第八十五話 学園祭二日目:後夜祭
教室の片づけをある程度終えたので、クラス全員で固まって体育館へと向かう。学園祭は終わったが、これからは学園生徒のみで行われる後夜祭の時間だ。クラスの出し物で使用した衣装での参加ということだったので、メイド達が行列を作って歩く姿はかなり圧倒される。
後夜祭は前半、中盤、後半で別れてスケジュールが立てられており、ダンス部の出番は中盤の一番最後になっており、一番盛り上がりがピークを迎える場面となっていた。終盤では学園祭での出し物の表彰とミスコンが行われるらしいのだが、そっちはあまり関係がない。
体育館に着いたらすでに人は大勢揃っていた。後夜祭は並ぶ場所などは決まっていないみたいなのでできるだけ前に行きたいところだが、三年の先輩方がすでに陣取っていた。学園生活最後の大イベントなのでそこを邪魔するわけにはいかないので、中盤あたりに陣取ることにした。
花と平と一緒に床に座っていると遠目に一成と詩織ちゃんが手を繋いで歩いているのが見えた。今日は二人きりにしてあげようかと思ったが、二人に気がついた空気の読めない平が声を掛けた。学園祭の間、二人きりになる時間はそんなになかったはずだから空気を読んでほしかったのだが、平だから仕方ない。
平に呼ばれた二人はこちらに歩いてきた。無視してもよかったのだが、結局合流することになったみたいだ。二人には申し訳ないことをしたかもしれない。主に平のせいで。
「三人だけ? 桜ちゃんは?」
「理事長に参加させてもらうようお願いしたんだけどだめだったよ」
「理事長に頼んでだめなら仕方ないな」
「せっかくのイベントなのに桜だけいないなんてなんだか残念です」
花の言う通りなのだが、通っている学園が違うのだからそこは割り切るしかない。桜がいればきっと楽しかったはずなのだが、そのことは考えないようにする。
「詩織ちゃんもバンド部で出演するの?」
「参加したかったんだけどもう演奏できる曲がないんだよねー」
「私は見れなかったので見たかったです」
「ごめんね花ちゃん。次にライブがあるときは絶対呼ぶから!」
「なあ、それって俺も行ってもいい?」
「もちろん! 私のかっこいいところ見せてあげるぜ!」
次のライブがいつになるかは分からないが楽しみにしておこう。平は間違いなくナンパ目的で聞いたのだろうからこれ以上何も言わないでおく。学園祭でもナンパしていたみたいだからな。こいつがナンパを成功させた話を聞いたことがない。
「遼はいつ出番なんだ?」
「中盤の予定。大会で踊ったものだから花以外はみんな初見か」
「俺達が遼のダンスを見たのは最初の一回だけだぞ」
「それなら楽しめると思うぞ。みんなが知ってる曲で踊るからな」
「遼さんがすごくかっこいいのでまた見れるのが楽しみです」
花よ、あまり煽らないでくれないか。期待に応えられなければならなくなるじゃないか。期待外れにはならないとは思うけどね。
五人でしばらく話していると体育館の照明が消えた。いきなり真っ暗になったので花と詩織ちゃんが小さく悲鳴を上げた。停電したかと思ったのだが、今度は舞台が急に明かりが付いた。
「調ヶ丘学園のみなさーん! お待たせしましたー! これより後夜祭を開始いたしまーす!」
後夜祭の司会であろう爆裂魔法を使いそうなコスプレをした人が舞台上でマイクを使って話すと体育館の前方からものすごい歓声が起こった。先輩方の盛り上がりに感化されたのか歓声が徐々に体育館全体を包み込む。
「まずは後夜祭のスケジュールを説明します! 前半は主にコント等のショーをやっていただきます。その後、中盤はバンド部の演奏とダンス部のダンスが披露されます。後半は学園祭を盛り上げたであろう出
し物ベスト・オブ・調ヶ丘の表彰とミスコンという流れになっています!」
前半はコントをするのか。コメディ番組が好きだから気になる。滑ったら滑ったでそれは面白い雰囲気になるだろう。
「ちなみに出し物とミスコンの投票は学園祭開催中、参加されたみなさんのスマホから投票させていただきました! かなりの票が集まりましたが、まだ投票していない方は残り一時間で締め切りとさせていただくのでお早めに!」
まだ投票する時間があるようなので投票しようかと思ったのだが、やはりここは自分のクラスに票を入れるべきだろうか? 少し考えて結論が出なかったのでみんなに聞いてみることにする。
「なあ、みんなはどこに投票したんだ?」
「そりゃ自分のクラスに決まってるだろ」
「俺は遼達のクラスのメイド喫茶に投票したぞ」
「私もー!」
「私はアニマル喫茶に投票しました。あそこの衣装がかわいかったです」
確かにかわいかったが俺からしたら花と桜のメイド服姿に敵うものはないと思う。出し物の投票はやめてミスコンのほうで花に投票しよう。
そんなこんなしていると前のほうがすごく盛り上がっている。司会の人が爆裂魔法でも使ったのかと思ったらそうではないようだ。舞台に目を向けるとこの場には不釣合いとも言える、見た目が小学生の子が立っていた。
「今年も司会進行のサポートをしてくれるのは……、我らが学園理事長、鳳鈴ちゃんっだぁぁぁ!」
「くくく、皆よ、今年も我が後夜祭を盛り上げてやろう。若者よ、特に今年卒業する三年生よ、存分に楽しむのじゃぞ?」
先ほどとは比べも物にならぬ地響きすら感じる大歓声。さすが人気者。生徒からちゃん付けで呼ばれているのを気にしていないどころか喜んでいるように見える。もうそれなりの歳だからだろうな。
「鈴ちゃん質問してもいいかな?」
「何でも答えよう。じゃがR-18に抵触する質問はだめじゃぞ?」
会場のみんなは笑っているが、全然笑えないぞ。俺といるときは存在そのものがR-18みたいなものだっただろうが。適齢期が近い処女だからって若い学生をターゲットにするのはどう考えてもだめだろ。
「遼さんどうかしましたか?」
「いや、何でもないよ。うん、何でもない」
笑っていないことに疑問を感じたのか花が問いかけてきた。昨晩理事長の部屋であったことを花に知られてはならないと俺の中のアラームが鳴り響いている。悟られないようにしなければ。
舞台では司会と理事長のトークで盛り上がっている。司会の人も話し上手で聞いてて面白い。どうやら前のほうで司会の人のスカートの中を覗こうとした不埒者がいたそうだ。覗けるのなら前に行きたいぞ。
トークもコントの話になってきたのでそろそろ最初のグループが登場するのだろう。前の先輩方がそわそわしているのが見て分かる。
「そろそろ一発目のコントを始めようと思います! 皆さん、盛り上がる準備はいいですかー?」
こうして、後夜祭のスケジュールが開始された。ダンス部の出番はまだ先。それまでは存分に楽しませてもらおう。




