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最終話 欲しがり特急斜め上行き

【皆様!このメアリーは欲しがり妹、メアリー・スーです。騙されないで下さい!】


 とお姉様が熱狂を冷ましにやってきてくれた。



 ああ、お姉様、大好きだ!いつも、私のことを考えてくれている!



「お姉様!」


 私は壇上から飛び降りてお姉様の元に走る。


 スライディング土下座だ。


「欲しがりをして、ごめんなしゃいなの~」


「ヒィ、今度は何を企んでいるの?」


「企んでいないの。真心なの~」



 ザワザワザワ~



 信徒達の中には、


「何だ。こいつら」

「メアリー様の姉を名乗っているわ」


 とお姉様達に反発をする者もいれば



「嘘、あの欲しがり妹?」

「吟遊詩人で聞いたぞ」


 と幻滅をする者たちがチラホラいる。


 良い傾向だ。

 段々と声が大きくなる。


「だ、騙されたの」

「詐欺師?」


 しかし、折角の声が、打ち消された。


「ちょいとお待ち!あんたら、今まで散々、メアリー様を頼ってきたじゃないか?」

「そうよ。娼婦である私達にも普通に接してくれた」


「んだ。オラ、トムと結婚出来ただ」

「そうだ。メアリー様の事業で皆、職につけて豊かになったじゃないか!」

「メアリー様は小生を叱ってくれました」



 何だ。話が妙な方向に行く。


 すっかり景色だった老シスター様が叫びだした。おい、やめろ。いやな流れだ。


「グスン、グスン、わたしぁ、知っていたよ。躾け教育でメアリー様はこの修道院にきたのじゃ、でも、メアリー様は自分で善きシスターになられたのじゃ」



「そうか、この年齢で修道院に来る。訳ありで当然だ」



「そうじゃ、欲しがり妹ですら善きシスターにならん。いわんや、我ら庶民でも、善き女神教徒になれるのじゃ、それをメアリー様はご自身で顕現されたのじゃ!」



「「「「ハハーーーーーーーー」」」


 ハハーじゃねえよ。何故だ。


 手を組み祈る姿勢で泣きながら、私を見ている者もいる。



 あったな。アメリカの心理学者が、インチキ宗教の新聞広告を目にした。終末の日の予言が書かれていた。

 興味を持った心理学者は教団に潜入した。


 終末の予言の日が到来したが、何も起こらない。

 信者達は動揺した。やがて、平静を保ち。次の日、また、教祖の元に通うようになった。


 韓国では終末の日を過ぎたら、教祖は逃げだし、信者たちは暴れたり。泣き叫んだりした。


 お国柄か?


 これは、アメリカの方か?問題なしで世論がまとまり始めている。


 ヤバい。お姉様はどうする?



「メ、メアリーは、スー伯爵家で引き取ります!資産合併をします!欲しがりの慰謝料と今までの分を返してもらいます!」



 伯爵家?王都のタウンハウスか。領地じゃないの?



「それはいいの~、でも、合併は出来ないの~」

「何故?」

「逆さま合併なの~!」


 あったな。日本で住みやすい友を目指した銀行が、まさかの子会社の地方銀行と吸収合併した。規模は住みやすい方がはるかに大きい。その地方銀行は優良銀行だった。地方銀行の銀行員はどのような思いだったか。

今、メアリー財団の事業で働いている者が多数いる。その利益を私の身内の負債を帳消しにしたら、いい思いはしないだろう。



「でも、ほしがりの賠償をしなさい!」


「はいなの~!おいくらなの~!」



「お待ち下さい!」

 クロイツ君が出てきた。

 何だ。ソロバンのデカいのを持っている。


 パチパチパチと玉を動かして計算している。



「スー商会はドレスを扱っていました。原価です。しかも、メアリー様がご所望をしていたドレスは、オリビア様が幼少の時のものです。これは実質、無料です」


「でも、子供のために・・・」


「ドレスの流行30年サイクル説に則ると、オリビア様の子供には着せられません。孫の時代になりますが、その時は、既に生地が着られる状態ではないと思いますが」


「着させますわ!」


「保管料もかかりますよ。ですから、他の貴族の家では使用人に下げ渡したり。古着商に売ったりしています」


「ウグ・・・」


「更に宝石ですが、お父様フランツ様の方針で見栄えだけは良い三流品を扱っていました。これは銀貨2~3枚、月に4回ほど欲しがりをしたとして、まあ12枚、おねだりが覚醒したのはメアリー様が8才の時・・・・」


「また、欲しがられたオモチャや絵本も今はオリビア様の手元にありますよね。締めて、慰謝料を含めて金貨50枚になります。それはメアリー財団から支払いましょう」



「ヒィ、たったそれだけ?」


「それだけです」


「しかし、家長権はありますわ。まだ、伯爵家当主です!」

「それについては、父上がお話します。そろそろ来る頃です」



 ヒヒ~ンと流れるように、馬車の馬のいななきが聞こえて来た。


 やってきたのは、ヒゲヒゲのおじさんと、釣り目の令嬢だ。



「陛下のご登場である」


「「「陛下!」」」


 皆、一斉に平伏をした。膝立ちの姿勢だ。

 私は元々平伏をしていたから問題はない。


 やはり、この国の庶民は陛下に素朴な尊敬を抱いている。



「調査の結果、躾けとして修道院に預けたのは間違えだったと判明した。故に、賠償としてスー伯爵家の家督相続はメアリー嬢に決定する」


「ヒィ、そんな。いつも、メアリーばっかり・・」


「貴殿は貴族学園退学になったではないか?学園を卒業しないと貴族家当主になれない。

 しかしだ。貴殿は、決められた中では能力を発揮する。オスカー商会の雑貨部門の幹部候補生だ。上級平民として生きよ」



 お姉様・・・どうして、



「次にメアリー嬢よ。公爵家に養子になれ。家を継ぐまでエリザベスの義妹として貴族令嬢のマナー、教養を身につけよ」



 お姉様はガクンとうなだれた。



 私は・・・陛下に反抗した。


「ヤーなの!領地に戻ってお父様とお母様のお手伝いをするの~!」


 無礼だろう。許可を受けずに話しかけるなんて。


 しかし、ヒゲヒゲの男は、顎をかきながら、近くにより。小声で周りに聞こえないように話した。



「もお、どうしようもないのだ。魔石鉱山捜索隊、発見したぞ。埋蔵量は女神信仰圏で使用する70年分と予想される。

 貴殿の資金で出した捜索隊で発見したから、王国、土地の持ち主、出資者メアリー殿で三分の一の権利がある。メアリー嬢は厳重な警備が必要な立ち位置になったのだ。王族並だ」


「い、いらないの~!」


「だめだ。もう、サイは回った。知られれば、更に信徒たちは熱狂するぞ」


「ホエ~」


 吠え面をかいてしまった。



「フフフフ、このままだと貴女は、女神教の改革者として名を残すか。それとも、新興宗教の教祖として処刑されるかどっちかよ。

 この熱狂を鎮めるには、既存の権威に合流して、出世物語にするしかないわね」



「ヒィ、そ、そんな」


 私は懺悔をした。


「みんな~聞いて欲しいの~!懺悔するの~、私は欲しがり妹なの~!我が儘な貴族の令嬢なの~!」



「「「ウン、ウン」」」

「知っているわ」



「こんなメアリーが、公爵家の養子に行くのは間違っているの~!私は罪深いの~!」



「・・・いわんや、欲しがり妹ですら立派なシスターになれたのじゃ、ワシら凡人も立派な社会人、女神教徒になれるのじゃーーーーーー!」


「「「「オオオオオオオーーーーー」」」」


 老シスター、覚醒モードになったのか?

 ドラマや小説で主人公が危機になったら、覚醒する脇役キャラだったのか?



「「「メアリー様!」」」

「いいぞ!」

「もう、王子様と結婚して、御姫様になっちゃいなよーーー」


「ヒィ~」


 私は叫ぶしかなかった。




 ・・・・・



 お姉様はオスカー商会の雑貨部門でそれなりに成功している。

 八百屋の子を腹心として、新しい売り方が受けているらしい。


 私は、クロイツ君とアリスちゃんに引っ張り凧だ。


「メアリーちゃんはもっと、私の経典の講義を受けるのです!」

「これは、アリス様、今は私がメアリー様とダンスの相手役をする時間です!」


 お義姉様には何を言っても大きく捉えられている。


「さあ、私から欲しがって見なさい!」

「やーなの。月の生活費で十分なの~」

「フフフ、さすがね。小さいものはいらない。世界を欲しがっているのね」

「なの~~~~!」


 まるで、途中下車無しの特急電車、欲しがり特急に乗ったみたいだ。









最後までお読み頂き有難うございました。

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