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王妃様のお菓子

あれ? どっかで見たサブタイトル(笑)

河原までジルコニスを引っ張って行ったルビーは、いつものお気に入りの場所で腰を下ろした。

立膝をした上には、王妃様お手製のマドレーヌの入っているという、きれいにラッピングされた菓子箱。


王妃様のお手ずから作られたお菓子なんて!!


あまりの興奮から手は震えるが、それに反して瞳はキラキラと輝いている。

そんなルビーを横から優しい顔で見守っているジルコニス。


「ほら、あけてみ? なかなかレティ様上手に焼かれるんだぜ! あ、ラッピングもレティ様がやってたな」

「本当? わぁ……なんかドキドキしちゃうわ」

「まあ、王妃様だもんな」

「王妃様だもん」


クスクスと笑いながら、丁寧にラッピングを解いていく。

中から現れたマドレーヌは、素朴ながらもきれいな焼き色に出来上がり、それはそれは甘い香りを発していた。


「きゃー…… すごい! プロみたい!!」

あまりの出来のよさに、箱を開けた手のまま身動きができないルビー。

中に入った香しい焼き菓子に、視線は釘づけになる。

「言っただろー。おかしなものさえ入ってなければ、レティ様のお菓子の腕はなかなかのもんだよ」

にっこり笑いながらおかしなことを言うジルコニス。

「おかしなものって……」

「大抵は薬草だな。薬草入りショコラ、薬草入りマドレーヌ……極めつけはやっぱ薬汁だな。原液だしな」

またしても遠い目になるジルコニス。


王妃様はよほど薬草がお好きらしいわね。薬草を美味しくお菓子に取り入れるのもありかもしれない!!


我知らずレティナイズドされるルビー。こちらも少し心を飛ばしてしまっている様子。




「……ほら、食べてみ」

先程まで遠いどこかをさまよっていたジルコニスが、先に戻って来て、ルビーに試食を勧める。その言葉にハッと戻ってくるルビー。

「うん、いただきます!!」

そっと、大事そうに箱から一つつまみ上げて、目の前まで持ち上げ、まずは観察する。


綺麗な焼き目。甘いバニラの香り。つまんだ感じは柔らかすぎず、少しの硬度を感じさせる。

おもむろに口に含めば、外はさっくり、中はふんわり。

優しい甘さが口いっぱいに広がる。


「……わぁ、美味しい……」

「だろ?」


見た目同様、素朴な甘みと味わい、甘い香りにうっとりとなるルビー。華やかな見た目の生菓子とは違った、優しい味わい。口の中でほどけていくような、そんな口当たり。

レティエンヌ王妃の優しさが、ここに現れているような気がした。


「王妃様って、お優しい方なんだね」

「まあな」


優しい味わいのマドレーヌを口にして、遠いはずの王妃様の人柄が伝わってくる気がした。

ルビーの言葉に肯首するジルコニスからも、そのことはうかがえた。

王妃様を思い浮かべるジルコニスの表情は、穏やかな微笑み。

ルビーも優しい笑顔になれた。

先程までのイライラは何処へ? である。





「私も、こうやって誰かを幸せな気分にしたいなぁ」


王妃様のマドレーヌを口にして、自然とルビーの口から出てきた言葉。

「ん?」

くいっと眉を上げ、ルビーの方を伺うジルコニス。

「直接ではなくても、こうやって、自分の作ったものが、誰かを幸せにするの。すごくいいと思う。」

「ああ、そういうことか」

「うん。メイドさんの仕事も素晴らしいものだと思うわ。誰かの役に立つんだもの。でもね、何か、形にならないじゃない。私は形にしたいんだわ。自分の作り出したものが、誰かの幸せの一翼を担えるって、素敵じゃない?」

「あー、なるほどね」

「王妃様のお作りになられたマドレーヌで、私は幸せな気分になれたの。これって、すごいことなんだよ、きっと!」

「そうだね」

ニコニコと相槌を打つジルコニスだが、内心『レティ様のマドレーヌで、そこまで達観できるルビーは凄いよ……』と思っていたのは誰にも気づかれまい。


「やっぱり、菓子職人になるわ。うん、決まった!」


すっくと立ち上がり、やっと自分の進路を確信できたルビー。

進路を考え始めてからようやく、晴れ晴れとした笑みが、ルビーの顔に戻った。


「よかったじゃねーか。オレも役に立ったか?」

冗談めかしてジルコニスがルビーに問う。ジルコニスも、なかなか実家に帰れないながらも、隣の妹同然のルビーの悩みは聞き及んでいたから。

ぱんぱん、とお尻に付いた草や土を払いながら立ち上がる。

「すっごい、いいヒントをくれたよ? さっすがジル兄ちゃん!」

満面の笑みで答えるルビー。

「じゃ、そろそろ帰るか。ほら、お迎えが来てるぞ?」

ルビーから視線を逸らせたなと思っていると、ニヤリ、と笑うジルコニス。

「お迎え?」

と、キョトンとなるルビー。

小首をかしげて、向かい合ったジルコニスの視線を、振り返り追う。


するとそこにはジェダイトが立っていた。




「ジェダ~!! どうしたの~??」

土手の上に立つジェダイトの元に走り寄る。

「いや、ジル兄とこっちに来るのが見えたから……」

なんだか気まずそうに視線を逸らすジェダイト。心なしか顔も赤い。

「そっか! ジル兄ちゃんを迎えに来たんだね? 帰ってくるの、久しぶりだもんね! あ、そうだ、ジェダもマドレーヌ食べない? ジル兄ちゃんのお土産なんだけどね、なんと王妃様の手作りなんだよ~!!」

無邪気に笑いかけながら、ルビーはジェダイトにもレティ様特製マドレーヌを勧める。

「え? え?」

王妃様とか、普段あり得ない名詞に驚くジェダイト。

「ま、帰ってからみんなで食べればいいさ。な? ジェダ」

土手を上ってきて、ルビーとジェダイトの元に来たジルコニスが、先程の菓子箱をルビーに渡しながら、ジェダイトに笑いかける。

「あ? うん?」

ジェダイト一人だけが、イマイチ話が分からずにキョトンとしているのだった。


今日もありがとうございました!

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