下げる。
アンセルは、そんなリンセルを悲しげに見つめながら言葉を続けた。
「彼は…親からのプレッシャーに負けて私を選んだ。…というより、リンセルが引いてくれたのかな?」
リンセルが頷く。
ついには俺にしがみつく形となった。
「でも…嫉妬したほかのウェイカーに、殺されたよ…。……いくら強いにしても…、50人に襲いかかられたら勝てないね…。」
…うぉい!
まあ、俺は構わんがな。
「俺は、二人を選びたいけど。」
そういうと、二人は一瞬輝くような目線を俺に。
しかし、すぐに慌てる。
とくにリンセルが。
「いいの? …プレッシャーに勝てる?」
「…そのときはそのときだと思うがね。…二人は心配するなよな。」
俺は【卓越者】だから…は理由にならないか。
でも、女の子を守るのは…、義務だと思うんだ。
格好つけた訳じゃない。
でも…大好きな幼なじみ一人、前の世界では救えなかったから。
「…二人とも、大好きだよ。」
「……。」
「……。」
リンセルもアンセルも黙り込む。
…すこしして、二人が真っ赤になった。
…そういうところだ。
本当に可愛いと思えるところ。
全部、全部。
守りたくなる。
好きだって何度も伝えたくなる。
「でも…いくつか守ってほしいところがあるんだ。」
「「…?」」
さすが双子。
両方同時に小首を傾げるとか…。
ぐへへ…おっと失敬ゲフンゲフン。
「一つ目、…姉妹でもう争わないこと。…俺にとって、上も下もないから。」
リンセルがアンセルを見つめ、アンセルがリンセルを見つめる。
そして、両方が恥ずかしそうに下を向いた。
「二つ目、何かあったらすぐに言うこと。…心配するから、な?」
二人が頷くのをみて、本当に俺って幸せだな、と思う。
「最後。…俺はこの世界のことをまだよく分からない。…俺は【卓越者】であるとともに、転生者でもあるんだ。…これは内密にしてほしい。」
「ふへぇ?」
「…ん?」
あ、これには二人とも意外に思ったか。
そりゃあそうか。
「…リュー君と一緒…。」
「お姉ちゃんっ! それはもう言わない約束!」
「あ…。」
…リュー・ウルガって、俺の前世だったりするのかな。
…最近はスロツも出てこないし。
「ということだ。」
「…はい。」
「うん!」
はい、二人の美少女を手に入れちゃいました。
…ハーレムじゃないぞ?
この出来事が、彼女たちと出会ってから1ヶ月半後くらいの…話だった。
これで第2章は終わりです。
次回から第3章です。
また、彼らの学園生活をお楽しみいただければ嬉しいです。
ありがとうございました!




