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n番煎じの脇役令嬢になった件について  作者: 此花サギリ


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第90話 帝都との影響戦

 北方領で子爵位を賜った報せが、帝都にも届いた。


 報告を受け取ったのは、帝都商会界隈の有力者たち、そして密かに動き回る若き令嬢たち――リリア・フェルミナとメアリー・スーだ。


 北方領での私の都市はすでに人口一万を超え、商業施設、学校、物流、医療施設までもが整備され、都市全体が安定の兆しを見せている。

 情報はゆっくりと帝都に流れ、私の商会の活動や都市の成長は、リリアとメアリーの耳にも自然と入ることとなった。


 「……北方領のレスティーナが子爵位を授かるとはね」


 リリアは鏡に映る自分の姿を整えながら呟く。

 十三歳の少女にして男爵家の後援を受け、元平民から華やかな令嬢として帝都に登場した彼女は、完璧な笑顔と柔らかい言葉で周囲を掌握するのが得意だ。

 だが、今回の北方領の発展を知った瞬間、その笑顔にはわずかに苛立ちが浮かんだ。


 「北方領の都市……どうやってあの子はあんなに早く人口を増やしたのかしら」


 目を細め、思考を巡らせる。帝都の情報網や商会のルート、噂を操る手段――すべてを駆使しても、北方領のレスティーナに直接太刀打ちできる要素は少ない。

 しかも、彼女の商会には帝都の商人たちも関心を持ち始めている。情報戦、間接戦の舞台は、すでに北方領で整っていた。


 一方、メアリー・スーは噂を耳にして眉をひそめる。

 何度も商会を立ち上げては破産してきた彼女にとって、北方領の成功は嫉妬と焦燥の対象だ。

 「くっ……また、あの子か……!」


 だが、メアリーにはネットショップの存在も、レスティーナの物流や資材管理の裏側もわからない。

 だからこそ、北方領の繁栄の理由を推測するしかなく、あれこれ策を巡らせては敗北を繰り返しているのだ。


 帝都では、リリアもメアリーも、北方領の成功をどう攻略するかで頭を悩ませる。

 それに対し、私――レスティーナは、遠く北方の領地で静かに都市の運営を続けていた。


 広場では市場が活気づき、農民や商人たちが笑顔で働く。

 商会では新たな物資搬入が始まり、学校では子供たちが楽しそうに学ぶ声が響く。

 物流は滞りなく、商業施設は常に活気に満ちている。

 都市の成長は目に見えており、私の戦略は確実に成果を上げていた。


 だが、北方領と帝都は離れている。

 だからこそ、帝都の二人の少女は直接手を出せない。

 彼女たちができるのは、情報操作や噂流布、商会戦略で間接的に北方領に影響を与えようとすることだけだ。


 「なるほど……間接戦か」


 私は胸の内でそう呟く。

 帝都の商会戦略や情報操作を察知し、北方領での都市運営に反映させる――これこそが、私が打てる最も効率的な反撃策だ。


 例えば、輸送ルートの改善や新規商業施設の設置、特産品の販売促進などを行い、帝都商会の噂や策略の影響を最小化する。

 市民や農民の生活を豊かにし、北方領そのものの信頼度を上げることが、最大の間接防御となる。


 「よし……これで帝都の二人も驚くだろう」


 街の中心に建てた市場では、日々新しい店が開店し、商会の収益も順調に伸びている。

 市民たちは笑顔で取引を行い、物流も精密に管理されている。

 これまでの失敗や混乱はすべて改善され、都市は盤石の基盤を持つに至った。


 遠く帝都でリリアやメアリーが焦る姿を想像し、私は静かに笑った。

 彼女たちの策略は、私の都市の繁栄の前では紙のように薄い。

 間接的に影響を及ぼそうとしても、成果はほとんどない。


 「北方領は、私の手で守り、さらに発展させる……」


 広場の中央で、市民たちの笑顔を見ながら私は決意を新たにする。

 帝都と北方、両方で展開される間接戦。

 だが、都市の基盤がしっかりしていれば、どんな策略も受け流すことができる。


 日が傾き、空が茜色に染まる頃、市民たちの声は夕暮れの風に乗って響く。

 市場で働く人々、学校で学ぶ子供たち、商会で働くスタッフたち――皆が、北方領の成長を支えているのだ。


 私は微笑み、手帳に新たな施策を書き込む。

 物流の改善、教育の充実、商業施設の拡張、医療施設の整備――すべて、北方領の都市をさらに盤石にするための計画だ。


 そして、帝都の二人――リリアとメアリーがどんな策を巡らしても、北方領は揺るがない。

 情報戦も、噂の操作も、商会戦略も、ここでは私の都市の基盤に阻まれ、成果を上げることはできないのだ。


 「帝都との影響戦……まだ始まったばかり」


 私は夜空に瞬く星を見上げ、静かに胸の内で呟く。

 だが、その心には確かな自信があった。

 北方領の市民と都市、商会の繁栄――これが、私の戦力であり、帝都の策略を跳ね返す最大の盾だ。


 遠く離れた帝都で、リリアやメアリーがどんな策略を仕掛けようとも、北方領は私の手の中で着実に成長し続ける。

 その事実が、私に次なる戦略を立てる勇気を与えていた。



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