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n番煎じの脇役令嬢になった件について  作者: 此花サギリ


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第68話 皇子視察後の街

 北方都市グランテの城門前。穏やかな春の朝、街はすでに活気に満ちていた。三年前、荒れ果てた北方領に降り立ったときとは違い、町の中央広場には人々の笑い声や市場のざわめきが響いている。牛や馬の蹄の音、鍛冶場の金属がぶつかる音が街全体に満ちていた。


 丘の上に立つレスティーナ・フォン・グランテは、視察を終えたばかりの帝国第一皇子アルヴェルトの馬車を見送る。彼もまた、まだ十三歳とは思えぬほど聡明な表情を浮かべ、しっかりと背筋を伸ばして座っていた。


 (この子が……私と同じ歳で、将来は帝国の頂点に立つんだわ)


 思わず息を飲む。三年間、この街をゼロから作り上げてきたレスティーナにとって、王子の目に成果を映せたことは、何にも代え難い喜びだった。


 「よかった……王子様の目に、私の都市づくりが伝わった」


 横に立つエルガルトも頷く。


 「領主様、彼は非常に観察力が鋭いですね」


 「十三歳の少年だが、ただの皇子ではないわ……」


 レスティーナは視線を街へ落とした。舗装された石畳、整然とした商店、広場で取引に励む農民、学校で学ぶ子どもたち。三年前の荒廃した土地から、今や北方の経済と教育の拠点へと変貌を遂げた都市の姿がそこにある。


 「ジェイ、今日の物流と市場の状況を報告して」


 ジェイは手元の資料を開く。十五歳の少年でありながら、北方開拓と都市管理の一部を任され、レスティーナの右腕として街の運営に携わってきた。


 「はい、領主様。市場は活気があり、特産品の毛皮や北方産の穀物の取引は順調です。倉庫の在庫も十分ですが、北東部の森林地帯への資材搬入に遅延が発生しています」


 「理由は?」


 「春先の雨で道がぬかるみ、荷車の通行が困難になっています。また、一部の橋が老朽化しており補修が必要です」


 レスティーナは頷く。


 「橋の補修は今週中に。代替ルートも確保し、物流の停滞を防ぎましょう」


 ググル先生に問いかける。


 (資材搬入をさらに効率化するにはどうすればいい?)


 『橋の補修と並行して、一時保管倉庫を設置し、荷車を分散させることで遅延を最小化できます』


 「なるほど、ありがとう」


 その日の午後、レスティーナは市場へ赴き、現場の状況を確認した。広場では農民が作物を売り、商人が商品の値付けに忙しく、子どもたちは学校の絵本を手に遊びながら学んでいる。


 すると、北東部からの荷車がぬかるみに足止めされ、資材の搬入が滞っていた。荷馬車の車輪が泥に埋まり、荷物を降ろすこともできない状態だ。


 「皆さん、荷物を手で運んでください!」


 レスティーナが声を張り上げると、周囲の農民たちが次々と協力して荷物を運ぶ。重い袋を肩に担ぎ、倉庫まで運び入れる光景は、三年前の荒野での開拓の頃を思い出させた。


 ジェイも率先して指揮を取り、荷物の搬入作業は夕方までに無事終了。街は再び落ち着きを取り戻した。


 その夜、レスティーナの元にアルヴェルトからの文通が届く。王子は視察後、都市の発展に感謝し、自らの目で確認できたことを喜んでいた。そして、次回は再び北方都市を訪れ、直接都市の状況を見たいと申し出ていたのだ。


 (十三歳で……こんなことまで考えているのね)


 レスティーナは文通を読みながら微笑む。王子が視察に訪れることを見越し、さらなる都市発展の計画を練り始めた。


 次の課題は商業施設の拡張だ。北方都市では既存の市場に加え、工房や倉庫、宿泊施設を整備し、都市の経済循環をさらに活発化させる必要がある。教育面でも、学校の拡張や図書館の設置を計画し、未来の市民育成に備える。


 「ジェイ、これから一週間で学校の教室を増設し、図書館の蔵書を増やすわ」


 「了解です、領主様」


 街の灯りが夕闇に溶けていく中、レスティーナの頭には都市の未来図が広がっていた。北方都市グランテは、王命により統治されるこの地域で、人々の希望を背負い、着実に成長している。


 (王子がまた来るとき、この街はさらに変わっているでしょうね)


 そして、夜空を見上げるレスティーナは、小さな丘の上で街を守り続ける自らの決意を新たにするのだった。十三歳の彼女と、同じ年齢の第一皇子アルヴェルトが交わす視線の先には、北方の未来と都市の希望が確かに映っていた。



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